幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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213話 九つの異界、一つの戦い/共演⑱その2の66~67の途中まで

「「「ただ一人にして複数性のアイデンティティを兼ねる存在

ボクは"ボクたち”で生きていく!」」」

 

彼女“たち”自身が創り出した価値、すなわち無数の“ラリスキャニア・コイン”すなわちアイドル電子マネーこそが、その存在を裏付ける。

今この瞬間も、互助や貢献を評価するアイドル・コミュニティの評価トークンが、呪力(かち)となり、燃焼(しょうひ)されることで、一人の…いや“一種”の“アイドル像”を理想として具現化させ続けているのだ。

それは、彼女の元校長とは似て非なる在(あ)り方であった。

 

理想の自分を「殺す」ことで自分の価値を確保しようとする女教師と、無限に追いかけっこ追いつ抜かれつを繰り返すことで、価値を固め合う「永遠のライバル」でいようとする元生徒。

それは、相対主義の別様の在り方であった。

ゆえに当然、それは更なる衝突を招かざるを得ない。

 

「そんなことはあり得ない!

陰を、否定的なものを切り捨て続けなければ、やっていけるはずがない!」

 

「いいえ、その逆です!

陰が無ければ、ちゃんといきていくことなんて出来ないのです!」

 

「理想を吸収し、食い破れ!

己が糧とするのだ!

さもなければお前が逆に食われる!」

 

女教師は、強い確信を以(も)って語り続ける。

 

「差別と排除こそが、優越を証立(あかしだ)てる唯一の手段(てだて)!

差別序列(ヒエラルキー)だけが、在るはずだった私の承認(じそんしん)を、与えられるべきであった我が価値(あい)を、

"奪い返す"ことを可能としてくれる!」

 

更に続けて、力強く言い放つ。

 

「この世は主役か引き立て役(モブ)か認識される認められる"図"になるは背景として黙殺される"地"になるか、その競い合い!

この『現実』という舞台は騙し絵(トリックアート)

注目されるものだけが存在することを許される!

勝ち残った者だけが愛され尊敬され称賛と嫉妬の眼をもって称えられるのだ!

切り捨てと積み上げ!

あらゆる外部(たしゃ)を『無価値』と貶(おとし)め、足の下に踏みしだいてこそ『価値』は生まれる!

『寛容』や『有愛』のような欺瞞(キャラづけ)は、それを以(も)って己が寛大さという『価値』を誇示(アピール)出来るからこそ意味があるのだ!

つまり、ぐ、ぐがが……ぎゃああああー!」

 

そしてそれを主張するラクルラールを、更にその内側から食い破り、新たなラクルラールが出現。

以前より更に服装が派手になり、呪力を増した新しい人形が、その己を誇るかのように旧機体の主張を引き継いで語り出した。

 

「唯一になれば確かなものになれる!

かけがえのない価値がようやく手に入る!

どんな絶望にだって負けない足場が、揺るがない安定が手に入るのに!

何故だ!」

 

「いいえ!

それは違います!」

 

比翼の鳥と成ったアイドル"たち"は、飛翔しながら反論する。

 

「切り捨てたりなんか、するべきじゃありません!

非アイドル的な存在こそが、アイドル概念を規定する、その輪郭となるのです!」

 

「影と闇は、“ボク”自身も知らない隠された魅力…異なる側面“!

ボクも知らない秘密のボク”なのだから!」

 

その発言は、更に更に交互に続いていく。

 

「生きていること、今ここに鼓動し食べ飲み息を吸うことを必要とする身体が、そして歌い踊って世界(みんな)と接続する実像(アイドル)としてのボク"ら"がここに在(あ)ることこそが、

あらゆる価値の真の源泉なのです!

理想はその影、ボクらはその影の罔両(かげ)であり、同時にそれの元!

ボクらは自分の影を追い、それと共に独演舞(ひとりあそび)を繰り広げる

それこそが芸(アート)!それが表現(パフォーマンス)!」

 

「けれど、それはきっとどこまでも孤独ではありません!

だって、言語体系(フィリス)が他者と共有することが出来るように、歌は、踊りは、そして夢(アイドル)は誰でもと共有出来るものだからです!

そして!

支え合う実体(げんじつ)と夢(りそう)!

アイドルの安定なんて、そこにしかありません!」

 

互いを相手に力を与え依存する影と成し、また相互に破滅をもたらす厄災(ヒカリ)とも大義(やみ)とも成しながら、『ラリスキャニア』“たち”はお互いに支え合っている。

一人で二人、その存在は相補にしてそれぞれの独立を互いに保証しあっていた。

 

強大なる『守護の九姉』と向き合い、対峙を続ける『ラリスキャニア』

 

見つめ合う“一対”の魔女たちの背中には、次第に気迫の後光(オーラ)が立ち登り、それはやがて巨大で複雑多色な図形へと変容していった。

やがてその図形は複雑に変化し織り上げられ、『目』の紋様を中枢(ちゅうすう)とする曼荼羅(マンダラ)と成っていく。

 

師弟はそれぞれ、背後にまなざしを背負う。

その片方は社会からの圧力を自己に吸収し、もう一方は信奉者(ファン)という『仲間』のまなざしを力に変えている。

それはどちらも、『他者』を『自己』に取り入れ拡張すると言う在り方の現れであった。

 

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