幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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210話 九つの異界、一つの戦い/共演⑮その2の63~65の途中まで

一種類しかない日替わり定食に、今日はなぜか缶詰が増えていたのだ。

それも、貴重な肉の缶詰。

世にも珍しい熱量(カロリー)の増量である。

 

サングラスを媒介とした"指導"によって、"度が過ぎた"感情表現が禁じられているはずの工員たちの間に、初めて歓声のようなものが広がった。

 

だが、誰も聞こうとはしない。

缶詰の原料は、何なのか?

次々と姿を消していく工員(なかま)たちは、本当に退職(リリース)や配置転換(てんきん)していっただけなのか、などとは問わないのだ。

それは、ここでは答えが返ってこないことを、誰もが知っているからであった。

この工場都市を統(す)べるのは、資本主義という絶対の論理。

数値と図表(グラフ)

右肩上がりに上がっていくべき利益と、そのために全てを捧(ささ)げて奉仕すること。

ここに在(あ)るべきなのは、ただそれだけだ。

営利と言う唯一無二の価値基準に従(したが)って、工場ラクルラールは全てを使い潰す。

合理と経済性の名の下(もと)に、あらゆるものを享楽(きょうらく)するかのように蕩尽(とうじん)し、消費し尽くしていく…

 

 

 

 

ふと一人の工員が、工場へ向かう列車から外を見た。

見渡す線路はどこまでも繋がる環状(えん)であり、巨大な外壁の外は断崖絶壁。

この工場都市には、出口がない。

それは、円(まる)く果てのない実験迷路(モルモット・ルーム)であり、鍵も鉄格子も無い牢獄であった。

ここは、工場の部屋(めいきゅう)

ラクルラールの、罠の中。

ここには、必殺の仕掛けが無い。

それどころか、物理的に身体を傷つける機構が一つも存在しなかった。

そんなものは、最初から全く必要無かったのだ。

灰色の毎日は、ただそれだけでかつて◾️◾️ ◾️ ◾️◾️ ◾️◾️だった誰かから、心ごと呪力を容赦無く削り取っていく…

疲弊していく彼女“たち”は、都市の形が巨大な歯車であることにすら、気づかない。

 

“船員”たちは、溺れそうだった。

こんなにも、巨大な船に乗っているはずなのに…

 

 

 

 

世界は、完璧に南国だった。

灼熱の太陽が、純白の浜辺を照らし、完璧な異世界様式(コロニアル・スタイル)の建物が、真白くその陽光を跳はね返す。

 

そしてそんな浜辺(ビーチ)の中心は、一人の美女であった。

オールドスタイルな水着を、あえてバラバラに切り裂き切り込みを入れるという斬新な改変(アレンジ)

女教師はビーチチェアに寝そべり、過激な水着で浜辺全体のまなざしを集めている。

 

だが、その実態は、不可視なる監視塔(パノプティコン)でしかない。

ラクルラールは、寝そべりながら全てを支配していた。

彼女は、集まる視線を逆に支配し返す呪術装置。

この一帯の呪力(ミーム)の支配者。

すなわち、“生きた”広告塔だ。

 

そして、そんな存在がすることと言えば、一つしかない。

つまり…

 

「あー、アツい!

真夏の砂浜で食べる『火鍋』は最高に熱いな!」

 

そう、広告(コマーシャル)である。

なんと、ラクルラールは炎天下の中、ぐつぐつと煮える真っ赤な鍋を食べ始めたではないか!

しかも、それだけでは終わらない。

水着美女が、今度はほんの少しだけ寝返りを打つ。

すると何故(なぜ)か、そこには巨大な氷山があって…

 

「おお冷たい!

いやぁ、氷の中で味わうアイスは最高にクールだな!

これは、怠惰で貧乏な一般庶民には到底楽しめない美味だよ!」

 

そうだ、ここでは二つの楽しみが味わえる。

一つはご覧のように、氷山でアイスを食べること

そしてもう一つが、常夏のビーチで熱々の鍋物を味わうことだ。

 

ここで、女教師が指先を軽く動かした。

すると、彼女に集中していた視線(カメラ)は、するすると上空へと移動していく。

そうして広がる視界に映るのは、氷山と砂浜が平行的な位置関係を保ちながら、海面を移動している姿だ。

驚くべきことに、二つの地形は巨大な豪華客船によって運搬されていた。

莫大な呪力を用いることで、専用浜辺(プライベート・ビーチ)と私有氷山を同時に形成し、なおかつ海上での娯楽(レジャー)に"持ち運んで"いるのだ。

あえて無駄なことをすると言う、贅沢な楽しみである。

豪華客船は、熱砂の浜辺と氷山と言う異質な一対を、同時に運びながら運航を続けていく。

それを包み込む世界は晴れ渡り、何一つとして不幸が無さそうなそんな天気だ。

 

だが、そこへ一点にわかにかき曇りが生じていく。

突然、黒い雲が集まり天候が荒れ始めているのだ。

 

見間違いでなければそれは確かに、豪華客船のその船尾から発生しているようであった…

 

 

急に波が荒れ、豪華客船を後方から嵐が包み込んでいく。

しかもどう見ても、その“荒れ”は間違いなく客船の末尾から生じている。

 

これこそは悪質な呪波汚染、それも非合法な機関を用いたゆえに発生したもの…つまりは、れっきとした公害であった。

 

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