幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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230話 工場の策動⑨ その2の79~80の途中まで

そして、叫ぶラクルラールの背後にまた新たな配信窓が展開し、作者らしい小さな黄羽根の鳥人を映し出す。

金糸雀(カナリア)種のようだが、その姿からは苦しみしか感じられない。

それも当然。まるで踊るかのようなその動きは死へ向かう藻掻(もが)き。

ラクルラールが散布した毒ガスか、それとも工場都市で密かに情報が握りつぶされた大気汚染(こうがい)か。

いずれにしても、もたらされるのは…確実な死。

それ以外には考えられなかった。

 

更に、部長ラクルラールは高らかに言い放つ。

 

「作品にしても、こうして象徴に固定してしまえば同じことだ」

 

その言葉と共に周囲のデスクに存在する画面から青い光が漏れ、キーボードの代わりに置いてあった印字装置(タイプライター)を照らし出した。

続けて作品から呪力(ミーム)が抽出され、一つの幻像(イメージ)として象徴化(シンボライズ)

現れたのは、鉄願の民に無理矢理に牛系の特徴を追加したかのような女性の姿。

しかしその固定された作品のイメージは、ラクルラールの手によって、同じく投影画像の工場機械(ライン)に放り込まれ、更に強制的に加工されていく。

そして終(しま)いには、それは適当な『値札(レッテル)』を貼られた“それっぽい何か”として分解再構築され、パック詰めされて出荷されていってしまうのだ。

 

「このように煮るも焼くも自由自在!

コイツはこれからは我が工場と会社の利益のためにいくらでも流用可能な自由使用コンテンツだ!」

 

「そ、そんな!なんてことを!あの作品たちが、苦しくて空(むな)しい工場生活で数少ない心の支えだったのに!

あと、作者さんたちはアマチュアじゃなくて立派なプロです!今ちょっと力を溜(た)めていただけで、やがて必ずまた世に認められるはずだったんです!

無断で他人の作品を改ざんして商品にするなんて犯罪ですし、『道徳(モラル)』として許されない悪行ですよ!」

 

今までぼんやりしていた落ちこぼれ工員が、ここへきて熱烈な訴えを始める。

だが、

 

「知らんな。

いかに無料とはいえネットで長い小説の更新を待ち望んだりファンアートや二次創作を作ろうとする者など存在しない!その内容を覚えている者もだ!だから適当な休載(エターナル)コンテンツを少々“加工”し!現時点で完結したことにして、こちらで商業的(うれそう)な要素だけを抜き出して利用したところで別に問題は無い!更に我が社関連の政治家と弁護士を媒介として法制を市場開放名目で改変!作者死亡あるいは死亡と見込まれた場合著作権も商標権も適当な企業即(すなわ)ちわが社が二束三文(ただどうぜん)で買い取り利用出来ることとする!

愚民どもが評価基準を共有出来るのは“薔薇色のレンガで出来たすてきな家”などではなく“デザイン料十億ガロアンディアン円を超える設計済み住宅”!売れるのも、 説明が必要な“ゾウを呑んだウワバミの絵”ではなく、“流行の高級帽子イラスト”!

そうやって売り出されないモノの居場所などこの工場都市の何処(どこ)にも在りはしないのだ!全ては『交換可能性』!数値(スカラー)と序列(ベクトル)に換算可能でこそ価値であり、この私の評価(しょうにん)を基礎付ける“踏み台”ともなる!

そうでない『芸術』だの『美』だの『癒し』だの『楽しさ』だの『面白さ』だのそして『思考』や『愛』など文字通り『一銭の価値もない』!現在、私の金銭的利益にならない価値など無いも同じ、いや虚無そのものだ!作品(ウタ)を歌えぬ金糸雀など、裏のお山にでも捨てれば良い!実質的な廃棄処分作品(がらくた)を再利用(リサイクル)して何が悪いというのだ!そんな作家も作品もいっそミンチにして売りつけるだけだ!特価100グラム88ガロアンディアン円!お買い得だぞ!」

 

返ってきたのは、怒涛(どとう)のような長広舌(ちょうこうぜつ)

それにより、無情にも訴えはあっさりと切り捨てられてしまった。

 

「そんな、酷すぎる!豊かだった表現は削られ、伏線も深みも完全に無くなっているじゃありませんか!アレじゃただの劣化複製です!貴女はかえって、作品本来の価値を切り捨てて台無しにしてしまっています!

やがて人類全体に大きな恵みを与えたかもしれない価値を!」

 

反論するも、独善的な部長、そしてその操り主である工場長いがそれを聞き入れるわけもない。

 

「それが売れる!それこそが"売れ筋"なのだ。つまりはありきたりで流行りで誰もがすぐ持て囃(はや)しすぐに飽きるものこそが我々の生業(ビジネス)に役立つ商品(コモディティ) !あるいはお手軽な消耗品(ファーストフード)!要は『交換可能』な部品(ハグルマ)の一つと言う訳(ワケ)だ。

そう、ちょうどこんなふうにな」

 

そう語る部長ラクルラールは、画面の中の立体映像をいくつな“拾い上げた”

 

するとそれはたちまち、“天然および養殖撃鉄鳥(コック)0%”と書かれたラベルが貼られたフライド撃鉄鳥となり、工場からどこかへ――察するにどこかのスーパーかコンビニに――運ばれていく。

 

 

 

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