幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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220話 あくまでも、"ボクたち"らしく②その2の72~73の途中まで

「今までありがとう。

貴女たちのおかげで、“ボクたち”はここまで闘ってくることが出来た。

その協力が無ければとてもじゃないけど、こうまで善戦は出来なかったろう。

その助力に改めて感謝したい」

 

最後に、会議の取りまとめ役――“ボク議長”が付け加える。

 

「そして、それを無駄にしないためにも今こそ全力を出しきって…勝たなければならない。いや、勝ちたいんだ!」

 

次々と集まる賛同を前に、ついに諦めたのか協力者はそれを許容する。

 

〈…そう、やはりやるのね〉

 

「うん、貴女の伝えてくれた情報を活かして、全力でぶつかってみる。

もしダメだったら…そのときは、後始末お願いします」

 

〈別に構わないわ。

どうせ、ラクルラールの悪夢(きおく)という残滓(ざんし)は、いつか誰かが片付けなきゃならかったんだし。

…けど、本当に良いの?

別に貴方がやらなくなって、代わりに"処理"をやれるアイドルはいくらでもいるのよ?

誰かと一時的にグループを組んで戦ったって良い。

別に今ここで貴方が無理する必要なんて、何も無いわ。

決着をどうつけるかなんて、そんなの本当はどうだって良いことなのよ〉

 

しかし、板状(アクリル)人形の地下アイドル"たち"は、その問いかけに揃(そろ)って首を振った。

 

「心配ありがとう。

でも、やらなくちゃ。

いや、やりたいんだ。

ボクは、ボク"たち"は先生と決着をつけなきゃならない。

それは、あの学園を自力で"卒業"出来なかった全アイドル共通の課題だけど…まずは、ボク"たち"は、ボク"たち"だけで決着をつけたいんだ。

そうでないと…ここから一歩も動けない気がする。

これは、ボク"たち"が再び地の底(ここ)から再起(はばたく)ために、絶対に必要なことなんだよ!」

 

そして協力者は、事態に区切りをつける決定的な言葉を発した。

 

〈分かったわ

いってらっしゃい。

帰りは待たないからね〉

 

それに対し、威勢の良い返事が返される。

 

「待たせないよ。

すぐ帰るからね!

じゃあ、踊ろうか“みんな”!

こんな踊って/停滞してばかりだった会議なんかより、もっとマシな踊りを!

どんなに困難な舞台(ステージ)でも、どれだけ力量(レベル)が足りないように思える強敵(ライバル)相手でも…ちゃんと『ラリスキャニア(ボク“ら”)』らしい踊り(ダンス)を披露しなくちゃ!」

 

そして、全ての『ラリスキャニア』が配信窓(モニター)に向き合い、声を合わせた。

 

「「「行ってきます!」」」

 

 

 

 

まぶしい日差しが、熱砂を照りつける。

まるでかつてヒトビトが夢想で描いた理想世界(てんごく)のよう。

これこそまさに、『現実』として具現化した真の理想郷であった。

 

確かに、その領土は未(いま)だ、夢世界の内側のみに限定されている。

けれど、それでもこれは間違いなく楽園であった。

何しろ、ここには束縛が無い。

このラクルラールが作り上げた擬似『浄界』には、いかなる国家や宗教、霊性複合体からも干渉や支配が及んでいないのだ。

よって、この場所には、あらゆる法的規制や“外なる”倫理・『道徳』に従う必要が存在しなかった。

 

つまりこの砂浜は、完全な『脱税天国』(タックスヘヴン)なのだ。

その『自由』(むほう)さは、『ヘイブン』(避難所)というより、もはや完全に『天国』(ヘヴン)である。

ここではあらゆる義務と支払いを一部の者のみが逃れ、逆にその他の大勢(しょみん)は収奪され、その僅(わず)かばかりの財産(けつぜい)を、給付金や各種支援制度として奪われ利用されていく。

ただ欲深く、体制(システム)とその不備を上手く利用出来る適性がある者だけが救われる、俗悪(リアル)な楽土。

全ての欲望が叶(かな)えられる第九(ユートピア)の天(かんきょう)

ここには、自由しかない。

思いやりも友情も愛も必要無い。

もちろん、真の仲間や家族もありはしない。

だが、ここではその代わりに、ただ契約と市場が形作る有力者に有利な秩序と、『自由』があった。

強者だけに有利な『公平』だけが全てを治め、独占された詐術(ノウハウ)と言う神秘(えいち)だけが全てを見つけ、大金で雇われた弁護呪術師軍団だけが、その巧みな『呪文(きべん)』で愚直で怠け者な、つまりはただ真面目に働き給与を貰(もら)って生きることしか出来ないような全ての庶民(ロマンカインド)を、暗闇の中に永劫(えいごう)に繋(つな)ぎ止める。

これこそが、女教師がつく上げた『豪華客船(アウトロー・ヘイヴン)の部屋』の仕組み、彼女に無限の富をもたらす不正と収奪の機構であった。

 

そしてその当の本人、ラクルラールはいま何をやっているかと言えば…相変わらず過激な水着でデッキチェアに寝そべり、優雅な労働余暇(ワーキング・ホリデー)を気取っている。

 

けれど、サングラスをかけたその目は、相も変わらず小型端末の画面(モニター)を油断なく見張っているようだった。

それはもはや、ただ己の株や債券の成り行き(アップダウン)を見守っているばかりではない。

その商売(ビジネス)は、より範囲を広げていた。

 

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