幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】 作:鳳卵
「よりによって主役(メイン)が『リーナ・ゾラ・クロウサー』カードとはな。そんな恋愛堆肥雑魚札で我がデッキの罠(トラップ)である“恋愛戦(ラブ・アフェアー・ウォーズ)”に挑むなど敗北決定だ。そんなモノでこちらの『夫婦月下氷人』に恋愛経験値で勝てるとでも思っているのか?気安いからと言って同窓生(むかしなじみ)とばかり絡(から)んでいたツケだ。その偉人(カード)では、我が『結婚』テーマデッキにはまるで対応出来ない。行き着く先は戦闘描写破棄(ぎょうさつ)の破滅だけ。ソレでは抵抗のしようが無いのだよ」
しかし、そんな指摘を受けても『ラリスキャニア』“たち”は不敵な笑(え)みを崩さなかった。
「ご指摘ごもっとも。しかし、」
「そう簡単に負けはしませんよ。ボク“ら”もそしてこの札も!」
それを聞いた『ラクルラール』人形は、一斉に鼻を鳴らす。
「確かにこの『三対一(トリニティ)』ルールにおいて、寡兵(ソロ)側は通常の三倍の生命値(ライフ)と手数(ターン)を持つ。だが本当にその程度のことが我々の負担(ハンデ)になるとでも思ったのか?
だとしたらとんだ思い上がりだ」
「貴様程度の実力ではそもそも我々に勝負を挑むこと自体が間違い!リスクを過小に見積もり過ぎたな!」
その言葉通り、机の中央部(メインポジション)に置かれた札の中で展開されている情景は惨憺(さんたん)たる有り様(さま)だった。
その“部屋”における『ラリスキャニア』“たち”は、台本から無数の人物を出して戦っている。
その陣容は実に多様多彩。
別の世界槍異なる時空で戦う最も新しい天主とその騎士(ナイト)、それぞれ秘密と敵対関係そして『大嫌い』の気持ちを共有する女子校の探索部メンバー、妊娠させた子どもの前世を名乗る幽霊少女に付きまとわれる双剣士、狂的『杖』使い(マッドサイエンティスト)の機械皇女、そして神も同人界の掟も全く気にしない性的同人作家の魔王聖女。
それは、この血海(レッドオーシャン)たる娯楽界隈(エンターテイメント・ワールド)おいても、十分に生き抜き、濃厚な独自性と魅力によって新たな道(かのうせい)を切り開いて多くの喜びと幸福をもたらしていける、と観る者に確信を与えるような面々であった。
そしてそれらを率いるその“札”の中の地下アイドルは、最後のトドメとして、更にまた新たな人物を台本から出そうとした。
だが、それは失敗してしまう。
出そうとした二人の少女は、即座に攻撃を受け敗退したのだ。
彼女たちは、予告された『逃避行』イベントを果たせぬまま首を傾(かし)げ、何かに疑問を抱いたような様子のまま空気に溶け込んでいく。
新製品の奇妙な味の飲み物(ジュース)があっという間に店頭から無くなるように、それは異様でありながらも静かでどこか穏やかな消失だった。
他の『登場人物』についてもそれは同じ。
半数は登場時のまま灰色の時の中に封じ込められ、残りの半数も登場コストの見積もりを誤ったため、対価を払いきれずに消えていく。
美しく魅力的で可能性と力に満ちていたはずの人物像と世界観は、十分な登場管理(マネージメント)の不足のため、全にして無なる可能性の根源へとその形相(エイドス)を還元させていった。
全ては、忘れ去られていく。
それらの『登場人物』は、誰にも知られざるままその消滅を公(おおやけ)に傷(いた)まれることもなく、出産(プロデュース)の破綻をきちんと告知する者すらいないまま、未(いま)だ産まれざるまま泡のように元の場所へ消え去っていくしかない。
もう、それしか道が残されていなかったのだ。
彼女たちは、新たなる偶像(アイドル)としてその『地位』(ポジション)を確立させられなかった。
継続することが出来なかったものは、変動やより強い力そして時の流れに打ち勝つことは決して出来ない。
その有様(ありさま)を見て、対峙(たいじ)するラクルラールは“札”枠を挟みその内外で同時に嘲笑(あざわら)った。
それもそのはず。
彼女こそは、不変と『不死』の体現者。
万古不易の半神にして永遠なる女神の後継。
悠久の時の流れでも磨耗(まもう)することの無かった呪力(ミーム)の権化(ごんげ)
即(すなわ)ち『キュトスの姉妹』の一柱なのだから。
糸使いの魔女にとって世界のほぼ全ては“すぐに消え去る儚(はかな)いもの”でしかない。
時の流れは、大地に根差すものもそうでないものも、なにもかもを奪い去っていく。
神々や竜や猫などの例外を除けば、永劫不朽なのはただ一つ。
大地(キュトス)の系譜、それだけなのだ。
ましてや、単なるぽっと出の地下アイドル風情(ふぜい)が、どれだけ持ち堪(こた)えられると言うのだろうか?
女教師に言わせれば、そんなものはその基準で最下位の労働(レイバー)でしかない。
必要な栄養を計算して用意する料理(ビタミンざい)や、雑文仕事(ゆきかき)程度の価値しか有りはしないものなのだ。