幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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215話 九つの異界、一つの戦い/共演⑳その2の68~69の途中まで

しかしそんな、眩(まばゆ)い光が行き交う中、地下アイドル“たち”は、恐るべきものを目撃することになる。

 

「あれは…!?」

「まさかそんな、あれはもう倒されたはずだ!

それも二度も!」

 

いかに世間知らずな辺境の住人であっても、その伝説を知らぬ者は皆無だろう。

この部屋の“属性”を『雷』と見知ったならば、まず最初にそれを予想しておくべきだった。

そう、この第五階層を舞台に繰り広げられた、『英雄殺し』の再演を。

 

ときにかつて、『ラリスキャニア』が『猫の国』(いせかい)から仕入れた情報の中で、どうしても分からないものが一つあった。

アイドルと無関係なので無視してはいたが…それは、世界の技術、軍事や政治といった面では極めて重要な、ある『杖』の産物だった。

あの忘れられない敗北の試合を分析するに、シナモリアキラたちの表現(アピール)の方向性から行けば、いつか出てくるかもしれない、そんな要素。

 

『ラリスキャニア』は今、この瞬間こそそれを理解したことを確信する。

竜が銃と同じく禁じているという『熱核兵器』と言うのが、一体どんなものなのか。

今なら、断言出来る。

それはきっと、目の前のモノと同じなのだ。

美しく絶対的で、何をしても抵抗出来ず、圧倒的なまでに逃れられない。

これに比(くら)べればどこかの津波も竜巻も、炎も刃も全く無価値だ。

なんとなれば、それは絶対的で不可避の暴力なのだから。

それは、ただ在(あ)るだけで空を裂き、あらゆるまなざしを闇に閉ざす無敵の力。

それは、あらゆる呪術を打ち破り、長きに渡ってこの世界槍に君臨し続けた大魔将。

そしてそもそもその『職業名』こそ、『地上』において多くの場合、セレクティ=フィレクティではなく"彼女"のことを指す呼称だったのだ。

 

スカートを翻(ひるがえ)し、ソレはそこに降り立った。

軽やかに、いっそ呆気(あっけ)なく。

突然の事故死のように当たり前に、その存在は現れる。

地下アイドルが見つめる先、それはあっさりと顕現(けんげん)した。

 

それは、春の芽吹きより更に鮮やかな、閃雷の赤緑色エレクトリック・ライム)で彩(いろど)られている。

そこに立つは、少女の形をした"死"

史上最悪にして最強と呼ばれた『地下』の呪術兵器。

あらゆる『邪視』を殺し尽くした『邪視殺し』の化身が、雷鳴に導かれて、再び第五階層(ここ)に現(あらわ)れ出(い)でる。

『ラリスキャニア』は、粟立(あわだ)つ肌(はだ)を、わななく全身の擬似細胞を、抑えきれない。

 

それも当然。

準魔将級(えいゆうみまん)の戦闘力すら怪しい彼女“たち”が今ここで抗(あらが)わねばならないのは、幾多の英雄を圧倒した魔将の中の魔将、『大魔将』なのだから。

暗雲の中、唖然(あぜん)としているうちに、史上最速の死と破滅が地下アイドルに約束されようとしていた。

その前では、あらゆる抵抗や奇策は無意味に終わる。

例(たと)え手元に拳銃が在り、引き金を引けるだけの『杖』適性が『ラリスキャニア』にあったとしてもそれは全く変わらない。

 

…ズダークスタークは、それで自害を試みるより更に速く、地下アイドルを滅ぼし尽くすことであろうから。

 

 

 

 

 

 

地下アイドルは、抗いの心意を込めて強く世界を睨(にら)みつけた。

 

しかし、無数の光が縦横に走るそこでは、たとえ陰影(カタチ)に頼りたくとも、何も見出すことは出来なかった。

それは毒々しい虹色、狂ったネオンの密林(ジャングル)

こに走る無数の線分は、常に規則的な動きを絶え間なく行うが…そこには、絶望的なまでに『意味』というものが無かった。

図形、星座、植物、動物、顔、そして人形(ヒトガタ)

動き続ける線たちは、たまに見覚えあるカタチを取りかけるが…それは瞬(またた)く間に否定され、無へと変える。

それは、類推(るいすい)と感情移入の否定、あらゆる神秘と呪術を拒絶する、色と光の牢獄。

精神病院芸術(アウトサイダー・アート)を具現化したような空間で、ラクルラールはいっそ不気味なまでに、こちらを優しく諭(さと)してきた。

 

「『ラリスキャニア』お前の才能は既に限界に来ている。

気づいているはずだ」

「そ、それは!?」

 

すかさず、『陰』の地下アイドルが、半身を叱咤(しった)してサポートする。

 

「耳を貸さないで、もう一人の“ボク”!」

 

けれど、女教師はここぞとばかりに笑みを浮かべ、ねちっこく語りかけてくる。

 

「いいや聞け。

この実績ある教師の判断(かんてい)を!」

 

すなわち、

 

「お前は所詮は鑑賞者に過ぎない。

きちんとした舞台を完成させる才能などは皆無だ。

切り捨てなければ革新できる価値など持たないだろう創造し完結させ幸福な結末へ辿り付くことは出来ない」

 

それは冷酷な指摘(ひひょう)だった。

当然、指摘された対象はそれに抗(あらが)う。

 

「そうかもしれない。

先生、貴女の指摘はきっと正しい。

けれど…」

 

一度は認め、しかしそれに続けて反論を述べる。

事を荒立てないための作法、あるいは相手の主張を受け流す弁論技術。

 

だが、地下アイドルはその反論を言い終えることは出来なかった。

 

なぜなら、抗弁を遮(さえぎ)り、突然光の嵐が襲いかかってきたからだ!

 

 

 

 

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