幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】 作:鳳卵
そもそも、そんな急所にボクらが迫ることが出来ていれば、女教師はもっと動揺を見せ、今より遥かに過激な防衛行動に出ているはずである。
そう、ここは単なる一つの情報集積所。
形を変えた、戦場探査使い魔(ドローン)に過ぎない。
ならば、ここは決して終着点、最終処理場(ゴール)ではないことであろう。
こちらでまとめた情報は、即時(リアルタイム)に他の“部屋”に共有され、また同時に、“より上位”に位置付けられる別の“部屋”に送信され、その上位性を権威付けているはずだ。
だが、それは自陣(こちら)も同じこと。
無限に分身を重ね、あらゆる“部屋”でラクルラールとの対立構図を演出している『ラリスキャニア』は、女教師と同等の呪術網(ネットワーク)として、現在進行形でがっぷり四つに組み合っている。
これらの網目は、もはや無限の合わせ鏡。
絡み合い相争うは、双(ふた)つの相互参照。
並び立つ、上位(メタ)類感操作・階層(レイヤー)呪術構造の対決。
それは、地下アイドル仲間を始めとした無数の第五階層の協力によって成立した、対・ラクルラール決戦手段の奏功であった。
魔導書『死人の森の断章』とアイドル信仰(きょうき)という『小鬼』堕ちギリギリの『邪視』そして何より、想念(イメージ)で万物が対等となる夢世界自体の性質。
それらが地下アイドル“たち”を擬似的に、紀人と対戦が可能なまでにその霊格を格上げ(ランクアップ)させているのである。
これは、そういった構図(たいけつ)なのだ。
ならば、やるべきことはただ一つ。
いやさ、“一対(ふたつ)で一演舞(ひとつ)”
「『アイドル』は無限に『かわいい』ですからね!ボク“ら”もどこまでだってかわいくなります!」
「『ラリスキャニア』ちゃん無限かわいい!印刷物(ポスター)やキャラクター化とか二次元化しても二次創作、三次四次五次いくらになってもかわいい!立体化してもコスプレや顔真似(かおまね)や触手真似ももちろんかわいい!」
「「無限に複製され参照されても、重奏(層)的に全部かわいい!それが『アイドル』!それが『ラリスキャニア』ちゃんです!!」」
『ラリスキャニア』“たち”は、傍若無人なまでに我が道を行き、自らの主張(こえ)を目の前に叩きつける。
「なんのつもりだその奇行は?」
挑発的な問いかけに対し、更なる挑発的な"奇行"が返る。
「言ったはずです!“三”!“ワンセットの三(トリニティ)”こそが、答えだったのだと!」
「ボク“たち”の敗北の理由!不足していたもの!この世の全てが、外部が“ボクたち”の支えにして舞台、不可欠なる“第三の半身”なのだ、と!」
“子豚ちゃん”と呼ばれる『ラリスキャニア』の“信仰者(ファン)”そして、競い合う隣人にして友人にして宿敵(ライバル)たる全ての地下アイドルが、いいや――
「先生、貴女だって!」
「アイドルに『敵』なんていない!
殺し合うべき相手も、奪い合うモノも本当は何も無いのです!」
なぜならば、
「「ある意味、この世の全てが、“ボク”であり、その信奉者(ファン)なのだから…!」」
それゆえの“突然の奇行”
唐突な『かわいいアピール』の実行であった!
一見それは、まるで発狂したかのような、突然の奇行で暴挙に見える。
しかしそれは、決して『小鬼』のような独善ではない。
“彼女たち”は、絶対に孤立してはいなかった。
なぜなら、ここに応えてくれる“応答(こえ)”がある!
「きゃー!ラリスキャニアちゃん“たち”かわいい!」
「ラリスキャニアちゃん様触手巻き巻きかわいい!」
「ブヒー!ブー!ブゥゥウ!ブァアーー!」
そう、なぜなら彼女“たち”は――
――れっきとした、アイドルなのだから!
集(つど)った者たちの中にはもはや人語を話していない者もいるが、そんなことは関係ない。
関係なら、とっくのとうに確立されている。
アイドル界隈だけが共有する論理が、ここにはあるのだ。
信者(ファン)と偶像(アイドル)が互いに支え合い、魅力と声援(エール)を送(贈)り合う関係性、それはもはや擬似的な『浄界』の域に到達していた。
つまりそれを戦略や戦術、更に作戦行動(アクション)の段階、あるいはこの"札部屋"に合わせた言語(ことば)に換言すれば、それは曰く――
「『ボク』“たち” は仲間(カード)の力を信じる!
大切な友達(ファン)なのだから!」
「だから使おう!今こそこの行動(アクション)を!『奴隷』の位階だからこそ許された、逆転の戦術を!」
こうなる。
「馬鹿な!『連携札陣(コンボ・デッキ)』だと!?」
札部屋における地下アイドル“たち”の振る舞いに対し、驚きの声が返った。
「貴様らはたった今カードを始めたばかりの素人(シロウト)のはず!」
「「「ここは助言不可能な孤立空間に設定されているのだぞ!そんな戦術が使えるわけがない!まさか!?」」」
「そう!」
「そのまさかです!」
その言葉と共に"二人"は、見せつけるように髪を同時にかき上げ、無穴(ノンホール)耳飾り(ピアス)を露出させた。