幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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193話 アイドル飛翔②(その2の51~52の途中まで)

そんな彼女"たち"は、きっぱりと断言する。

 

「アイドルは偶像(にんぎょう)だと言うのなら、操り人形(ヒーロー)のその全てを"ボク"(アイドル)にすれば良い…!」

「ファンの再演(ふりこぴ)が、何度でもボクを舞台に転生させ、その応援が呪力(ちから)を与えてくれる……

再演の繰り返しが、ボクという存在(アイドル)を再構築し、維持しているのです!」

 

そしてそんなふうに話している最中(さいちゅう)でさえ、その信奉者(ファン)からの支援は留(とど)まることを知らなかった。

ほら今も、逆流する滝のように上昇する無数の配信窓がそれぞれの配信者のシルエットを映しながら、盛んに“再念写”を行って『ラリスキャニア』“たち”の存在の安定に努(つと)めている。

 

ラクルラールは、そんなゆらぐ断言に対し、即座に反論した。

 

「苦し紛(まぎ)れの自助(ブートストラップ)のつもりか!

セルフヘルプも共助(たすけあい)も所詮はその場しのぎ!

歴史が証明している!

生き延びられるのは、荒野で勝ち抜ける強者かその強者が支配する共同体(こっか)の庇護を得られたものだけだ!

そうでなければ誰もが犯罪者予備軍(ひんみん)や難民として、国際政治の道具(おもちゃ)に成り果てる!」

 

しかし、地下アイドル"たち"は、それぞれ別の配信窓を指差し、力強く抗弁する。

 

「たとえ"その場しのぎ"でも、それをずっと続けられればそれは不滅と変わりません!

このみんなの支持(おうえん)こそが、"ボクら"の変わらぬ力なのです!」

 

そこにはたくさんの、彼女"たち"に対する愛の証がある。

 

ラリスキャニアちゃんうちわ、フィギュア、ぬいぐるみ、アクスタ、そしてそれらを満載し、激闘を潜(くぐ)り抜けて未だに宙空に浮き続ける『推し壇』…

それらは、所有物の多くを『変わり身の術』のために供出(リターン)させてもなお残り、今もまた積み上げられ続ける応援の意志表示であり、『ラリスキャニア』との"絆の歴史"の現れ。

言わば、信奉の地層だった。

そして更に、そこではいつの間にか、謎の物体が各々(おのおの)の配信者に寄り添っている。

それは、今もファンを拘束し続ける名状しがたい暗黒物体。

人間大のソレは、現在進行形でうにょうにょと蠢(うごめき)ながら、無数の触手をくねらせている。

影のような地下アイドルが、それに解説を加えた。

 

「"ラリスキャニアちゃんが抱く枕"です。"ボク"が抱きます。触手で」

 

それを聞いたラクルラールは、怒りの声を反応とした。

 

「なにを無様(ブザマ)な!

そんなやり方で『不死』が得られるはずがない!

ただ存在を脆弱にさせただけではないか!

そんなものは『不死』ではない!」

 

涼し気な反論がそれを迎え撃つ。

 

「ええ、ボクも『不死』など目指してはいません。

『キュトスの姉妹』の座など興味はありませんから。

ボクが目指すのは、転生した(うまれた)ときから、最高のアイドル、ただそれだけ。

アイドルとして最高に輝き、ファン(みんな)に愛される存在になる、それだけが目的なのです!

『不死』だの『キュトスの姉妹』だのは、その目的にとっては余計な夾雑物(ノイズ)でしかありません」

 

「減らず口を!

『姉妹』の偉大さを無視してお山の大将気取りか?

そんな開き直りはただの負け惜しみだ!

お前は手に入らないブドウの味をけなすキツネでしかない!」

 

「異界の物語ですね。

それぐらいはボクも知っています。

けれど、そうではありませんよ、先生。

だって、評価(かち)というものは、いつもーー」

 

そこで、“もう一人”の『ラリスキャニア』が応答した。

 

「ーー偶像(アイドル)と信奉者(ファン)の間から始まり、舞台(ここ)にしか無いものなのですから!」と。

 

そして、更に交互に続けて曰く、

 

「”ボク"らは絶対不変の理念幻想(イデア)なんかではなく、ファン(みんな)の解釈(ノエシス)が集約された理想像(イデアール)!」

「同じ思想(しんこう)と理念(おもい)を共有する信奉者(ファン)によって支えられ、その『相互主観的確証』(きょうつうりかい)を以って運営される!

だから、どんなに変わろうとその内実(ヒュレー)は変わらない!」

 

「『ラリスキャニア』はファンに寄り添い続ける理想の偶像(アイドル)として在(あ)り続けるのです!」

「皆で対話し、共通の了解として確定させた理想(アイドル)に間違いなんて何もありません!」

 

そこへまた猛烈な抗議が降りかかる。

 

「欺瞞(ギマン)だ!偽善だ!

共同体も思想を同じくする宗派(はばつ)も、あらゆる集団は常に異端(いぶつ)の排除によって成り立っている!

感性(クオリア)は統一されることなく、それらの同調を果たすと言われる『絶対言語』も、決して実現し得ない!

全ては、覇権(ヘゲモニー)を握った強者が力と影響力(みりょく)で支配する、その後付けの正当化!

やがて権威的(カリスマ)たる支配者の統一言説(こみゅりょく)の支配と全体主義に至る、その過程に過ぎない!

当然、民衆による下からの統治(ボトムアップ)など、決して成り立たなかった!

なにしろ、誰もが過去の権威のための歴史(ものがたり)に依拠しているのだからな!

人類(ロマンカインド)の自分、自己同一性(アイデンティティ)と言うものも、所詮は既存の美学、偶然と権力の正当化の積み重ねが織り成す文化(ミーム)の塊!

古い価値観の変わらぬ再演でしかない!

所詮は全てが、過去の闘争の再演と力による支配に還元される!

それが愚者(ぐしゃ)たちの変わらぬ運命(サダメ)なのだ!

それならいっそ最初から、無味乾燥な金銭に換算し唯一無二の尺度で統一した価値基準にした方がずっと良い!

明瞭な勝利過程!

明白な頂点!

数値化と金銭換算こそ全てなのだ!

カルト的"な人気があるとされるマンガも誰が読んでいるか保証のない長編小説も数値で評価されないものは皆無価値!

逆に、実際には誰一人として目を通していなくても、数値序列(ランキング)の頂点に登(のぼ)り第一位(ベストセラー)と言う称号(ハクづけ)さえ得てしまえばそれこそが価値!

代理書記(ゴーストライター)だろうが本棚の飾りだろうが要約本やまとめサイトで内容を把握しようが!

そんなことは無関係、数値と金銭だけが『正義』!

それがただ一つの"正解"なのだ!

そんな簡単なことがなぜ分からないのか!」

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