幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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254話 連鎖する反撃⑪ その2の98途中まで

そして、“もう一人”がすかさずそれを補足する。

 

「それにこの“部屋”は、一見たくさんあるように見えて、実は単に大きな部屋を区切っただけのものに違いありません。しかもそれは、連鎖的に連動し機能している…それはまるで、一体の巨大な生き物のように。この“九部屋”は、複数の“意味”が重ねられた高度な呪術建築だったのでしょう。おそらくは、その“九”にしても多重の意味を持っている。差し詰(づ)めそれは、究極(きゅう)に極限の連動(きゅう)を重ねた最終集合体(きゅう)たる“999”(スリーナイン)究極の九にして球体であり、主人の休養のための極地(きゅう)そして、複合した巨大かつ複雑な呪術装置にして、何らかの高難易度呪術を再演する技巧(アート)そう、全てはつながっていたのです!良く、『杖』の呪術を“何をやっても所詮はお湯を沸かして発電するだけ”などと揶揄(やゆ)する者が居ますか、これはまさにその極致。"炎の部屋"の熱量が"水の部屋"でお湯を沸かし、風の部屋の風車(タービン)を回して発電。そして生じた呪力と電力が、全ての部屋全体に供給されると言う、"省エネ構造"これこそが、これほど大規模な疑似『浄界』を成り立たせている肝(カギ)!ここは取り込んだ獲物(てき)をも活用する、おそらく呪術世界(ゼオーティア)で最も“永久機関”に近い、巨大な呪術装置(えんじん)だったのでしょう!」

 

卓の反対側から、嘲笑う声がそれを迎え撃つ。

 

「そうだとして貴様らに何が出来る?この圧倒的な実力差、もはやどれだけ助力を乞(こ)おうがどうにも出来まい?」

 

だが、それでも『ラリスキャニア』“たち”は屈さない。

彼女“たち”は、真っ直ぐに前を向き、腹の底から声を放って最強の敵に向かい合う。

“二人”の意志は一つだ。

 

「諦めない…!」

「「だって、ついに“ボクら”は、貴女と同じ領域に立てたのだから!」」

 

すかさず返るのは、やはり極北の声。

 

「自惚れるなよ劣等生。たかが補助箒(ほじょりんオプション)で走れたくらいでこの『ラクルラール』と対等に成れたつもりになるなど失笑が片腹通り越して腹筋大崩壊だ」

「貴様を瞬殺しなかったのは単に腹部の修復に手間取っただけであって叩き潰すなど造作もないこと。赤子の手いやマラードをイメージした避妊薬(あかごごろし)を定期投与(まいにちのむ)より容易い作業に過ぎん」

「たかが脳の共感部位(ミラーニューロン)と鏡の錯視を応用した程度でこの『ラクルラール』に勝てると思うなど笑止千万いやさ億兆万でヘソで銭湯が運営出来るわ」

 

三方からの、極寒の地もかくやという冷たいまなざし、異界由来らしき奇怪なる非難が、地下アイドル“たち”を襲う。

 

そして、取り囲むその立ち姿は、いかにも強者そのものだ。

女教師は完全に自由自在であり、全知全能に近い存在に見える。

 

しかし、ラクルラールは本当に『自由』なのか、と言えば地下アイドルはそれを否定するだろう。

とてもではないが、そうは思えない。

なぜなら、彼女からは独特の"匂(にお)い"がするからだ。

すごく身近な…それこそ自分からも立ち昇っていそうな、そんな匂いが。

それは、とてつもなく強いこだわりと執着の匂い、勝利への執念と自己を承認させる欲求に縛られた者、独特の匂い。

そしてもし、その"匂いの直感"が正解であるならば…ラクルラールは、決して自由ではない。

 

本当の『自由』とは『シナモリアキラ』やその相棒(バディ)たちのようなもの。

あるいは、今のメイド王子や執事忍者メイドのような在(あ)り方。

すなわち、己自身の過去(かつて)の信念(こだわり)や心傷(いたみ)からすら解放された、融通無限(フリーダム)たり自在の境地。

 

逆に、どれだけ勝手気まま傲慢放埒(ごうまんほうらつ)に振る舞えるように見えたとしても、結局は基底の行動方針(よくぼう)に縛られ己(おの)が在り方を変えられないなら…結局そんなものは、ただの“不自由”でしかないのだ。

 

閑話休題(それはさておき)

 

ともかく、ラクルラールが本当に強い欲望(おもい)と執着に縛られているのなら、どうとでもやりようはある。

確かに、今の『ラリスキャニア』には、相手を操作するような強大な力や才能はまるで無い。

だがそれでも、相手の方が勝手に都合良く動いてくれるなら話は別なのである。

そして何よりこの逆境そのもの、“札部屋”自体こそが、窮地を脱する鍵となるはずだ。

なぜなら全ての錠は、ことごとくその鍵と対になっているものなのだから。

 

まず、ここは他の“部屋”の映像を取得し、それらの状況をひとまとまりの断片(カード)という単位に零落させて操る、監視塔にして擬似的な司令室だと言える。

しかしおそらく、だからと言ってここが全部屋の“頭脳”と言うわけではないはずだ。

あのラクルラールが、そこまで単純で脆弱性に満ちた構造(めいきゅう)を、作るわけがない。

 

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