幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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224話 工場の策動③ その2の75~76の途中まで

いつの間にか手に握り込んでいたそれは、小さな紙片。

それは、走り書きされた物理メモであり、地図らしき図形とわずかな言葉が残されていた。

 

社員(カポ)は、それを読み上げようとして…なぜかその代わりに、懐(ふところ)にしまい込んでしまう。

それもなぜか、周囲の視線(カメラ)から逃れるかのように、素早くさりげなさを装った動作を取ってしまっていた。

何故(なぜ)だろう?

我ながら、意味が分からない。

 

とりあえず、まるで復習するかのように紙片の内容をつぶやく。

それもなぜか、口の中だけで。

誰からも聞こえないようにしているかのように。

それは奇妙な、今まで世界(こうじょう)で聞いたこともないような伝言(メッセージ)だった。

 

「今夜、革命(レビュー)の時…?」

 

 

 

 

長く狭い道のり。

とてもヒトが通れるとは思えないような隙間や物置部屋、果ては通気孔(エアダクト)や下水道さえも通り抜け、曲がりくねった道筋を迷いながらひたすら進み続けた先に、それはあった。

 

それはまるで、完璧なはずの工場都市(ラクルラール)のシステムが見過ごしているかのような、大きく錆(さ)びついた金属扉。

有るはずの無い陥穽(ラビットホール)

 

ここまで来たら、もう迷わない。

何より疲れ切って、他の選択肢が思い浮かびそうにない。

ゆえに迷わず、扉を開けた。

 

貴重な睡眠時間を削って行動し、物理メモの裏に記された手順に従って都市の監視システムをくぐり抜けた先にあったのは、薄暗くそして開けた空間だった。

仄(ほの)かな光が、ぼんやりとその広大さを示している。

目が慣れると、そこには驚きの光景があった。

 

ヒト、ヒト、ヒト。

見渡す限り一面をヒトが覆い尽くしている。

 

「なんだこれは、何の集会場だ!?」

 

明確な違法行為だ。

こんな振る舞い、あらゆる社則や場内法規に違反している。

こんなことを、これほど多くの工員たちが行っているなんて…!

 

反射的にアプリで即時通報しようとして、正社員(カポ)は戸惑った。

いけない、そういえば地図の注意書き通りに、サングラスは部屋に置いてきたのだった。

試しに、記された手順通りにやってみたら外(はず)れたとはいえ、あんなことをするんじゃなかった。

内部洗浄機能すら備え、いつもいつでも身体の一部だったあの端末が無いと、まるで急に地面がなくなったかのようで、また全裸で出歩いているかのようで落ち着かない。

全裸徘徊(ぜんらはいかい)とか、これじゃまるで、シナモリアキラじゃないか!?

 

……いや、“シナモリアキラ”ってなんだ?

 

良く分からない奇妙な言葉(フレーズ)が頭に浮かんで、更に混乱を増していく名工員(カポ)

だが、そんな“彼”も、今はただ大人しくするしかない。

周(まわ)りの群集が、静まり返っているからだ。

ここで騒げば、一人だけ悪目立ちしてしまう。

 

それに、端末もアプリも無い今、行動の規範として参照出来るのは、周囲の振る舞いだけだ。

だから、心身の安定性を保つには、ひたすら周りを模倣(コピー)しその再演を図るより他になかった。

そうして“彼”が待機と自己の安定に専念していると…やがて群集にざわめきが生じ、そして一斉に消えた。

 

これはおそらく…

 

(みんな、何かを待っているのか?

しかし、何を?)

 

その問いの答えは、すぐに示された。

薄暗い部屋の奥、闇の奥に据(す)えられた舞台(ステージ)に、一人の人物が現れたのだ。

その時、不意にスポットライトが人影を浮かび上がらせた。

 

途端、耳が爆発した。

いや、壊れてはいない。

触(さわ)って確かめたが、耳は無事だ。

身体機能にどこも破損は無い。

この現象の正体は…轟音だ。

あまりにも大きな音が、周囲の群衆全員が一斉(いっせい)に上げた声が、まるで爆発したかのような圧力を及(およ)ぼし、それが耳の機能を一時的に不全にさせたのだ。

それは、とてつもない盛り上がりだった。

 

しかも、変化はそれだけでは終わらない。

異常現象の正体に気づくや否や、次なる事変が、また正社員(カポ)を襲ったのだ。

それは、轟音の終結。

突然の、静謐。

壇上の人物の腕がさっと振られただけで、お湯のように沸騰(ふっとう)していた会場が、一瞬で静まり返ったのだ。

 

あまりの統率ぶりに、迷い込んだ"彼”は動揺を抑えきれない。

 

そして、演説が始まった。

壇上の話者は、性別も年齢も分からない、服装すら何故かよく分からない。

けれど、その声だけは会場の隅々まで良く届き、その視界の中に自分が収められていることだけは、これまた何故かしっかりと確信出来た。

 

けれど、その内容については…はっきり言ってよく分からなかった。

出てくるのは、比喩(ひゆ)や平易な話題ばかり。

はっきり言って、ほとんどは聞いてすぐに忘れてしまうような話だ。

 

だが、そこに何故(なぜ)か、そこはかとない違和感が残る。

どうにも看過出来ない、謎の印象。

それはまるで、合成ロクゼン茶を飲んだ後の、残り滓(かす)のよう。

 

 

 

 

 

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