幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】 作:鳳卵
「違うものは、お互い離れて…分けられているのが一番良い!
“ボク”は平穏な日時に戻りたいんだ!
ちゃんと工場(ラクルラール)の計画(アプリ)がやるべきことと評価を与えてくれる、仕事に支配された日常に!」
けれど、それには静かに異論が唱(とな)えられた。
「だけど、それにも例外がある」
「何ですか?
そんなもの、あるわけ無い」
その断言を、“彼”は小さく笑って否定した。
「いいやある。
『免疫』さ」
「『免疫』…?」
さらに浮かぶ疑問。
しかし、それには今度こそ答えは返らなかった。
急に明かりが落ち、元聴衆たちは一斉に出口へと押し寄せる。
そうなると、否応もない。
ヒトの波に押し流された正社員(カポ)は、もはや強制的に帰らざるを得なかったのだ。
※
しかし、その翌日。
「ようこそ、『リトルピープル同盟』へ!」
"彼"は、あの秘密の会場(フロア)に再び訪れていた。
落ち着かない気持ち悪さを抱えたまま、また反射的にその衝動を言葉にする。
「…そう言えば、聞いていませんでしたね。
貴方、なんてお名前ですか?」
この工場都市では名前なんて無いのが当たり前だ。
だが、"彼"にはある。
なぜか、それだけは確信できた。
果たして、答えは直(す)ぐ様返ってくる。
オブライエンだ。
これから末永い付き合いになるよ、きっと!」
それが、始まりだった。
それを切っ掛けとして、その正社員(カポ)の秘密の地下会場通いは、習慣となって続けられるようになっていったのだ…
※
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こっそりと、次第に大胆に。
幾度(いくど)も“訪問”は、日々を追うごとに繰り返され…“彼”は段々と“深み”にハマっていった。
やがて、この都市で『季節感』を演出する僅(わず)かな存在、“季節ガチャ”や“祝祭特番”がまた一周して巡(めぐ)って来る頃には…その習慣は完全にその日課となっていたのであった。
そして“彼”の習慣、地下革命(レビュー)会場における定番の振る舞いと言えば、それは『問答』である。
初めは単なる疑問、そして茶化しや批判だったそれはいつしか繰り返され、まるで学会のような一種の定例行事となっていた。
それは例えば、次のように始まったのだ。
※
「君たちはこう思っているはずだ。
この工場(ラクルラール)こそが支配者であり、完璧なのだ。
それに対し、自分たちは『召使い』や『奴隷』に過ぎず、常に“彼女”に操られるだけの『不完全』で『ほぼ不用』な存在に過ぎない。
“ボクら”の『価値』は、全て“彼女”の意のまま、その査定を受けなければどうにもならない、と」
「その通りでは?」
応じる工員の口調からは、全く、その程度の事が分からないなんて君は本当に馬鹿なぁ、とでも言いたげな気配が漂(ただよ)っていた。
だが。オブライエンはそれを静かに否定する。
「違う。
確かに、この工場の工員たちは、今は残らず工場長(ラクルラール)によってサングラス(たんまつ)のアプリで支配されていて、その心身のどこにも自由は無い。
日中はもちろん夜間も監視され続け、常に支配から抜け出せない。
例外は、ここにいる“ボクら”のように特殊な技術によって監視をごまかして外出している一部だけ。
しかもそれも、あくまで限定的なもの、期間限定の誤魔化しに過ぎない。
そうした意味では、確かに工場(ここ)の支配は万全であると言えるだろう。
だが、そこには恐るべき絡繰(カラクリ)がある。
この工場は、本来設計上は成り立たない。
とてもじゃないが、維持呪力(エネルギー)が賄(まかない)いきれないんだ。
つまり…ここの、工場都市ラクルラールが稼働(かどう)するために必要な呪力は、全てこの工場で働いている人間(ロマンカインド)から抽出されているんだよ。
工場都市(ラクルラール)が、アプリを使って払わせている課金(ガチャ)だの月賦(サブスク)だのも、
結局はそのための名目(タテマエ)でしかない。
言ってみれば、“ボクら”は“彼女”の『電池』なんだ」
「そんなの…やっぱり変わらないじゃないですか。
むしろ、かえって絶望が増したまでありますよ!」
話を聞いて、憤(いきどお)る客人(カポ)
それを見て、オブライエンは何が面白いのかニヤリと笑い、こう続けた。
「そう、だから…逆に言えば、“ボクら”さえその気になれば、“彼女”を兵糧攻め(じゅりょくかっと)することが出来る。
エネルギーを断って完全勝利出来ると言うわけだね。
工場都市(ラクルラール)と言う“竜”をその“生贄”でしかなかったはずの“鼠(ネズミ)たち”が飢えさせる…
どうだい?
なかなか魅力的な話しだとは思わないかい?」
「…それはそうかもしれま…いや、もう少し考えてみます!騙されませんよ!」
「良いよ良いよ〜たっぷりと考えておくと良い。たあっぷりとね」
意味深な笑みを浮かべるオブライエンを聞き手が睨(にら)み、その話題は一旦(いったん)終わった。
だが、その後もその内容は工員(カポ)の中で、長く尾を引き続けていくことになる。