幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】 作:鳳卵
その答えに、質問者は意気込む。
「つまり、あえて"最適"を取らない理由があるわけですね。
だったら、先生に、ラクルラールに逆転するには…!」
そして彼女は、ある提案をした。
果たして、
〈…そうね、やはりその計画(プラン)が最適よ。
おそらくそれなら、あのラクルラールに対しても確実に一定の効果を見込めるかもね〉
推測は的中。
アイドル空間一の戦略家は、地下アイドルの案を肯定したのだ。
「か、勝てるのか!?」
「やったー!」
「この戦い、我々の勝利に…なるのか!?」
円卓を、歓声が包み込む。
だが、それもまた一瞬で静まり返ることになる。
〈けど、待ちなさい。
けど、それをやれば『ラリスキャニア』、貴女自身もただではすまないわよ。
あのラクルラールが、自分の弱点を見つけられたと知ってただで済ますはずがない。
今度こそ、本気で潰(つぶ)されるわよ〉
沸(わ)き立っていた群衆を鎮(しず)めたのは、冷徹な分析(シミュレート)と、それに負けないくらい厳しいまなざしだった。
けれど、
「先刻承知です」
質問者が、そしてその背後の円卓の面々は一斉にうなずく。
見返すその視線はどれも真っ直ぐで、その姿勢には一寸の歪(ゆが)みすら存在しなかった。
そこには、迷いのない覚悟が見て取れた。
それを見た協力者はため息をつき、不承不承(ふしょうらぶしょう)ながらそれを受け入れることにした。
〈良いわ、協力しましょう。
どのみちこの教師(あくむ)にカタをつけるには、こうして夢の世界で闘うことで徹底的に圧勝して、破壊(しょつきょ)するしかない。
今後のことを考えると、この処理ばかりは『適当』に済ませるわけにはいかないしね。
他に労力(コスト)と成果(ゴール)のバランスが取れる案も無いし、仕方がないから貴女に賭けてあげるわ。
……最後まで、ね。
ただ、あと一言だけ忠告しておくわ〉
そこで参謀は、こう付け加えた。
〈今のラクルラールは、呪いそのものよ。
下手に関わればもう逃(のが)れられず、その意志は全てを破滅へと巻き込んでいくことでしょう。
この分析をどう活かすか…それは、貴方たちに託すわ。
よく考えて使いなさい〉
そして更に、その言葉が、また『ラリスキャニア』“たち”に新たな閃きをもたらすことになる。
「そうか、もしかしたら…」
その発想は、すぐに念写され円卓とその外部に共有された。
“彼女”は、師の正体、いやその本質が少しだけ分かった気がしたのだ。
あえて言うなら、それは恐怖、悪夢、絶望、後悔、執着、悪縁、そして過去(おもいで)
第五階層を、そのヒトの心から心へと伝播してきた情報体。
それをどう理解――解釈するべきか。
まずは基本だ。
基本は全てに通じる。
擬似餌触手を変身させるときと同じこと。
相手の情報をまとめ、分析し、対策を立案する。
そのアイディアは、まずはこのような口上から始まった。
「『呪力』(ミーム)すなわち、ヒトの心を渡る、伝達・複製可能な情報。
あらゆる呪術存在、知的生命を成り立たせ、文化の継承を可能とする構成因子。
またの呼び名を…模倣子!」
〈突然どうしたの?
小学校一年生から人生を復習(やりなおし)でもするつもり?〉
そんな、唐突に長台詞を始めた地下アイドルに対して投げかけられたのは、手厳しい指摘(ツッコミ)だった。
正気を疑っているような口調だが、同時にその声音(こわね)からは雪山で仲間を起こそうとするような、分かりにくい優しさが感じられた。
まあ、それも当然(あたりまえ)かもしれない。
なんと言っても、そんな思いやりや気遣い無しに一大アイドルグループで不動の代表(センター)なんて、出来るわけがないのだから。
しかし、
「いや、“ボク”に復習なんて出来ないよ。
小学校の記憶なんて無いんだから、勉強のやり直しなんて…」
それに更に返されたのは、空気を読まない真剣回答(マジレス)であった。
一見もとい“一聞(いちぶん)”して、無意味で無価値にしか思えない反応(リアクション)
しかし、その疑似脳細胞の一片すら用いていなさそうなその言葉こそが、連鎖反応的な発想の飛躍をもたらすこととなる。
「そうか、理解だ…!」
それは、この"拡張・脳内会議"における決定権(キャスティングボート)の保持者、ボク議長からの発言だった。
〈えっ?〉
困惑する外部協力者。
その困惑を置き去りにしながらも、話は進む。
「理解、表現、伝達、そして共感。
アイドルアピールこそが、唯一の打開法、
先生を『攻略』可能な手段なんだ!」
〈そんな馬鹿な……〉
呆(あき)れたような反応をよそに、
「やろう」
議長(ファシリテーター)らしき者が、賛意を示す。
「ボク議長、しかし!」
「このままじゃ、負ける。
ボクたちの名声と『地位』は地に落ちるだろう。
しかも、それだけじゃない。
この戦いには、アイドル空間の、そして第五階層の未来がかかっているんだ!」
と、“群衆”の中ではどんどん話が進んでいった。
そして、
「もし、ラクルラールが勝利したら…」
「彼女は、復活してしまうかもしれない」
「第五階層に、アイドル空間にまたあの悪夢が…不自由で楽しさが少ない学園生活の日々が戻ってきてしまう!」
それらの声はだんだんと熱を帯びていき…
ついに、外部協力者への感謝を述べる者さえ現れ出した。