幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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208話 九つの異界、一つの戦い/共演⑬その2の63の途中まで

サングラスに設定されている映像アプリは、規定のものがただ一つ。

ラクルラール・教育チャンネル、ただそれだけ。

 

けれど一体、それ以外何が必要だと言うのだろうか?

視界を埋めるのは、次から次へと現れる新しい番組、広告、仕事のガイダンスサポート映像(AR)の数々。

それら、影される念写情報が、必要となる全てを教え、あらゆることを導いてくれるのだから。

欠落(よくぼう)の促進もその充足も、どちらも一つのアプリが担(にな)う。

それは、どこにも異端(いつだつ)を出現させない、いっそ優し過ぎるくらいの母的支配(パターナリズム)だった。

 

そして、工場都市には、個人(エンドユーザー)によって設定を変えることが出来ない端末しかない。

だから、ここでは歯車アイコンはサングラスアプリの代名詞だった。

待機画面でゆっくりと動く歯車が、工場都市と言うセカイの全てを動かし、その住民全てを統率していく。

それはあたかも、工員たちもまた生きた歯車でしかない、と言うかのようであった。

 

 

ここでの暮らし…いや、日常は繰り返しだ。

全てが、その一言に尽きる。

繰り返し繰り返し全てが巡(めぐ)る。

毎日は、ただ工場(しょくば)と従業員寮(ベッド)を行き来するだけの往復の日々。

ぐるぐると日々はただ目まぐるしく、後に何も残さずに過ぎてゆく。

そこには中心が無く、本当の意味での目的意識すら存在しなかった。

全ては仕事のために、お金のために、生活のために。

では、そもそもその生活は何のために?

ただ生きることは、芯(やり)が無ければ容易(たやす)く乾き果てて味気ないものになってしまう。

目的意識、生きがい、五感を活性化する刺激(クオリア)、そして◾️

個人が個人足り得るために必要な何かが、このラクルラール工場都市での生活には、圧倒的に不足していた。

 

もちろん、工場(かいしゃ)が与えてくれる目的は常にある。

生活に対する“指導”も、うんざりするぐらいある。

工員たちの振る舞いやその思考は、サングラスの視界を通じて常にアプリのシステムに、そしてその統括者たるラクルラール工場長によって、常に管理され統制されているのだ。

 

だが、そこには機能的な位置付けこそ有るものの、人間的な尊厳や配慮は一切存在しない。

そこに在る全ては、単なる抽象的で計量可能な数値(スカラー)や図表(ベクトル)でしかないのだ。

そこには仕事関係は有っても、そこを離れても持続するような人間同士の◾️は無いし、本当の意味での思いやりや優しさも無い。

 

そしてそんな工員たちは、幾つかの階級に分かれ、また多くの呼び名を持つ。

“船員(クルー)”“協力者(ヘルパー)”そして、“仲間(アソシエイト)”

だがその実態は、九人あるいは五人一組(ごにんひとくみ)でまとめられた、相互監視の連帯責任集団だ。

工員たちは、隣同士で自ら労働管理を行い、意欲(やるき)や目標(ノルマ)達成進捗(たっせいしんちょく)の促進などを促(うながし)し合う。

おまけに、この群体(クラスター)には、経営側の監視要員すら指定されている。

言わば、『牢名主』的な役割を担う班長だ。

そのささやかな役職は、基本的に“平等”とされている工員たちに与えられた、わずかな上昇(たいぐうかいぜん)の機会であった。

 

とは言え、ほんとうの意味においてここでは出世の希望などは存在しなかった。

何故なら、みんなもう社長なのだから。

工員たちは書類(せってい)上は独立事業主であり、あらゆる保険や保証の範囲外に置かれていた。

労働時間においても、短時間勤務(ギグワーク)という名目であるため、法的な保護もほとんど存在しない。

当然、事業『主』の主として振る舞える裁量権など、最初から有るわけが無かった。

 

それに、当然ながらこの工場都市の全ては工場長であるラクルラールの所有物。

ここで自由に行える工夫(アレンジ)や商売(ビジネス)など有るわけがない。

 

もっとも、例(たと)え革新的な発明を行ったところで、どうせその特許は、ラクルラールが取得してしまうのだろうけれど。

 

思えば、■手会の慰問(いもん)に訪れた刑務所でさえ、ここよりはずっとマシだった。

この工場には、ほとんど暴力やいじめは無いが、会話や雑談、◾️◾️の試みを妄想する自由すら存在しない。

メンバーへの加入を祝い節目づける加入儀式がないのも、その大きな特徴だろう。

そもそも、労働者同士の共同体(コミュニティ)の成立が最初から否定されているのだ。

 

しかし■手会?

そう言えば、それは一体何のことだったろうか?

そもそも、“自分”はいつどうやってここに入社したのだったか…?

 

 

広告がやかましくて、目が覚めた。

 

ともかく、当然、こんな所に◾️なんて有りはしないし、金銭や株価に換算不可能な◾️◾️を得られるような、そんな経験が得られるわけもない。

◾️◾️ ◾️◾️の存在は禁止されて久(ひさ)しく、それを目指すような◾️なんてそれこそ◾️のまた◾️

 

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