幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】 作:鳳卵
それは、ピアスに改造(アレンジ)された二枚貝(ボンゴレ)の紋章があるアイドルリング、歴史の中で忘れられていた九つの神話級装飾品(アクセ)――その模造品。
「装身具(アクセ)を用いた遠隔共感だと!そんなもの正確な通信が不可能な忘れられた古代の遺物、子供の玩具(おもちゃ)ではないか!」
「そんなもので!このラクルラールの“部屋”に対抗するほどの連携が出来るわけがない!」
しかし、女教師人形“たち”の叫(さけ)びとは裏腹に、ピアスの輝きに連動するモノがあった。
それは、札(カード)
それも、この札部屋に並べられた、その全て。
絨毯(カーペット)とみまごうほどに敷き詰められた無数の札は、残らず銀河のように瞬(またた)き、それらを支配していたはずの闇(ラクルラール)の敗北を告げ知らせていた。
そして、その驚愕から人形“たち”が抜け出せない間隙(すき)に、地下アイドル“たち”は、比較補助律(ゲームルール)を活用。
増加された手番(ターン)を用いて一つ、また一つと新たな伏せ札や手札を使用していく。
耳飾りと言う、札陣(デッキ)外の“伏せ札”の開示に視聴者(ギャラリー)が沸(わ)き、色とりどりのコメントが激流のように流れる中、地下アイドル“たち”の反撃は始まった。
「手札と設置されているアイドルカードを『支援者(サポーター)』にして、手札から『お友達召還』を起動!山札(デッキ)から一枚カードを引きます!現れよ!新たなるアイドル!」
「引いたカードは…『痕跡神話』!特殊召還効果でカード効果を即時発動!山札をシャッフルして最初に出て来た『特技カード』を使用可能になります!今度引いたカードは…『英雄強奪(ローバー)』!ダイス目は九!大成功です!」
華々しい強運を見せた『ラリスキャニア』
それを茶化したいのか、女教師人形たちは、何故(なぜ)か奇妙な悪口を放つ。
「ふん、『探索者』とか言っていてもあの魔女も所詮は、盗賊の仲間だからな。同じ『四英雄』のゼドと大差無い。いや、もっと悪いか。探索していないときは部屋に引きこもり食っちゃ寝の繰り返し。スナック菓子だけで日々を過ごし、ゲーム三昧。まるで不完全な自動操縦遊戯(オートリプレイ・ゲーム)機器、“ゲームに遊ばされているゲーム”だ。しかもそれだけ怠(なま)けていてもプリンと男を漁(あさ)る労力だけは途切らせないのはもはや感嘆に値するよ」
悪口はやたらと長引いたうえに、よく分からない形容にまで至っていた。
しかし、そんな冷笑をよそに地下アイドル“たち”は、次々とカードを繰り、戦術を完成させていく。
「設置呪術カード『妖精の代母』を起動!その効果によって山札(デッキ)から『お色直し』『魔女の馬車と招待状』『時限制の美女(タイミリミッター・ビューティー)』を連鎖起動!山札を再び混合(シャッフル)!」
「待て。それはその連携(コンボ)は…!」
ラクルラールが驚愕するなか、札の中つまり“階下(いちレイヤーした)”の状況にも変動があった。
それは先程女教師陣営が圧勝してみせた階、台本と抽選機、召喚対決の部屋でのこと。
その事象は、一見ごく些細(ささい)な騒動(トラブル)見えた。
だが、その小火(ボヤ)は、すぐさま重大な事故(アクシデント)に発展してしまう。
事象としては一言で済(す)む。
くしゃみ。
そのとき丁度、勝利を確信したガチャラクルラールは、盛大に高笑いをしていた。
身体をのけぞらせ、大声で喜びを表現する。
しかし、それが良くなかった。
ガチャラクルラールは、その名の通り背中に巨大な抽選器(ガチャ)を背負っている。
そんな状態で大きくのけぞり更にくしゃみをしたものだから、結果として身体のバランスは大きく崩れ、抽選器は勢いよく背後の床に叩きつけられてしまい…
がちゃん!
ガチャから出てくるあらゆるアイテムが一気に溢(あふ)れ出し、序列価値(レアリティ)関係なく出現していく!
もちろん、偶然ではない。
札部屋における呪術戦の影響である。
そして当然その対手、倒れていた台本ラリスキャニアは、その機会を逃さない。
すかさず、ありったけの台本の束でトドメを刺す!
残念ながら先程の敗北の影響で、台本は無残な姿となっていたが…だからと言って、その使い手の闘志までもが尽きたわけではないのだ!
たとえ脚本家が倒れても、役者(アイドル)は諦めるとは限らない!
そして諦めない者がいる限り、舞台は続き…終着点(かんせい)目掛けて動き/生き続けるのだ!
彼女はとりあえず、台本の残った部分にある美点をありったけかき集め、足りない部分は即興で補う。
即興(アドリブ)、即興(アドリブ)、また即興(アドリブ)
そして、禁じ手たる“観客の解釈に委(ゆだ)ねる”未完の終幕。
芸術史は長く、その懐(ふところ)は奥深い。
作者の休止、行方不明(サレンダー)、役者やスタッフのごたごた、時の政権による干渉(けんえつ)、そして災害や疫病、戦争。
何らかの事情で中断を余儀なくされ、しかしその未完のまま評価され、歴史に名を残している傑作などいくらであるのである。