幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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191話 天への飛翔⑬(その2の49~50の途中まで)

そして、時は戻る。

 

所は、夢世界、高度高く夢想(イメージ)の太陽に近い座標に設定された空中舞台。

そこに、結集していく幻影(イメージ)を待ち受ける女がいた。

名を、ラクルラール。

知られた職務は、元教師。

その実態は、己を第五階層の支配者に任じる、かつての災厄。

正確には今はもはやその名残り、ヒトビトの記憶にこびりつく悪夢の残滓(ざんし)

だがそれでも、凶悪な宿敵と言う意味合いだけは全く減じていない。

それは、そうした魔女だった。

 

彼女は、愉快(ゆかい)そうに、好機を待ち構えている。

大きく口の端を歪(ゆが)めたその笑(え)みは、極限まで蓄積(チャージ)された、呪文竜(オルガンローデ)の顎門(アギト)を思わせた。

そしてその表情は、時と共にその変化を増していく。

満ちる月のように、あるいは童話の魔女を象(かたど)った玩具(おもちゃ)の絡繰(カラクリ)人形のように。

その口が描く弧(こ)は、際限なく大きくなっていく。

やがて、ある瞬間が訪れたとき、その線はついに頭を二つに割るほどに大きく広がり、彼女に訪れた極まった満足を示すようになった。

ついに、周囲から走り込んで来た影絵少女(シルエット)が、その中央の舞台上で一つになったのだ。

幻像の集約、期待の成就。

そこでようやく女教師は、待望の自分の代表生徒(あやつりにんぎょう)が誕生する姿を目撃する…はずだった。

 

「なんだと!」

 

しかしそこで訪れたのは、失望だった。

なんと、一度一つに重なったはずの影は、見る間に再びブレ、多重の姿で安定している。

それが放つのは、ホログラフィーのような、降り注ぐ光を不思議な紋様へと変換させるませる水滴のような輝きだ。

更にそこへ、

 

〈スーパーメイクゾーンだラリ〜ン〉

 

よく分からないちびキャラアバターが、どこからともなく二体も飛んでくる。

そしてその支援(サポート)を受け、影はますます不可思議な印象のまま、美しくその存在を確かにしていった。

 

やがて、復活した『ラリスキャニア』“たち”は、統合され唯一無二になったはずだった存在は、そのあやふやなカタチをはっきりとセカイに定着させ、重なる声音で斉唱した。

 

「「コスメばっちり!」」

 

「「触手開いて!」」

 

「「「ボク、再生産!」」」

 

その言葉はブレ、音声は多重にて発声される。

その存在は曖昧(あいまい)で、常に蜃気楼(しんきろう)のようにゆらいでいた。

 

その奇怪な光景を目撃した女教師は、思わず弾劾(だんがい)の叫(さけ)びを上げる。

 

「何故(なぜ)だ!

何故そんな、不安定な状態を維持出来る!」

 

彼女の言う通り、復活した地下アイドルは実に不確かそうな外見をしていた。

 

“二人”の姿は、舞台(ステージ)上に立った/飛んでいる今も、確かな存在感と言うものをまるで感じさせない。

その輪郭(シルエット)は、重なり合ってその人数すら判然としないのだ。

それに加えて、

 

「ボクこそが『分身(ニセモノ)』なんですよ。

「いいえ、ボクが偽物です」

「いいえ」

「いいえ…」

 

と、その囁(ささや)き返す声すら、多重に響く。

 

「ええい貴様!

私を愚弄(ぐろう)するのもいい加減にしろ!」

 

そこで女教師の青い槍が、今度こそ元生徒を突き殺そうと進撃するが、しかしこれも――

 

「言!」

 

『ラリスキャニア』の謎の言葉と共に、あっさりとその身体を透過してしまう。

その内実を、揺れる多重影の輪郭(りんかく)がブレる口調で解説した。

 

「「言理の妖精語りて曰く、“アイドルの興行に武器の類(たぐい)は固くお断り申し上げております”

ブレイスヴァに食われて省略されました!」」

 

しかし当然、これだけでは終わらない。

追い討ちが来る。

 

「その程度!」

 

追撃で槍が変形・拡散。

青い霞網(かすみあみ)となって、地下アイドルを包み込もうとするが…

 

「時間です!

握触手タイム終了!」

 

声と共に、それも弾かれ、塵(チリ)となって霧散(むさん)していった。

その理由を、『ラリスキャニア』は、高らかに告げる。

 

「『剥がし』です!

握手会の『握手時間制限』を示す肉体言語呪文(うごき)で、操り糸の持続を防ぎました!」

 

「貴様…!」

 

憤(いきどお)るラクルラールに、“彼女たち”は、言い返す。

 

「アイドルへの過度なお触りは厳禁です。

なにしろ…」

「刺激的(スパーク)過ぎますから!」

 

次の瞬間、強烈な火花が散(ち)り、辺(あた)りを真昼のように染め上げた!

当然、女教師は苛立(いらだ)つが…視界を奪われてはどうにもならない。

何よりこれは、"公開練習"形式の呪術なのだ。

つまるところ、観客にしっかりと見られていなければ機能することはない、という道理である。

仕方なしに、彼女は元生徒に問いかける。

 

「何故だ!

何故お前はそんな姿でいられる!

貧弱(ひんじゃく)な衆愚の力を借りて復活した以上、そんな曖昧(あいまい)な姿は保(たも)てないはず!

本来ならとうに、“こいつはこの程度のやつに違いない”と言う思い込みが、お前を蹂躙(じゅうりん)し、支配しているはず!」

「それはただの見下しですよ、先生!

“ボクら”のファンは、結構柔軟です。

そして、そんな“固定観念(おもいこみ)”にアイドルは負けたりしませんし、自己形成に必要ともしません!」

 

 

 

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