幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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225話 工場の策動④ その2の76~77の途中まで

あるいはそれは波。

話者の喜んだり、驚いたりといった感情、それに感応しまるで波のように共鳴していく波のようなうねり。

ただひたすら、そんな大きな盛り上がりだけは、密着する“彼ら”の身体を通して直接的(ダイレクト)に感じられるのだ。

 

気づけば、話は終わっていた。

 

しかし、聴衆はまだ何かを待ち望んでいる。

次の演目(コンテンツ)が始まるのだ。

 

そして間も無く。

先程までの話者が、さっと手を振った。

それこそが、合図だった。

唐突に薄闇の中、一斉(いっせい)に声があがる。

 

構図は完全に逆転していた。

今ではかつての話者が沈黙し、聴衆が歌い出している。

同じ文句(フレーズ)が、繰り返される。

それは、出来の悪い歌であった。

旋律(メロディ)は単純、歌詞も同じ語句(フレーズ)をいくつか繰り返すばかり。

それも、「奮い立て!」とか「我らは一つ!」とか、そんな言葉ばかりだ。

極めてシンプルすぎる、スローガンめいた練り上げ(クオリティ)の低い合唱。

 

だが、妙に耳に、そして心に響く。

聞いていると、赤い旗が鮮やかに翻(ひるがえ)るイメージが、自然と脳裏に浮かんで来る。

なんだか、どこかの戦いの映像で、そんなものを見た気がしてきた。

地上を蠢く死者たちの海を、赤い旗を振り回す黒騎士が突っ切っていく姿が目(まなこ)に浮かぶのだ。

代わりに用意されていたのは、再びの弁舌(ことば)だ。

 

どうやら、演説と歌が交互に繰り返される方式(スタイル)らしい。

なんだまたか、と未来(さき)を見切ったことで、倦怠(けんたい)と諦観に包まれようとした、まさにその時!

 

「キミ、ちょっと聞いても良いかい?」

 

予想外の現象が、侵入者(カポ)を襲っていた。

言葉が、"彼”に投げかけられ指差されていたのだ。

 

それも、選(よ)りに選(よ)って壇上の、あの人物から。

 

指名された。

今まさに、質問を迫られているのだ。

 

「ひ、ひぃ…っ!」

 

急な出来事に驚く。

だが、演説者はその想定される地位に反して、意外なほど優しく声をかけてきた。

 

「キミは、今困(こま)っていないかい?」

 

「こ、困って…?」

 

意味が分からない。

分からないまま、話は進む。

 

「そうだ、困っていないかい?」

「べ、べつに“ボク”は、いま困ってなんて…」

 

「そうかな?

じゃあなんで、キミはここへ来たんだい?」

 

そう改めて問われると、言葉を詰まらせずにはいられない。

 

…いやホント、なんでだったっけ?

そうだ、ここへ来たのは単に…

 

「好奇心で試してみただけ。

ただの試験(テスト) 

気の迷いです!」

 

しかし、そこへ重ねて問われる。

 

「本当に?」

 

くどい。

 

正社員(カポ)は、苛立ちを込めて問いかけを突き放した。

 

「本当です!

もう放っておいてくださいよ!

通報は…とりあえず、しないでおきます。

だから、貴方も“ボク”を放っておいて下さい!」

 

そう答えると、演説者は今度こそ納得したようで。

 

「ふむ、良いだろう。

だが、覚えておきたまえ、気まぐれな試験官クン。

ここは、そして“私”は、いつまでもキミのことを待っている、と言うことを。

また来るなら、いつ何時(なんどき)でも歓迎しよう」

 

と、うなずいた。

そして、また歌が始まる。

 

今度は演説者も歌う(カポを除いた)全員での合唱だ。

足を踏み鳴らし、一斉に手を打ち鳴らす。

それは、対抗文化(カウンターカルチャー)を褒(ほ)め称える歌。

体制の外部(アウトサイド)、周縁であることこそを、良しとする思想。

工場都市(ここ)では絶対にあり得ない、そんな考えがこの場所では全肯定され、それへの共感が大きな声で斉唱(せいしょう)される。

それは、逆立ちした価値観の賛歌だった。

 

やがて、唐突に始まったそれは、同じくまた唐突に終わる。

どうやらこの演目(コンテンツ)にも、終わりは来るようだ。

そして、最後にこれを締めくくったのは…なんと、歓迎の祝福だった。

その呼びかけの対象は、もちろんこそこそと去り行こうとする相手であって…

 

「たとえそれが『気の迷い』だとしても、そんなことは関係ない!

キミは間違いなく、“私たち”の大事なお客様!

親愛なる隣人だ!

なんでもその望みを聞き遂げ、あらゆる手段を以(も)ってもてなそう!

我らが愛しき異邦人(グロソラリア)よ!」

 

だから、流石(さすが)の名工員(カポ)も、思わず立ち止まった。

 

「な、なんでまた?」

 

その最後の文句(ワード)が"、帰りかけの背に、彼"(カポ)に対して、突き刺さっていた。

思わず声に出たのは、反射的に浮かんだ疑問。

 

当然、応答を期待したものではなかったが…果たして、生真面目にも答えはまた返ってきた。

 

「…何故かって?

そんなのは簡単さ!

キミが遠くから来た…“私たち”とは違う存在だからだよ!」

 

なんだそれは。

 

あまりの違和感から、思わずまた反射で発言してしまう。

 

「意味が分かりません」

 

「どうして?」

 

「…だって、違うモノは排斥するのが当たり前じゃないですか。

そうでないと、気持ち悪い」

 

 

そうだ、そのはずだ。

それが正しい…唯一の真理、そのはずなのだ。

だから、

 

 

 

 

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