幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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237話 工場の策動⑯そして更に その2の85~86の途中まで

その筋肉質(マッチョ)な演説に合わせ、呼び出された幻影――すなわち、実在架空合わせたさまざまな“英雄たち”のイメージが、暗殺者ウェイターとその一味を取り囲む。

 

しかし、それでも反逆者たちは挫(くじ)けない。

 

「貴女の言うことは破滅へ続く一本道にしか思えません!その先に一体何があると言うのですか?」

 

「つまりは仕事が終わったら何があるか、と言うことだな

良いだろう答えてやろう。お前らには褒美(ボーナス)をくれてやる。過酷な仕事が終わったら何が待っているか知っているか――」

 

そして、水着姿の女社長は堂々とその褒美の正体を言い放った。

 

「――新しい仕事だ」

 

「うげげっ!」

 

あまりの発言に、思わずキャラ崩壊したうめき声をあげる暗殺者。

 

しかし、ラクルラールはそれを全く気にせずにしゃべり続ける。

 

「仕事の報酬は更なる仕事。貴様らは仕事大好きだからな!いや大好きであるべき義務で権利であるべきだ!なぜなら労働と金銭そしてそれが明示する序列と『地位』こそがニンゲンのひいてはその上に立つこの私の価値を基礎付けるのだから!そんなことは常識(アタリマエ)だろう?わざわざ考える必要など皆無だ!」

 

「そんなわけありませんよ!何も考えたくなくて楽になりたいなら、素直に小さな村にで引っ込んで住んで魚釣りでもすれば良いのです!暑かったり疲れていたら昼寝(シエスタ)して、夜になったら一杯やったり楽器(ギター)を弾いて歌ったり好きなだけごろごろすれば良い!」

 

「『魚釣り』?フン下(くだ)らん!そんなことでは資産形成も立身出世もままならん!経営学の資格を持つ我が素晴らしき視座を知るが良い!魚を釣るならボートを買え養殖をしろ自前の水産加工工場を立てろ小さな村など捨てて都会へ進出しオフィスビルから企業の指揮を取れ!」

 

その長々とした演説に対し、いつの間にか釣り人の服装に着替えたラリスキャニアが、質問を返す。

 

「その後は、どうするのですか…?」

 

「その後?ハッそんなものは自明の理だ!大金を蓄(たくわ)えて余裕と時間をもて余したり獲得した『地位』を自慢したいなら小さな村にで引っ込んで住んで魚釣りでもすれば良いだけではないか!暑かったり疲れていたら昼寝(シエスタ)して夜になったら一杯やったり楽器(ギター)を弾いて歌ったり好きなだけごろごろすれ…くっこちらにまで呪文(クラッキング)の影響が!」

 

女社長は、とっさに自らの頬(ほお)を叩き、工場都市との接続を断ち切り、システムを再起動させた。

 

しかし、既に応答呪文連載(コンボ)は発動している。

暗殺者ラリスキャニアは、流れるように次の手を打つ。

 

「ですよねー!起業とか市場とかぐうたらしたり歌を歌う日々には必要ありません!

ほら、お客様を見てください!

ご納得いただけたようですよ!」

 

そうして指差す先には…!

 

「きゃっほーい⭐︎」

 

「いえーい!」

 

「たーのしー!」

 

お分かりだろうか?

なんということでしょう!

そこには、みんなで仲良く魚釣りをしている富豪たち、つまりはラクルラールの顧客(しきんげん)のあられもない姿があったのだ…!

 

「ほら、みんなごろごろして魚釣りしたいだけなんです!だからもう、投資とか株とか債券とか仮想通貨とか面倒くさい手続きは要(い)りませんよ!」

 

女社長は、すかさず言い返す。

 

「そんなわけあるか!資産計画の安定性経済変動への耐性そして何よりも収益性と向上性!貴様らのだらだらやっている小作農的な魚釣りと産業化された漁業ビジネスでは天地の開きがある!資本主義すなわち投資による増収と“持つ側”への移行こそが資金と行動の余裕言い換えるなら真の自由と刺激と快楽への道を拓(ひら)くのだ!魚釣りなどはその手段に過ぎぬ!」

 

「そんな人生のどこが楽しいのですか!そして公害をもたらし不況や恐慌におびえ続ける人生のどこに『真の自由』とやらがあるのですか!そしてそもそも、そんな死(はめつ)におびえる快楽やスリルや刺激なんて…わざわざ投資なんかしなくてもいくらでも手に入ります!そう、ちょっと思い切って飛び出せばね!」

 

「飛び出すだと?まさか!」

 

そこで何かに気づき、暗殺者に詰め寄ろうとしていた水着ラクルラールは、とてつもない轟音と強風によって、思わずたたらを踏む。

 

その原因を暗殺者・ラリスキャニアが指差して曰く、

 

「そしてアレは…"ボクたち"の箒です!労災の保証金、退職金の前借り。そして何より『サービス残業』で本来支払われるはずの残業代のカタとして物納(ぶつのう)でいただきました!…確かに貴方の工場で働いているだけで手に入りましたね!お金は一銭も払っておりませんが!」

 

「き、貴様…いや、待てそれはどうなってる!」

 

女社長が怒りの叫びを途中で切り上げたのは、更に奇怪な変事を見つけ出したからだ。

 

「せっかくなので、皆さんに『おすそ分け』してます!そもそも、あんな悪趣味な箒なんて乗れませんし!」

 

 

 

 

 

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