幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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221話 あくまでも、"ボクたち"らしく③その2の73の途中まで

端末の一つの窓では、その価値が呪術的にも進行されている金塊や第五階層特産の複合種(コンプレックス)関連の売買が行われ、また別の窓では宗教法人や聖遺物の取引が行われている。

聖遺物の扱いは、寄付扱いで租税が免除される宗教団体の特権行為であり、多くの国で許可が必要とされるのだが……もちろん、そんなものをこの女が取っているわけもない。

 

そして窓の中でも最も中心にあるものでは、架空領収書から名義貸しやプライベートバンクまでさまざまな脱税ビジネスの指南(ノウハウ)が恐ろしい速度で布教され続けていた。

各国の、それになにより『上』と『下』における税法は、未だに統一される見込みが無い。

商業(ビジネス)も宗教も大昔から国際的なものとなっているのに、それらに課税する法制(システム)はと言えば、未(いま)だに伝統と文化に依拠する地域的(ローカル)な国家に縛られた、非効率なものに留まっている。

ゆえに、そこには幾(いく)らでも法の抜け穴(ループホール)があった。

 

当然、そんな"裏"の商売(ビジネス)を扱うラクルラールは、『脱税支援ブローカー』などと呼ばれるような小物ではない。

彼女は、国際的で複雑な脱税スキームを編み出す裏社会の『プロモーター』である。

彼女たちは、全ては自己責任と頭の良し悪しの問題だと嘯(うそぶ)き、各国から己にとって有利な法制度を次々と選び取り飛び回っては、ひたすらに私服を肥やしていく。

 

そんな投資家(かねもち)たちも、もちろん税金の援助は受けるだろう。

インフラ、質の高い労働力、豊かな中間層が不可欠な市場など、国家の持つ物理的・呪術的な資力(シソース)を幾らでも要求しまた利用し、たとえ何度破産してもそうした外力を以(もっ)て復活し続けることだろう。

 

けれど、女教師たちがそれを『恩』や『返報性』に感じることはない。

なぜなら、投資家の世界観(かちきじゅん)の中には、『社会的責任』や『相互扶助』といった定義(ことば)は存在しないのだから。

その独善的(エゴイスティツク)な教えに曰く、"そうした『呪文』(おしえ)や社会(システム)は弱者のためだけのもの、愚民を洗脳し利用するものであって『自分たち』とは無関係"である。

それが、彼女たちが『無敵』を誇る理由であり、その世界観なのだ。

 

だから彼女たちは、その窓の外を決して見ない。

目を向けることは絶対にない。

そのまなざしは、永遠に数値化された自分たちの利益だけを見つめ、その精神(アストラル)は己が利益だけを考え、その脳髄には自分を中心とした利益構造だけがある。

それは何の責任も『道徳』も存在しない、ただ永劫に私益を追求するだけの金融遊戯(マネーゲーム)であった。

 

ゆえに、遊技台(ビリヤード)のキューがその摩擦熱(あつさ)を訴(うった)え、氷山でアイスケーキやアイス大福が軽やかに切られ、鉄骨渡りや吸血麻雀や斬首ルーレットから悲鳴が鳴り響く中……それでも黒に包まれた女教師のその眼(まなこ)は、ひたすら流動を続ける画面の数値と図表(グラフ)を見つめ続けていた。

やがて、その口元に微(かす)かな笑みが浮かんだとき、それまでぼやけていた背景がくっきりと輪郭(りんかく)を強め、一人の人物が彼女に歩み寄(よ)ってきた。

 

それは召使い。

“彼”は、常夏のビーチにも関わらず、完璧な礼装に身を包み、ただ飲まれもせず大量に中身を撒き散らされている無数の酒瓶を避けながら進んで来る。

砂浜に散らばるそれらは、単なる祭事(ハレ)の塵芥(ゴミ)ではない。

れっきとしたパーティの演出、浪費的誇示(ポトラッチ)である。

こうした浪費の“見せびらかし”の競争こそが、更なる浪費を促し、それが巡り巡って祭事(パーティ)の開催者たる女教師の利益となっていくのであった。

 

そして召使いはそのまま、まるで聖なる呪物でも運んでいるかのように、あるいは聖者の首でも載せられているかの如(ごと)く、うやうやしく銀盆を掲(かか)げ、ラクルラールに近寄って来た。

その銀の上に燦然(さんぜん)と輝くのは、巨大で華やかなパフェと、やたらと複雑な名前をつけられた特注のホットコーヒー。

更に止(とど)めとして、巨大な世界槍(やり)の如く君臨するのが、『花火』呪符のついた超高級シャンパンであり、それは虹の輝きを放つ黄金ボトルに詰められて提供される。

それは間違いなく、彼女の勝利を祝う祝杯であった。

完璧に計算された美しい動きが、人びとの羨望(あこがれ)のまなざしを集めながら、良く指揮(しき)された交響楽団(オーケストラ)のようにしずしずと砂浜(ビーチ)を運ばれていった。

 

しかし、その道程の終着は意外な幕引きを告げることになる。

 

背後の浮かれた金持ちたちからの、動揺の声が辺りを包み込む。

なぜなら……まるで手品のように銀盆が消え失せ,その代わりにラクルラールに向けて銃口が突きつけられていたからだ。

簡単な『幻惑』の呪術、偽装工作が剥(は)がされ、深刻(シリアス)な現実が顔を覗(のぞ)かせていた。

 

だがそれでも、女教師は全く動じない。

彼女は、寝そべったまま鋭く見返し問いかけた。

 

「何のつもりだ?」

 

答えは、一言。

 

「決まってるだろ?"ボクたち"の革命(レビュー)だよ!」

 

そして、反撃の火蓋はシャンパンの栓(せん)を抜く陽気な音と共にもたらされた。

銃口から、勢い良くコルク栓が撃ち出されたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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