幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】 作:鳳卵
だから、当然…
その意思表明(アウティング)に対する反応は、より厳しいものとなった。
ある者は、巨大な縦ロールを振り回して怒り、またある者は、眼鏡を冷たく光らせて睨(にら)みつける。
何やら大仰(おおぎょう)な構えを取ったり、雷光を迸(ほとばし)らせたり、
ある者は、巨大な縦ロールを振り回して怒り、またある者は、眼鏡を冷たく光らせて睨(にら)みつける。
何やら大仰(おおぎょう)な構えを取ったり、雷光を迸(ほとばし)らせたり、竪琴に音符の矢をつがえ、弓のように引き絞(しぼ)ろうとする者までいる。
中でも凄(すさ)まじいのが、フェイスペイントのツインテール少女――部(ユニット)で、主に悪役(ヒール)を演じている四腕(メナル)人のユウコだ。
彼女は、上の二本の腕を赤々と燃やし、巨大な炎の翼を生み出してその激怒を表現している。
しかも、それに加えて下の二本の手にまで、それぞれ違う武器を持ち出す完全武装っぷり。
そんな、武装して燃え上がる力士少女は、猛烈な勢いで食ってかかった。
「誰が、アンタなんかに…!ナニワゴールド、アンタはアイドルを金儲(かねもう)けの道具だとしか思ってないじゃない!」
それにもまた、即答が返る。
「せやな、その通りや」
「なっ!」
あまりの発言に、場が言葉を失うのを見た商人アイドルは、その隙(すき)に配信窓から幻像(アストラル・ヴィジョン)の巨大な右手を出した。
その形は掌(てのひら)、遮(さえぎ)る意志(ジェスチャー)
ナニワゴールドは、それによって場の一堂の動きを押し留(とど)め、悠々(ゆうゆう)と
「でも、あんさんの意見は聞いとらんで。今回の判断を、選択を選べるのはただ一人や。そうやろ、なあ?」
と、言ってのけた。
その言葉に、皆(みんな)の視線が自然と一つに集まる。
その焦点は、今もうずくまる一人の少女にある。
そう、それは今回の試合(ゲーム)で未(いま)だ参加権(ライフ)を維持し続けている、『ちゃんこ9』最後の一人。
この騒(さわ)ぎの中でさえ、なおも沈黙を貫いていた部員(メンバー)
モーニング・グローリィこと、モニ子であった。
そんな彼女に対し、紅白縞(こうはくじま)の女が配信窓越しに迫(せま)り寄る。
紅白アイドルは、その周囲に文章や絵、無数の企画情報を映し出し、それらを装飾念写(プリティショット)の飾り枠のように纏(まと)いながら、自らの有用性(けいざいせい)を熱心に表現(アピール)して来たのだ。
しかし…
パァン!
「アンタなんか大嫌い!『グレンデルヒ』も、『シナモリアキラ』も…それに、何より…私は一番私が嫌い!」
それに対し、返されたのは明らかな拒絶。
破裂音に続けて、言葉でも否定が放たれる。
その直後、ナニワゴールドのニヤついていた顔には、真っ赤な手形(もみじ)が、くっきりとつけられていたのだった…
「部長(リーダー)?」
「ああ、そうだな」
衝撃がもたらした静寂を打ち破ったのは、『ちゃんこ9』の中枢と言える二人のメンバーだった。
白衣のビーグル犬頭と長髪(ドレッドヘア)の岩肌種(トロル)
その名も、球雷(プラズマ)タメ右衛門と大砲(グレートキャノン)
古参の先輩たちが、目配(めくば)せを交(か)わし動き出す。
「モニ子、お前…呪術行使支援アプリ【幻肢の力】・【幽体リモートデスクトップ】を使って、いないな?」
「え?は、はい!」
その返答に、周囲がざわめく。
「シナモリアキラなのに!?」
「あの“張り手”どう見てもアストラル系の打撃でしたよね!?ここは夢の中なんでくっきり跡がつきましたけど…」
「何というアストラルSUMO力だ…」
ざわめきをよそに、少女力士は答えを続けた。
「…ええ、『空の民』です。私はゾラの傍流(ぼうりゅう)の傍流の出、ここには家出して来ました…」
言葉と共に、肉襦袢のパーツの一部を切り離すと、それは地響きを立てて落下し、その重みを世界に主張する。
肉襦袢は、軽すぎて浮かんでしまうという空の民の弱点を補うために着用していた、重量(ウェイト)外付けスーツだったのだ。
「どうして、そんなことを?」
「…尊敬する人の、後を追いたかったんです!あの元九槍八位のネドラドさんの…だって、『地上(うえ)』じゃ誰もあの人を助けようとしなかった!その苦しみに思いを馳せようとしなかった!」
「…復讐なの?」
炎の勢いを弱くしながら語りかけてくる後輩、四腕(メナル)力士の夕朱雀(ユウコ)の問いに、モニ子は首を振る。
「いいえ、その思いが全く無いとは言いませんが…そんなことが私に出来るともそうしたいとも思いません。私はただ、あの人がどう亡くなったのか最期に何を思ったのか、それだけでも知りたいと、そう思ってここに来ただけなんです。けれど、それでも何も分かりませんでした…」