幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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244話 連鎖する反撃① その2の90~91の途中まで

そして、その再利用先の一つこそ何を隠そう、例の工場の部屋、ブラック企業ラクルラール工場都市である。

そこでも、もはや暴動と反乱(ストライキ)は終わり、新たなる展開を迎えていた。

労組による企業資産の差押えと、組織再編である。

外部のNPOや専門家との相談、この都市の新しい買い手候補たちとの交渉など、ありゆる手続きはスムーズに進んでいた。

やがて、一人の労働者、もはや見なし正社員でも名前だけの『独立事業主(しゃちょう)』でも無くなった彼女が、その手に一つの金属を掲(かか)げ、その輝きを勝ち誇る。

これぞ、新体制での記念すべき最初の製品。

そしてこれは同時に、上層部を全て追放しても、他の従業員だけで十分に仕事をこなしていけると言う、正(まさ)に輝かしい独立宣言でもあったのだ。

 

他の部屋でも事情は同じ。

次に、広告が支配していた“光の部屋”

極彩色広告は、手刷(てず)りのチラシや光害規制法、SNSなどネット広告の優位性の宣伝、そして“暗黒暮(あんこくぐ)らし”風潮(ブーム)の流布によって、急速にその力と価値を奪われつつあった。

 

続けて“松明の部屋”

光と闇の支配者たる“松明の女神像”の君臨も瞬(またた)く間に覆(くつがえ)される。

実は背景の黒布によって『明るさ』を演出されていたに過ぎなかった松明は、闇を優しく励(はげ)ます万色のサイリウムによってその『唯一性』を失い、その持ち手に怒声を上げさせた。

しかも、そのラクルラール女神像でさえも無事では済まない。

啓蒙(エンライトメント)を騙(かた)ることで全てを従属させようとした巨大像も、今や風前(ふうぜん)の灯(ともしび)なのだ。

なんとなれば。

彼女が左手に持っていた板に不自然な“穴”が空(あ)き、そこから恐るべき外敵が襲いかかっていたからだ。

金色のリボンが縁取(ふちど)るその兎穴(セキュリティーホール)からは、ニヤニヤ笑う"ウィングライオンねこさん"が、頭だけ出現。

そして出現したライオンねこさんは、たてがみと翼を小刻みに動かしながら、ばくばくと女神像を、その構成要素である強大な野望(よくぼう)そのものを食べていく。

 

当然、女神像も抵抗はするが…その獣の出現経路、おそらく写本か何かの簡易的な魔導書らしき“板”それ自体が、彼女の力の根源(パワーソース)であるようで、どうにも上手くいかない。

“松明の女神像”は、これまで法を建前にしてあらゆる利益を我田引水に吸い上げ、好き勝手に裁きを下してきた。

だが、いまやそれは改竄(クラッキング)され、より極端な形として彼女に跳ね返ってきている。

それは、法の悪用を突き詰めれば必然的に導き出されてくるカタチ。

端的に言って『弱肉強食』である。

権威や独占的知識によって君臨し、民衆を食い物にするのは古典的な『悪い呪術師』の姿ではあるが。その行き着く先こそまさにこれ。

単純(シンプル)な力による闘争。

『道徳』や法(ことば)を無視した、パワーゲームと生存競争(サバイバル)。

どれだけ頭が良く、体制(システム)の構築に長(た)けていても、一旦(いったん)力による勝負に持ち込まれてしまえば、そんなものはたちまち無意味と化(か)す。

合意と『道徳』、相互利益の配慮(はいりょ)に基づいた真なる法治や取引ならばいざ知らず、単なる力と我欲(エゴ)の対決であるなら、それは単純暴力という別の基準(ベクトル)で競い合うまでの話。

そうなれば、必然の帰結として生まれつき力が強い野獣こそが、最強として全ての上に君臨するのだ。

 

おまけに、"ウィングライオンねこさん"には首が無い。

実を言うと女神像は、切り札として独自制定した法による『斬首刑(ティーアードゥ)』を隠し持っていたのだが…言うまでもなく、元から無いものはどんな呪術によっても、絶対に破壊することは出来ない。

少なくともこの場において、奥の手は完全な役立たず(がらくた)だった。

そうこうしているうちに、ついに上記のような形成不利(じじょう)を悟ったラクルラールの絶叫が、部屋中に響き渡る。

これが、悪法を敷(し)き、自分だけが勝利しようとした魔女の(そのひとつの分身の)末路であった。

 

そうして、ついにこらえきれずに像が傾(かたむ)くや否や、どこからともなく猿の群れが襲来。

そんな彼女たちは、かつて自由を謳(うた)っていた先生君主を足蹴(あしげ)にして、なぜか背負っていたタイプライターを破棄。

捨て去った文字の代わりに、これからの自分たちの未来の繁栄と過去の文明の没落を、大声で讃(たた)えあうのであった。

 

 

とは言え、その程度で逆転が完遂されるほど、ラクルラールは甘くない。

 

「「「何が忘れてはいないか?」」」

 

「「「まさかこの程度で私を上回ったつもりではないだろうな?」」」

 

火で満たされた部屋で、その内部全体から響き渡る立体(サラウンド)が、厳(おごそ)かに語る。

そう、その通りだ。

その部屋にこそ、世界の破滅を再演したもの、恐るべき『火竜』が存在するのだし、また、何より恐らく全ての部屋で最も凶悪な存在も、“雷雲の部屋”にはまだ残されているのだから。

 

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