幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第20話(16〜17の途中まで)

「お話中のところ、大変すみません。悪魔(アキラ)さんのお答えに時間がかかるようでしたら、先にボクの考えを聞いてもらっては、いただけないでしょうか?」

 

"興行主"ラリスキャニア、"相手役"悪魔(アキラ)触手、そして"道化役"悪魔の左手(ディスペータ)

彼らに次いで発言したのは、やはり、この場に最初からいた"人物"であった。

 

悪魔(アキラ)触手は、"彼"を見た。

精一杯左手を挙げ、背を伸ばすその姿からは、一所懸命な頑張りが感じられ、興奮のためかその頬は林檎のように赤い。

そして、緊張のため、その頭から生えた白い猫耳は、ぴくぴくと細かく震えていた。

 

 

"彼"こそが、この場に登壇している最後の"役者"、天使(レオ)触手である。

 

"彼"は、語る。

大事なものを壊さないか、自分が貴重な、価値あるものを見落としてしまわないか、まるで、床に落とした細かな貴重品を手探りするように。

 

「僕は思うんです。"悪"とは、ちょっとだけ、ズレてしまった人のことではないでしょうか?」

 

「ズレる?それは、"正義"とか"常識"から"外れる"ということかい?」

 

「その通りです。ただ、そう言い切ってしまうのは、ちょっとだけ…違うような気がします」

 

「ふむ…どう違うんだい?」

 

「それは…今の僕の力では上手く言い表せないのですが…"正義"も、"常識"も、実ははっきりしたものではないような気がするのです。なんていうか…当然"含まれる"と思われているようなものも、場合によってそれに含まれなくなったり、そこに集まった人達や時代によって違ったりするような…」

 

天使(レオ)触手は、若干しどろもどろになりながらも、懸命に主(ほんたい)に語りかけた。

その姿は、すごく可愛い。

 

じゃなかった、そう、その通りだ。

悪魔(アキラ)触手は、ひそかに頷いた。

 

排除すべき"悪"との戦いという共通点があるのに、『上』と下が戦い続けているのは、まさにその共通点があるからだ。

 

だが、共通点こそ同じものの、その「排除すべき"悪"」が指し示す対象は『上下』で異なる。

『上』には『下』が、『下』には『上』こそが排除すべき"悪"なのだ。

そして、互いに"悪"と相容れないことこそが、二つの"共同体"の"本質"としてそれを形作っているのである。

 

共通する悪、共通する正義、しかし、それゆえに決して争いは終わらない。

"異端審問""魔女狩り""聖戦""最終的解決"あるいは"いじめ"

呼び方がどうあっても、その本質は、変わらない。

 

"異物"を排除することによって"共同体"(なかま)を維持する。

ただそのためだけに"正義"や"秩序"が旗印となり、恣意的(あやふや)な分類(カテゴリ)が適用される。

 

守るべき"仲間"と排除するべき"敵"その違いを区分けするのは、権威やその場の空気によって定められる中身空っぽな境界でしかない。

 

誰もが、正義への対処法、必要としているものが同じで、どちらも『外』にそれを求めて『内』を作る境界を守っている。

だからこそ、共同体維持の方法が共通していても、いや、共通しているから"こそ"二つの"世界"は相容れないのだ。

 

それを踏まえて悪魔(アキラ)触手は、重い口をようやく開いた。

 

「俺にとっての、第五階層(シナモリアキラ)にとっての"悪"とは、"暴力"だ」

 

「"道具(ツール)としての暴力"、誰にでも暴力を与えるキミがそれを言うのかい?」

 

「俺だからこそ、それを言うんだ。他者を侵食し、蹂躙することはその全てが"悪"であり在るべき自我(モノ)を守るためには排除されねばならない。」

 

「なるほど、それがキミの覚悟、キミの選択というわけか」

 

うなずくラリスキャニアを、悪魔(アキラ)触手は鋭い目で睨みながら言い返す。

 

「俺は何も選ばない。俺は"悪"(ぼうりょく)を排除するための"暴力"(あく)でしかなく、ただそうやってあり続けるだけのことだ。選ぶのは、俺じゃなくて俺以外の誰か。俺なんかに選択者になるという価値はない。」

 

悪魔(アキラ)触手は、毅然としてそう言い放つ。

 

そのブレのない姿勢は、どこかしら威厳のようなものすら発揮しているように思えた。

……それが、ますます暴走する左腕を押さえつけながらの発言でさえなければ、もっと格好良かったのだが。

 

ラリスキャニアは、その発言にうなずくと、話を再開することにした。

どうやら悪魔(アキラ)は今の違和感に気づかなかったようだし、この隙に一気に話を進めなければ。

 

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