幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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217話 九つの異界、一つの戦い/共演㉒その2の70の途中まで

「それだけじゃない!」

 

そこへ、分析担当が更なる報告を上げてきた。

 

「催眠だ!

時計の規則的な音が、思考を麻痺(マヒ)させる催眠誘導になっている!

大抵の催眠対策を貫通する『杖』的な催眠術が、あっちの『ボク』“たち”の意識に干渉し、記憶と感覚を狂わせているんだ!

 

こんなんじゃ、何度挑んでも勝てるわけがないよ!」

 

更に、報告はそれだけでは終わらなかった。

 

「こちら雷の部屋!

収束していく呪力量が…計測出来ません!

計測器が…爆発したー!

あ、あれは…あわわわ!」

 

「ラクルラール工場都市からのご連絡です!

君も地上の楽園ハッピーラクルラールランドで幸せになろう!

ラクルラール様最高!努力!未来!あ びゅーてぃふるらくるら」

 

「深刻な精神汚染を確認!

接続を強制的に切断します!」

 

オペレーター・『ラリスキャニア』が、危(あや)ういところで叫びと共にテーブルのスイッチを勢いよく叩き、“汚染”された映像の枠を消去する。

 

だが、悪報はまだまだ続く。

その後も画面に様々な部屋が映し出され、恐ろしい速さで切り替わっていった。

そのどれもが苦境、誰もが悪夢的窮地。

火、風、水と泡、時計、豪華客船、雷、ネオン、そしてまだまだ増えていく。

 

例(たと)えばある『ラリスキャニア』“たち”は、いきなり巨大女神像にケンカを売られ、槍ダンジョンのてっぺんまで這い上がることを強制されていた。

その頭の上にはなぜか数字を示す立体画像が浮かび、その場所の全ての存在(キャラクター)は数字によって管理されていることを示していた。

 

小さい数字で規定された者は、より大きな数値の者には絶対に敵(かな)わず、故(ゆえ)にここでの戦いはひたすらな弱い者いじめによる収奪と、強化アイテムの奪い合いに終始することになる。

 

しかも、苦難はそれだけでは終わらなかった。

ダンジョンから悲鳴が上がる。

リスクを承知で使用したはずの神滅具の模造品や霊薬の副作用によって、『ラリスキャニア』“たち”が全滅したのだ。

数値バトルは、一見気楽でよっぽどの愚か者以外は楽に勝ち抜ける構造に見える。

だが、それは罠だった。

真剣に勝ち抜きを目指すためには、時間ごとに増えていく敵の数値の上昇を上回るか、こちらの数値を超える前に速攻で倒す必要があったのだ。

そして全滅したはずの一行は、最下層において最弱状態で復活させられ、またも頂点への強行軍を強(し)いられていた。

気づけば彼女“たち”は、ダンジョンを攻略しているのではなく、半強制的に“攻略させられていた”のだ。

この迷宮の本質は“勝ち筋(すじ)”が完全に固定された一本道(きょうせいスクロール)、一方通行の自動階段(エスカレーター)

この遊戯盤(ゲーム)の上に立った時から、既に地下アイドル“たち”は、ラクルラールの実質的な操り人形に仕立て上げられていた。

 

そしてまた別の『ラリスキャニア』は、溶岩と水と財宝が詰まったパズル的な迷宮に閉じ込められ、あらゆる選択を試(ため)すも、その全てが間違いとなり敗死を続ける。

 

更に、映し出される情景はそれで終わらない。

まだまだ移り変わっていく。

しかも、めくるめく部屋の景色には、なんと四季が揃(そろ)っていた。

春に咲き乱れる毒花の花園、酷暑の砂漠と密林で刃の木々、秋の嵐、蛇に毒虫、生命が死滅した冬を思わせる岩山、炉端で語られる神話、伝説などの場面の再現、そして雪解けの激流でまた季節は巡(めぐ)り…

 

「おい、これって」

「うん、これはどう見ても…」

 

ここまで来れば誰でも気づく。

明らかに“部屋”の数が九より多い。

外観よりずっと部屋が増えているのだ。

いくら夢の世界とはいえ、あまりにも野放図(のほうず)な有り様(さま)

それを目撃した『ラリスキャニア』全員の脳裏(のうり)を、閃きが襲う。

そのうちの一人が、その天啓(アイディア)を大きく叫んだ。

 

「先生は一度も“九つの『浄界(ぶたい)』を打ち破ってみろ”とは言っていない!

最初からここの『浄界』の数に指定は無いんだ!」

 

そう、このアイドル空間、ひいては第五階層の共通語である『ガロアンディアン語』いや、その母語である日本語で『八』が四方八方や嘘八百など『∞(むげん)』を表す使われ方をするように……この世界(ゼオーティア)において『9』とは、ときに無限を表す数字なのだ。

それにならえば、この九部屋は、まさに無限の迷宮、永遠に拡大を続けるラクルラールの牢獄であると言えよう。

 

そしてここへ来て、師弟の似て非なる差異が明らかにされた。

"量"の格差、それぞれが一度に操れる数の違いである。

ラクルラールは他ならぬ『人形師』の紀元(オリジナル)

大幅に劣化弱体化している現状でも、呪力さえ確保すれば人形などいくらでも操ることが出来る。

それに対し『ラリスキャニア』が行使している業(ワザ)は『分身』、あくまでも自己の分割である。

 

 

 

 

 

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