幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】 作:鳳卵
泡が立つ。
沈みゆく全ての“がらくた”たちに、光る影のようにまとわりつき、ドレスのようにその身を覆(おお)う。
そして、上昇の性質を持つそれらは一種の推進力となり、まるで土俗信仰の精霊のように少女の腕を持ち上げていったのだ。
やっと、腕が、届く。
その手に掲げられ、輝くのは何か。
一見、そこには何も無いかのように見える。
だが、角度が変わりあるいはゆらめく水がその屈折をゆらがせれば、ほら見えるはずだその色無き形が。
そこには、確かにある。
簡単な呪術によってスピーカーと化した、光る物体が。
――その正体は、境界に存在した司令部から送られてきたアクリルフィギュアあるいはアクスタと呼ばれるモノ。
躍動するかのようなその輝きは、まるで闇に蠢(うごめ)く星のようであった。
※
吹き荒れる風の中で、アイドル“たち”は宣言する。
配信に乗せて、世界の隅々まで届くように。
「「言理の妖精――」」
※
そして水中では、それを星を通じてはっきりと受信。
即座に呼応(こおう)し、応答(レスポンス)に移る。
それは、配信を活性化する念信(メッセージ)
力を与えてくれた空(ソラ)の鏡(じぶん)への感謝の返答(おたより)
受け継(つ)ぎ、繋(つな)げゆく言葉。
「「「語りて曰く!」」」
新たに生誕した命を言祝(ことほ)ぐように。
沈む/没落していく一方だった少女は宣言していく。
その輪郭(かげ)は、いつの間にかこれまた大量の泡で包まれ、あまりに曖昧(あいまい)だ。
曖昧なあまり、まるでその背後に何人か重なっているかのようにさえ見える。
そのせいか、発されるその声(ことば)すらブレていた。
続けて告げる言葉は、全ての肯定。
負(マイナス)さえも受け入れる意志(かくご)
だから、その内容(なかみ)は、きっと産まれる前から決まっていた。
「「お前は、存在する!」」
曰く、『闇』あれ。
虚(うつろ)なる価値、汝(なんじ)もまた美しい。
それは、憧(あこが)れの英雄を尊重(リスペクト)しつつ、それとはまた違う独自路線を行く独立宣言。
その言霊(ことだま)に応えるかのように、地下アイドルの伸ばした手を大きな影が覆った。
これぞ、『夜の民』独特の触手(スパゲティ)呪文による声援(ことば)の義肢。
手が影によって延長(かくちょう)され、一回り大きくなる。
射程が延(の)び、更に先へ指が触れる。
手作りの星の、その向こうへ。
途端に、不可視のはずだったそれは、輝き出した。
小さいが、しかし確かにそこにある光。
その輝きは、やはり星のように。
その時、水と風の部屋その水上で。
忘れられた女神の姿を纏っていたラクルラールは、水の中に巨大な渦の如き影を見た。
まるで、自(みずか)らが完全に制御しているはずの海、その全ての所有を主張するかのような、大いなる力を秘めた、恐るべき影を。
かくして、青い蝶(アイドル)が巻き起こした風は嵐となり、それは歌(ひびき)と躍動(おどり)となって伝播(でんぱ)してゆく。
それは、空気に乗る(オン・エア)メッセージ。
些細(ささい)な類似と共感によって広がり、ときに突然変異し、それでも特定の様式(パターン)を維持しながら、それは伝わり、受け継(つ)がれていく。
それは服飾(ファッション)、それは舞踏(ダンス)それは言葉(うた)演技(ふるまい)、あるいは動画、文章、絵画、またはまだ名付けられていない、誰もあえて取り上げ記憶しようとしない些細な何か。
そして、それら全てを含(ふく)みまたその外へ出ていくような、そんな文化の波紋。
そんなもののことを、いつかどこかで、誰かはこう呼んでいた。
『呪力(ミーム)』、と。
※
※
※
地下アイドル“たち”の逆襲の影響は、ラクルラールが創った全ての部屋へと波及(はきゅう)していく。
例(たと)えば、槍のような塔が君臨する部屋。
そこでは、地形の高低差と強さを表す頭上の数値が、全ての序列を定めていた。
だが、ラリスキャニア“たち”は、無数の小塔やそれをつなぐ橋、スロープに動く歩道、エレベーター化した踊り場、重力逆転ルームなどを設置して、その“高低差”を乱す。
そこへ更に、相手を弱体化(デバフ)呪術で弱らせたりNPCの連合軍を結成することで、戦力(ゲーム)バランスを破壊。
ついには塔自体も、連合軍が工事で創った沼に飲み込まれ土台から沈んでいってしまう始末であった。
あるいは、時計だらけの部屋にしても、そこでは今や、強制的なレースはもう行われていない。
それは、外部支援者たちが投入したある兵器のせいだ。
時系列を超越する精神干渉呪術『思い出(メモリー)爆弾(ボム)』
それによって全ての歯車はバラバラにされ、部屋の全ては解体、直後に再構築。
その部品と機構は、完全にラリスキャニア陣営に再利用されることとなった。