幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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229話 工場の策動⑧ その2の79の途中まで

更にラクルラールは、次々と矢継ぎ早(ばや)に問いを投げかけ、回答者たちから冷静さと思考する猶予(ゆうよ)を奪っていった。

 

「24時間、いや日付変更線を超え時間操作呪術(はいいろ)を用い25時間以上働けるか!

常に社から遠隔労働義務(テレワーク)をこなし、公私混同の精神の下(もと)全ての私生活(プライベート)を仕事に捧げられるか?」

 

「キーッ!」

 

「キーッ!」

 

「キーッ!」

 

「キ、キキィ…」

 

しかし、ここで始めて口籠(くちご)もる猿が出現。

その報復であるかのように、全周囲から冷たい視線が注がれる。

そこで間髪(かんはつ)入れずラクルラール部長人形から指示が下される…までもなく、処分は“自主的”に下された。

すなわち、

 

「キイーッキイー!」

 

「キイーッキイー!」

 

「キイーッキイー!」

 

同僚だったはずの仲間の猿たちからの一斉攻撃である。

まるで蜜蜂の『熱殺蜂球(ねっさつほうきゅう)』のように、たった一匹の猿に残り全てが群がって攻撃し、ただひたすらに痛めつける。

しばらく経(た)った後、包囲は解除されたが…そこには何一つとして残されてはいなかった。

 

もちろんその後も、演説は続く。

何事も無かったかのように。

そしてやがて演説は、クライマックスを迎える。

女部長は、丁寧にそして自信たっぷりに宣言。

 

「さて、では我が誇るべき『人財』たちに然(しか)るべき処遇を与えねばな」

 

そして彼女は指揮者のように、さっと手を振った。

するとどうだろう。

まるで一面の花畑のように、更に新たに無数の映像小窓が辺(あた)り一面に咲き誇り…

 

「15番、32番、48番、72番は成績不振のため契約解除だ。

廃棄処分とする」

 

無情な宣告と共に、その幾(いく)つかが隅(スミ)のゴミ箱アイコンへと吸い込まれていった。

「「「「キギッ!?」」」」

 

そしてもちろん、廃棄扱いになった猿はすぐさま処分。

足元に穴が空き、一瞬だけ空中に静止する。

まるでコメディアニメの一場面だが、もちろん実際には大いに異なる。

それは単に、“これは残酷なことではありませんよ”という演出に過ぎないのだ。

もはや工場都市では忘れられがちな事実だが、ここでの活動(レビュー)は残らずリアルタイム配信されている。

観客への配慮、好感を得るための手管(こざいく)は、企業広報の面からも当然欠かすことは出来なかったのだ。

 

とは言え処分された中には、先程の集団暴行(リンチ)を率(ひき)いたり扇動していた者もいたのが…それもラクルラールはお構いなし。

彼女は差別はしない。

全て平等に…私利私欲(エゴイズム)で裁くだけだ。

 

「3番、7番、24番、48番!」

 

「「「「キギッ!?」」」」

 

更にその後も、

 

「1番、9番、28番、33番!」

 

「6番、45番、82番、1057番!」

処刑の通達は次々と下されていった。

そして、最後に女部長が目を向けたのは…

 

「次はお前だ不良品」

 

演説者が声をかけたのは…

 

「えっ?」

 

当然のように、そこに一人だけ取り残されていた賓客(ゲスト)であった。

唐突な断罪に、戸惑う底辺工員。

そんな“彼”に、ラクルラールは淡々と語りかける。

 

「その程度のこと、気づかぬ私だと思ったか?

お前が、そうして陰鬱な態度を取って悪影響(ミアズマ)を振りまき、周囲の色相(クオリア)を『汚染』していたことなど、とうにお見通しだ!」

 

発言の途中で声音がガラリと切り替わり、四方八方に展開された映像窓が、揃(そろ)って巨大な一つ目を映し出す。

 

「そんな…なんのことだか…」

 

更に混乱する工員に対し、一つ目たちの主は躊躇(ちゅうちょ)なく叫んだ。

 

「義務であるアンケート回答や作業を毎回0.05秒以上遅れて行っていたな?

そのせいでどれだけの損失が生じたことか!

『反勤労(ねそべり)』戦術でこの工場都市ラクルラールの素晴らしい空気(ムード)を破壊し怠惰(たいだ)を感染させようとは良い度胸(どきょう)だな!」

 

「えっ、いやボクはただちょっと考え事を…どうしても悩むのを止められなくて」

 

「なら幸福剤を飲めば良い。

カウンセリングアプリでも問題は無いしそもそも各所のポスターや画像の広告には催眠(サブリミナル)『無思考』化の効果が存分に含まれていたはずだ。

何故(なぜ)それが効かない効こうとしない注意を逸(そ)らすお得情報盛り沢山(だくさん)だぞ何処(どこ)に不満がある貴様この私を否定するのかこのラクルラールの完璧な施策のどこが不満だ」

 

「えっ、えっ、か、考えたり悩んだりしちゃダメなんですか?」

 

これに対し、ラクルラールはまたも即答。

 

「駄目だ。

むしろ何故許されると思ったこの工場都市(ラクルラール)の完璧なる経済(しほんしゅぎ)に遅延や不備が許されてたまるものか」

 

「…」

 

ついに何もしゃべれなくなった聞き手。

それに対し、演説者は構わず畳み掛ける。

 

「だからこうして隔離した。

防疫と吸血鬼退治の基本は、閉鎖空間(ひつぎ)の中に閉じこめることだからな。

『栄転』と言う栄誉、祝福であれば例(たと)え防御や対抗呪術の類(たぐい)があったとしても、こうして無効化出来ると言うわけだ。ああそうそう、お前が何やら依存していたアマチュアweb長編漫画と小説も、ついでに削除しておいたぞ。

もちろんその作者も一緒にな。

良かったなぁ、これでもういつ来るか分からない更新日に悩むことは無くなったぞ!」

 

 

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