幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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197話 九つの異界、一つの戦い/共演③その2の54~55まで

 

激しい疾風。

 

どこにも大地や床が無く、もちろん壁など微塵(みじん)も無く。

存在する者は、気まぐれに吹き荒れる烈風に翻弄(ほんろう)され、引きちぎられ、乾燥機に放り込まれたかのように縦横無尽に引き摺(ず)り回される。

 

それは、風の部屋。

その有り様は、不可視のこね棒が支配する、巨大なすり鉢。

 

白、翠(みどり)、薄茶、紫、黄。

 

世界のあらゆる文化圏において、風を表すのに用いられる色の糸が、ここでは常に流動し、それでいてその都度(つど)カタチを織り成して…呪術的な圧力(ベクトル)を形成していた。

仕組み(りくつ)としては、単なる『空圧』の再演。

涼を得るための日用品にすら応用されている、言わば“枯れた技術”である。

 

だが、それは博物館や展示会における最新の目玉芸術(トップアート)でさえ凌駕(りょうが)する、呪術機構の産物(けっさく)だった。

見える糸が見えざる意図を、すなわち見えない大気のゆらぎや澱(よど)みを、まるで文章がその行間を含んでいるように描き出し、現出させている。

可視が紡(つむ)ぐ不可視。

凡庸(にちじょう)が呼び起こす神秘(ひにちじょう)

それは、気流の檻(オリ)

空間全体を呪いによって再構築した、透明な動く迷宮だった。

 

どれほど高解像度で世界を観れば、これほど精密に現象を記述出来るのだろうか。

どれだけの大胆さと決断力があれば、ここまでの過小な表現(プログラム)で、こんなに圧縮された情報を提示出来るのだろうか。

大気と言う見えない存在を、見事に織物で再演した国宝、いや世界遺産レベルの芸術(アート)が、たった“一人”のアイドルのために惜しげもなく蕩尽(とうじん)される。

 

それはある意味、途轍(とてつ)もない贅沢(ぜいたく)だった。

そしてそこでは…その背景(ぶたい)に負けじと演者たちが、最速を競い合いながらぶつかり合っている。

未来からの干渉と言う至高の先手(あとだしジャンケン)が、ラクルラールの攻め手ならば、無数の分身、無数の予見眼による並列高速…いいや、高速を超えた超アイドル高速演算、それこそが、『ラリスキャニア』の応手。

“師弟”は、互いに全速で活動し、裏をかき合う。

四次元方向(ベクトル)で時空を超え、光の速度すら超越したそれは論戦、情報(じゅもん)戦。

詭弁、難癖(なんくせ)、恫喝(どうかつ)論点ずらしに論点回避に論点先取。

合成の誤謬(ごびゅう)分割の誤謬、排中律と矛盾の悪用。

未知論証、対人論証、充填された語に循環論法。

誤った二分法、伝統へのアピールに目新しさへのアピール…

詐欺師や独裁者、広告戦にセミナー商法やネットワークビジネス、そして、新興宗教において頻繁(ひんぱん)に用いられる手法の数々。

 

"三人”が繰(く)り広げるこの戦場では、ありとあらゆる正道と邪道の技法――言いくるめや弁論術から営業話法(ビジネストーク)や詭弁術(ソフィズム)、泣き落としに演劇技術まで――が尽くされ、そしてその悉(ことごとく)相殺(そうさい)され、撃(う)ち落とされていく。

そんな高速の情報のやり取りは、交差しまた積み重なって、幾重にも独特の紋様(テキスタイル)を描き出していく。

情報戦の過程が、流動する周囲の糸に影響を与え、固定した形に織り上げているのだ。

それはあたかも、異界の遊戯にあると言う『綾取り』のようだった。

 

「言理の妖精語りて曰く、」

「言理の妖精――」

「言!」

「精!」

 

正道は『陽』がアイドル答弁で受けて立ち、邪道は『陰』がカルト教祖めいた怪しげな詭弁で受け流す。

更に、そこへ謎の新武器も投入されていた。

 

 

注意!

以後あまりに公開不能な悪言が続くので、一部文章を差し替えて配信いたします。

それを念頭に置かれたうえで、引き続き『ラリスキャニアちゃん公開練習演目!復活の邪悪教師とゆらぐアイドル“たち”』をお楽しみ下さい。

 

 

地下アイドルの少女“たち”は、それぞれ手に薄い何かの固まりを持ち、大きく声を張り上げる。

 

「また途中で拾った資料(テキスト)その2!

『夜の民』が理解不能な邪悪な怪物だと見なされていた時代の物語!

少年少女が出会って和平成立で入学!

そこに元怪物たちも入学みんなで勉強!」

 

「続きは無いけど、たぶん善人コミュ力超絶強化(スーパー・パワーアップ)!

相互理解達成、完全解決(ハッピー・エンド)!」

 

「「今のボクたちがいるから結果は良いに決まっている!完全証明(Q.E.D)!

『言の葉の物語』完了――!」」

 

怒涛(どとう)のように、謎の物語(ストーリー)が紡(つむ)がれ呪文となる。

すると、地下アイドルが手に持った手製の台本らしき紙束から、美しい少女の立体映像が現れた。

どこかあやふやな彼女は、ラクルラール目掛けてぎこちない剣捌(けんさば)きで切り掛かり、それを後ろから新たに出現した凛々しい青年が拙(つたな)い呪文を放って、支援(サポート)する。

それに加えて、それまでただの背景(モブ)、自意識を持たない鏡的反響生成物(オートマトン)としか思われていなかった“怪物たち”が、心を持つとしか思えない振る舞いで――

 

 

 

 

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