幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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260話 連鎖する反撃⑱ その2の102の途中まで

「そういうことか。しかし、なぜわざわざこの『ちゃんこ9』に入ってSUMOアイドルに?お主がアイドルに向いているとしても、格闘を全面に押し出している我々は『空の民』には一番向いていないユニットだと思うが…」

 

当然の疑問だった。

 

『空の民』は、『地上』の序列一位ではあるが…それはすなわち、“アストラル適性一位”あるいは“『杖(ぶつり)』適性昇順(ワースト)一位”の意味である。

“序列最下位”とされる第九位(てつがんのたみ)とは真逆で、物理的には最弱なのだ。

中には六王パーンやそれこそ元『空の民』のネドラドといった例外こそ存在するが、例外はたまにしか居ないからこその例外。

特に、体重と筋力が重要視される“相撲系”格闘技と『空の民』の相性は、最悪と言っても良いほどのものなのである。

それに対し、返されたのは明快な答えだった。

 

「ネドラド様は正式には行方不明です。だから、もし生きておられるなら私がアイドルになって有名になることで、見つけられるんじゃないかって…でも、私は歌もダンスもダメで…それでもアイドルになることを助けて、諦(アキラ)めないで良いって言ってくれたのが『サイバーカラテ』で、そんな私を受け入れてくれたのが皆さまなんです。だから、『ちゃんこ9』の皆さまには、本当に感謝しています…」

 

「やめなさい水臭(みずくさ)い!そんなのあたしたちにとっては当たり前のことじゃない!あんたなんで今更そんなに卑屈になるのよ!」

 

突然、ツインテール少女力士が怒り出した。

どうやら、丁重すぎる感謝が他人行儀過ぎることに腹を立てているようだ。

 

そこへ清らかな音色が響く。

ポロンポロン…

 

後輩の怒りをみかねたのか、馬の頭の飾りがある竪琴を持つ女、『草の民』のSUMOアイドル『ハープアジア』が、その音曲で『安らぎ』を奏(かな)で始めたのだ。

その呪文は、速(すみ)やかに皆を落ち着かせた。

 

すかさず、また『雷球』が動く。

 

「モニ子よ、お主に説教をしようとは思わぬ。再生者で歳が離れておろうが経験がどうだろうが、ワシとお主は、仲間であり対等な立場なのだからな。だが、先達としてお主より多く失敗してきた者として、せめて少しばかりワシの教訓(がくしゅうでーた)を贈らせてくれないか。人生は、“こんなはずじゃなかった”ことばっかりじゃ。みんな、それぞれの苦しみや悲しみがある。癒せぬ傷や乗り越えきれぬ過去も。この七人しかいない"部(ユニット"でさえ、その数は数え切れん。しかし、それでも…いやだからこそ、お互いに支え合い相談し合うことは出来る。ワシはそう信じておるのじゃ」

 

そして、ビーグル犬は横を向き…近くで素知らぬ顔で他人事のように話を聞いていた、派手な配信窓をぶっ叩(たた)いた。

 

「ナニワゴールド、お前も素直になれ。なんのためにわざわざこのタイミングで声をかけてきた?単に人気取(バズ)やユニットの乗っ取りが目的なら、もっと後のタイミング、たとえば我々が全滅した後でも良かったはずだ。今回の試合(レビュー)の主役(メイン)はあくまで『ラリスキャニア』そして『ラクルラール』だ。更に言えば後者は、容易(たやす)く金で動くはず。賄賂(わいろ)を使えば完全に一度負けてからの再起は可能であるし、お主ならそれぐらい余裕だったろう。なのになぜ、お前はこんな状態を狙って現れた?その有り様ではまるで…この『ちゃんこ9』と一緒に戦うために現れた、補欠(すけっと)のようではないか」

 

叩くその手の動きに合わせ、力士の名前通りの球雷(プラズマ)が発生。

そのまま彼女は、窓越しに痺(しび)れて、奇妙な舞踏(けいれん)を紅踊る白とんがり帽をこづきながら、話を続ける。

 

「こいつも方法を間違えた。仲直りの方法が分からないから、己の力や金、勝負の一般論(ノウハウ)を振りかざすことでしか、こちらに接触(コンタクト)が取れなかったのだ」

 

「そそそ、そんなわわわわてがそそそ…」

 

痙攣する紅白縞(なにわどうけ)に自然と周囲の視線が集まる中、パタンと音がする。

見ればそれは…

 

「本?」

 

「あいつが物理書籍を?“本なんてまとめサイトよりタイパが悪い”が口癖だったのに?」

 

「それもやたらと付箋(ふせん)が挟(はさ)まっているぞ。よっぽど熱心に読んでいるようだな」

 

その題名は。

 

「『猿人にも出来る仲直りの方法?』」

 

ある意味、衝撃の事実。

その開示により、集(つど)う視線の全てが生暖かい温度を帯びていくなか、球雷力士だけは例外だった。

彼女は、そのまま冷静に話を進める。

 

「モニ子、お前は優しい。だが、優しいだけでは駄目なのだ。路上で行き倒れた浮浪者にただ飯や金をやっても、それだけでは浮浪者はそれらを浪費したあげく、より悲惨な目に遭(あ)いかねないようにな」

 

 

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