幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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196話 九つの異界、一つの戦い/共演②その2の53~54まで)

人間の知覚限界に迫るほどの、感覚を刺激する再現、既存の想像力(ねんしゃしりょう)の限りを尽くした情報の暴力。

人類史が積み重ねて来た、表現の工夫と極限にまで鍛え抜かれた技芸の粋(スイ)。

それが表現するのは、かの元学園長の力の真髄。

いかなる世界にも存在する“情報の伝達”それそのもの。

過去から未来へ、あるいはまたその逆へと、流れ去り流れ来る因果の証明、知識の奔流(データ・ストリーム)

つまるところ、それは普遍的な宇宙の原則(ロジック)そのものなのだ。

 

彼女が扱う『糸』や『教育』とは、その形而下世界における、万人(ぐみん)にも分かりやすい“翻訳”に過ぎない。

森羅万象がそれによって形成され、また新たに何か(あす)を形作っていく、不滅の流れ。

不死の法則(キュトス)。

それも自意識を持ち、己を再構成して新たな流れ(のろい)へと変換可能な、まさに生きた呪術とでも言うべき存在。

それはまさに、神の領域から降り来たった祝福(じゅそ)であった。

 

特筆すべきは、それが己自身を『織る』ことが出来るということだ。

古来より、神やそれに匹敵する神獣や巨人の身体の一部を以(も)って、神や巨人を滅ぼす話は枚挙(まいきょ)に暇(いとま)がない。

神の一部はすなわち神そのものであり、分割零落しても、それは再び神の力を発揮し得る。

そこへ更に、神の領域の技術を加えればどうなるか。

 

ごく当たり前な人間(ロマンカインド)の技量でも、壁に神々の如(ごと)き絵を描き、紙を折って神話の情景を拙(つたな)く再現すること自体は、不可能ではない。

平面(にじげん)を立体(さんじげん)に変えることさえも。

 

では、それが神を材料として神の業(ワザ)を以って行ったとしたら?

それは、『杖』の一般常識(おもいこみ)を打ち破り、凡俗を超常の神秘に押し上げることが可能なのではないか?

その答えこそが、眼前に広がる炎の異界であった。

 

あらゆるものが、炎熱で再演される異質な素材と法則で構成された小世界。

通常の自然法則や常識は、ここでは全て否定される。

そこにあるのは、ヒトの領域にあるモノで天上を再現した、神をも焼き尽くす極限の火だ。

それは、神々を滅ぼすための力。

それは、神秘を弑逆する人造の神秘(ひほう)

半神たる『キュトスの姉妹』のラクルラールが、己を上回る格上の存在を燃やすために織り上げた至高の呪詛なのだ。

それが滅びの炎と成って襲い来るというのに…一体この世の誰が、持ちこたえられると言うのだろうか?

 

しかし、そんな激しい炎に炙(あぶ)られ、爆風に身を焦がされながらも…地下アイドル“たち”は、今もまだ、その炎熱よりも情熱的に舞い踊っていた。

そして陰陽の『ラリスキャニア』は、ここでもコンビとして宣言を放つ。

 

"彼女たち"はそれぞれ言葉を投げかけ、

 

「ラクルラール先生、確かに貴女の言うことは、その御経験に基(もと)づいているのかもしれません」

 

「けれどそれでも!

それでもボクらは、アイドルの価値を信じます!」

 

最後(シメ)に声を合わせ、

 

「「そして貴女に勝ち、それを証明してみせます!」」

 

と言い放つ。

 

しかし女教師は、燃え盛る業火よりも激しくそれを否定した。

その姿はどこにも見えないが、声だけは炎熱の空間全体から、爆炎の響きとなって轟(とどろ)いて来る。

 

「お前にそんな理想を実現する力はない!

『使い魔』的な才覚(カリスマ)、新しい理想世界を示す『邪視』(ビジョン)、その理想を伝達し普及させる『呪文』(せっとくりょく)

そして、集団内に必ず発生する過激派や悪党たちの暴挙や暗躍、外部からの干渉を跳ね除け集団を維持し付ける『杖』(けいざいりょく)!

お前には、そのどれもがまるで足りぬではないか!

実力なき理想は、妄言に他ならない!」

 

それに負けじと、地下アイドルたちは、なおも叫び返した。

 

「ボクになくても、誰かにはあります!

輝きを目指し続けるアイドルならきっと!」

「そのヒトのためにも、今はここで…貴女を止めてみせます!」

 

加えて更に、そこで"二人"は宣言を重ねる。

「ラクルラール先生!

ここで貴女を乗り越え、“ボクたち”は、悪夢に終止符を打ちます!」

「そして、証明してみせます!

ここ地下アイドル空間のアイドルたちが、どんなシステムにも…たとえ歌姫や『黄金』が束になって襲来しても、決して負けないことを!」

 

それに対し、炎が応えた。

 

炎の龍が、蝶が、赤き花々が、それぞれ異なる焼却の反応を以(も)って轟くように、吐き捨てるように、あるいは囀(さえず)るように異口同音で返答する。

 

「やってみろ!

やれるものならな!」

 

その決別の言葉を合図としたかのように、周囲の炎はその時、よりいっそうと燃え上がった。

まるで、油をぶち撒けられたかの如(ごと)き有り様。

それは、“二人”の地下アイドルの新たなる門出(かどで)を祝うには、いささか激しすぎる祝福であった…

 

 

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