幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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234話 工場の策動⑬ その2の83の途中まで

同時に、全てが加速し始めた。

 

全ての画面(スクリーン)に毛皮に覆われた生物が映り、あらゆる操作を阻害。

この瞬間、工場都市の機能を麻痺(マヒ)させていた原因、無数の『猫(アウターゴッズ)』が、その姿を露(あら)わにし、牙を剥(む)いて襲いかかって来たのだ。

 

「毛が!毛が精密機器に!」

 

「障子(しょうじ)が!毛糸玉も!最近売り上げ順調だった製品が残らず破壊されていく!」

 

「コードが奪われた!あああ絡(から)まって!」

 

「ああ、窓に!窓に!」

 

猫が走る。

猫が跳(と)ぶ。

照明によじ登る。

爪研ぎをする。

あくびをする。

捕まえた鼠(ねずみ)を持ってくる。

コンベヤを止める。

その上で寝る。

おしっこをする。

恋の歌を歌う。

大合唱になる。

闘争をくり広げる。

子作りをする。

 

そして猫は…何もしなかったりしていた。

もはや、以前の秩序は完全に破壊され、場は混沌に満ちている。

 

しかしそれでも、ここはラクルラールが手塩にかけて管理してきた工場都市だ。

その運営(システム)は、当然ながら二重三重いやいや九重にも渡るバックアップによって守護(まも)られており、未(いま)だ健在だった。

 

だが、それも所詮は無駄。

突然、確かに何も無かったはずの虚空から『ヨシ!』『ヨシ!』と指差し呼称が響き渡るや否や、それまで確かに機能していたはずの機器が、まるで“時間を遡って”壊れた原因が創られたかのように、あるいは次々と不調を起こし、またあるいは不注意で危険な使用によって破壊されていく。

システムの守護と整備にあたっていたはずの担当工員たちは、気づけばとっくに毛だらけ顔の猫耳に入れ替わられていたのだ。

 

更に、工場都市の表層部にも変事が起きていた。

裸の巨大美少女が、都市をまたぐ。

もちろん彼女に実体は無い。

自己顕示欲が強い幻像つきウイルスアプリが、ばらまかれているのだ。

流石(さすが)に重要な意味付けをされた部位(プライベート・ゾーン)だけは偏光迷彩(ぼかし)の呪術で隠されているが、ゾーニングも何もあったものではない情景である。

巨大美少女が歩くたびに、その行く先々で蝙蝠(こうもり)が舞い上がり機器が故障しラクルラールのポスターが彼女のものに塗り替えられていく。

一級言語魔術師に準ずる技量と、多数の支援により強大な呪文干渉(クラッキング)が、即時処理(リアルタイム)で行われ続けているのだ。

完璧な管理と支配の下(もと)にあり整然としていたはずの街並みには、もはや秩序も規範もありはしなかった。

 

もう一度繰り返そう。

ラクルラールは、あまりにも多くの第五階層住人から恨みを買っていた。

なにしろ、その全員が洗脳されて強制的に生徒にさせられ、教育虐待めいた扱いを受けていたからだ。

よって呪文干渉に参加し並列処理の一翼となる者は後を絶たず、それ以外の支援も(この土地には珍しく)自主的に行う参加者は時を追うごとに増えていく。

そしてそれは、留まるところを知らなかった。

 

それに対し、即座に反応したのはやはりと言うべきか、オブライエンだった。

 

「反撃だ!攻撃」

 

しかし、その命令に応(こた)える者はない。

最精鋭のはずの上級正社員(ハイグレード・カポ)、この工場都市における『憲兵』たちは、あまりの事態に動揺しているのか、あるいはうろうろとあたりを歩き回り、またあるいはぼうっと突っ立っている。

 

「ええい、何をしている!」

 

頭にきた編み人形(たんまつ)は、そうした怒鳴(どな)りつけ、更にそれに対して拳を振るう。

もはやそこに、来訪者を優しく迎えていた地下会場の結社社員の面影(おもかげ)など、どこにもありはしなかった。

今ここにあるのは、非情な組織の歯車、ただソレのみ。

その結果、打撃音が響き渡り部下たちが倒れ苦痛にうめく声が地下会場に満ちる…はずだった。

 

しかし、そうはならなかった。

からからからから。

乾いた音が、床を滑る。

落ちたのは仮面。

無表情かに思えた顔が、凍りついたまま転がり落ちる。

現れたのは、その下の素顔。

 

「お、お前は!?」

 

驚愕の声を歓迎代わりに、正体が明かされた少女は、いや少女“たち”は高らかに謳(うた)い上げる。

 

「「「「「“ボクたちの『革命(レビュー)』”を始めるよ!」」」」」

 

その謳(うた)と同時に、無数の仮面が投げ放たれ、天井近くまで舞い上がった。

形成逆転。

 

『憲兵』たちに変装していた工員、いや捕らわれ洗脳されて働かされていたラリスキャニア“たち”が、一斉(いっせい)に蜂起(ほうき)したのだ。

 

更にその動きは、各部署を映し出していた映像窓(モニター)にも波及(はきゅう)

四角い鞄(カバン)を背負っていた配達員や、物分かりの悪い人工知能の教育(しきべつでーたていきょう)でひたすら写真選択クイズを答えていた請負社員たちが々と持ち場を離れ、ついには食堂の曇(くも)った鏡まで叩き割られる。

その内側からは“転職”や“配置転換”されたはずの工員たちが濁流(だくりゅう)のようにあふれ出し、ゾンビ映画そこのけの勢いで工場内をまたたく間に埋め尽くしていく。

多数派(マジョリティ)と少数派(マイノリティ)が白黒盤(オセロ)のように逆転し、包囲の構図もがらりと変わっていく。

 

 

 

 

 

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