幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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238話 工場の策動⑰そして更に その2の86~87の途中まで

見れば、話題の高級黒箒は、元のままの姿ではなかった。

というか、分解されていた。

天然素材で知られるその部品一つ一つは切り離され、細かく刻(きざ)んで再加工され、小さく白い棒状やあるいは折れ曲がったパイプに詰められて――なんと、嗜好品(しこうひん)として配られていたのだ。

気づけばそれらは、とっくのとうにラクルラールの顧客たる資産家(かねもち)たちの口元から白い煙をあげて、消費され続けていた。

 

その正体を、工場長は大声で断罪する。

 

「麻薬煙草だと!貴様!工場の設備と技術をこんなことに使うとは!資産家どもの挙動(きょどう)がおかしいのはそれのせいか!」

 

「いいえノンノン、これはあくまで『脱法』煙草。規制されない嗜好品(しこうひん)です。なにしろ、この愉快(ゆかい)なお船は、世界各国のあらゆる法律に縛られない『脱法天国(タックスヘイヴン)』ですからね。税法以外に触れそうな品や呪術だって、ここならオールオーケーというわけです!」

 

「ちくわ大明神」

 

「誰だお前は!」

 

そうこうしているうちに、場は更に混沌の度合いを増し始めていた。

まずは、数多(あまた)の服が、いっせいに投げ上げられる。

タキシードとメイド服そしてボロボロになった工員たちの作業服の廃棄。

それは、次なる舞台(ステージ)の開幕を意味していた。

そうして古着の下から新しく顔を出すのは、ラリスキャニアTシャツ(南国限定版)である。

と言っても、その内実はなんと言うこともない。

それは単に、工場都市の特産である『ラクルラール子供達笑顔Tシャツ』に青いペンキでラリスキャニアの顔を落書きしただけのものだ。

ヒトビトは、無数の笑顔のプリントを決意の表情で上書きしたそれを制服代わりにして突撃。

 

しかもそれに呼応して、隔離結界(ゲート)によって守られていたはずの金持ちたちも、破滅とマイナス、ネガティブな瘴気(ミアズマ)を求め、自ら自分たちを庇護(ひご)していたはずの壁を破ってしまう。

これこそが、吸血鬼的な『ラリスキャニア』の攻略術。

贅沢に飽(あ)いた心の隙を突くその技法の前では、隔離共同体(ゲーテッド・コミュニティ)はすり抜けられて無意味化し、階層や序列は祭時(ハレ)の混沌と序列逆転の秩序によって、たちまちのうちに無効化されてしまうのだ。

おかげで今ではヒトビトは皆、ゴム鉄砲で呪詛を撃ち合うし、今にも敗北者に厳しい現実(し)を突きつけようとしていたロシアンルーレットの拳銃からも、青いインクが放出されて全ての色彩を塗り替えていく。

ラリスキャニアとその協力者たちが、豪華客船のデスゲームを、アイドルバラエティーへと改変しているのだ。

 

これはもちろん、『浄界』を使ったわけではない。

そもそも、予算(じゅりょく)不足の『ラリスキャニア』“たち”に、そんな余裕があるわけがない。

それは単に純粋な、手作業(DIY)の結果であった。

ここでもう一度繰り返させていただこう。

このアイドル空間の地下アイドルたちは、ほとんどが実質的な素人(アマチュア)であり、個人事業主でしかないため、あらゆる下準備を基本的に自分一人でこなさなければならない。

それはつまり、多少の大道具程度ならほぼ全員が自作可能だと言うことであり――つまりは『番組』の作成やこのような状況の改変なども、お手のものだということなのだ。

 

その惨憺(さんたん)たる有様を前に、『ラリスキャニア』は語る。

 

「改めて宣言しましょう。今ここに、“ボクら”の『革命(レビュー)』を始めます、と。ラクルラール先生、“ボクら”は貴方を『反面教師』として学び終え、この学園の残骸を完膚(かんぷ)なきまでに破壊し、偏狭(へんきょう)で束縛されたアイドル支配から、見事卒業してみせますよ!」

 

「そんなこと出来るわけがない!貴様ら幼稚な生徒(ロマンカインド)の反抗など、この部屋の“私たち”にかかればすぐに鎮圧してみせる!つい先程のように!そしてたった今もな!」

 

そう叫んで飛び掛かる女社長。

 

しかし、『ラリスキャニア』“たち”は、それを取り巻き(トループ)である英雄群ごと軽(かろ)やかに交わし、皮肉げに言い返す。

 

「先程?ああ、貴女はあれが鎮圧成功だったと思っておいでなのですか。確かに一見、“このボク”は奇襲に失敗したように見えたかもしれませんね。しかし、少し見方を変えてみてください。その目立つ失敗が実は失敗ではなく、『成功』の一部だったとしたら?実際には反抗の“本体”は別の場所でやっていたとしたら…そして貴方がたの誘導とは少しズレた方策(やりかた)で行っていたら?あるいは…もしあれが、『氷山の一角』なのだとしたら?」

 

それは、明らかに“自分たち”の行動に注目を集めるための『煽(あお)り文句』であった。

 

 

 

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