幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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245話 連鎖する反撃② その2の91~92の途中まで

しかし、その発言には一つの疑問が残る。

その部屋の配信窓でコメントたちが語り合うように、この“火の部屋”こそ、真っ先に『火竜』によって焼き尽くされたはずだったからだ。

ならば、ここでわざとらしく『前振り』が出来ていること自体がそもそもおかしい。

そのはずだ。

 

だが、そんな疑問の声に構わず、部屋のサラウンド音声はアナウンスを続ける。

何故(なぜ)なら、邪魔なコメントは『雑音』と定義して無視し、己の調子(ペース)を貫くことこそがすなわち強者の特権であり、同時にその条件でもあるからだ。

 

「「「『氷結呪』の再演、なるほど考えたものだよ。本当に出来ればまさに『偉業』だろう。本当に出来ればな」」」

 

断言と断定を続けるラクルラールは、今にも小鬼化しそうな有様である。

この世で最も忌(い)み嫌われる我執の塊(かたまり)『小鬼』

自己を無くした我欲者(エゴイスト)は、残らずソレに成り果てる。

だが、それにも抜け道的な防衛法は存在する。

信者、つまりは『支持者』である。

一人でもその妄想を共有出来る者がいれば、妄想は『対幻想』となり、集団の普遍的な信念・信憑(しんぴょう)となるのであった。

流石に『天主』や『神』などの大(だい)それた称号を自称するならまだしも、陰日向に自(みずか)らの強大さやその成功を喧伝(けんでん)するぐらいなら問題は無い。

小鬼化の予防は、支持者さえ確保出来れば防ぐことなど容易(たやす)いのだ。

ゆえに、炎のラクルラール“たち”は何処(どこ)にも気兼ねなく断言を続ける。

 

もちろん、それだけで済ませる“彼女”ではない。

ラクルラールは、炎の部屋からおそらく既に黒焦(くろこ)げとなり、虫の息であろう敵手を探し出そうとする。

自らの勝利を勝ち誇ることで、己が地位(しょうにん)を確立し、全世界への配信を以(も)ってそれを不朽(ふきゅう)のものとする、それがその探索の目的であった。

 

「「「そこか」」」

 

果たして、すぐに地下アイドルらしき影は見つかった。

この炎色に眩(まばゆ)い部屋において、唯一黒ずんだ染(し)みのような黒点。

 

だが、探索者“たち”は、すぐに驚愕(きょうがく)する羽目になる。

近寄って見るとその黒点は、本当にただの黒い丸に過ぎなかったからだ。

というかそれは『穴』であった。

『守護の九姉』ラクルラール謹製(きんせい)の『化身』である擬似『浄界』の空間そのものに、見事な穴が空いている。

まるで、切り取ったように。

いや、まさにそれこそそれそのもの、形容した通りの存在であった。

『穴』である。

この空間は、糸使いの魔女がその糸で丹念に織り上げた言わば“糸製品”である。

そしてそれが"糸"やそれを織り上げた布であるならば、切って穴を開けることも出来るはずであり…それはまさに、今ここに実証されていた。

 

「「「ば、馬鹿な!この"炎の部屋"に穴を空けるだと!?あの程度のアイドルにはそんな力量は無かったはず!一体何があった!それにアレはどうした!『火竜』までここから抜け出てしまったというのか!」」」

 

多重に音声を響かせ、狼狽(うろた)えるラクルラール。

その『本体』はどれとも分からないが、声音からはその動揺が本物であることが確かに伝わってくる。

そうしているうちに、糸繰(いとく)りの魔女"たち"は冷静さを取り戻す。

 

「「「だが問題ない。このラクルラールの切り札はアレだけではないのだからな」」」

 

そう、確かに、あの『火竜』はまさに真に迫った傑作であり、神話の域に達した再演の兵器であった。

 

だが、ラクルラールであればあれだけの『芸術品』を幾らでも創り出せる。

むろん、呪力や時間と言った資源(リソース)こそ必要とするうえに、量産するほど劣化してしまうという弱点は避けられない。

けれど、それでも魔女の絶技は、本来『唯一無二』でしかない神秘を理論上無限に生産することを可能とするのである。

これこそが他の呪術大系にはない『杖』ならではの強みであった。

ゆえに、実体不明のラクルラールは、高らかに哄笑(たかわらい)を上げたのだが…

 

 

 

 

 

上下両方から、巨大な黒い岩盤に押し潰されている。

その光景には、それほどの威圧感があった。

 

ここは、“雷雲の部屋”

天地両面に暗雲が広がる、結界だけで仕切られた中空にある部屋だ。

だが、本来なら“雷の部屋”と呼ぶべきなのかもしれない。

なんとなれば、鮮烈な黄緑の稲光によって構成された少女が、この部屋には存在するのだから。

明らかに、彼女こそがここの中心、あるいはこの“究極の九部屋”全ての中核であった。

一面の稲穂を思わせる見事な長髪、シンプルでありながら可愛らしいエプロンドレス、例(たと)え芸術の神その人が形作ったとしてもこれ以上細くは出来ないであろう、ほっそりとして繊細な身体の各部。

健康的でありながら、どこか脆(もろ)さや儚(はかな)さを併(あわ)せ持つような、成長期の少女特有の体型。

まるでガラス細工の彫刻のような、あるいは売り出されたばかりの新作の人形(フィギュア)のような、躍動的な生命力を感じさせる美。

典型的でありながら、どこかそれから逸脱(いつだつ)しそうな、あるいは今にも溢(あふ)れ出しそうなダムの湖水、やがて来るべき爆発を待ち望む液体爆薬、跳躍(ジャンプ)に備(そな)えて身を屈(かが)めてた蛙(カエル)。

 

それは、そういう存在であった。

 

 

 

 

 

 

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