幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】 作:鳳卵
しかし、評価された当人は異論の声を上げた。
「優しいなんて、それは嘘です!サイバーカラテがあっても、私はダメなままだった!最初の目的は全然達成出来なかったし、今だって、もう負けそうなんです!ごめんなさい!この試合、私には勝てません!どうか、負ける前に私を除名してください!このままでは私は、『ちゃんこ9』に、大切な仲間達(ユニット)の名前に泥を塗ってしまうでしょう!ネドシューラ…副親方ちびシューラはあんなに一生懸命(いっしょうけんめい)に最適解の選択肢を色々出してくれるのに、どれも選ばそうにないんです!ごめんなさい、私がダメなせいで!」
けれど、彼女の先輩は厳しい口調でそれを遮(さえぎ)る。
「それは違う。“最適解”など空手形に過ぎん。どれだけちびシューラが賢かろうと、どれほど『道場』に多様な達人(スペシャリスト)が集(つど)おうと…サイバーカラテは、お主の代わりに人生を生きてはくれぬのじゃ」
「ど、どういうことですか…?」
「うむ、それは今から説明しよう」
そこで白衣の古参力士に、助力の声が上がる。
声の主、長髪の副将(サブリーダー)『大砲』
彼女は、かく語る。
「サイバーカラテは、小切手いや白紙のスケッチブックのようなものだと言えます。あるいは文字通り『杖』と言っても良いでしょう。それは持ち主を助ける道具であって、その代わりになんでもやったりするような万能でも全能でも、ましてや持ち主自身を上書きして打ち消すようなものでもありません。けれど、その在り方はある意味とても優しい」
補足に力を得た球雷はそれにうなずき、続けてとうとうと語り出した。
「確かにサイバーカラテ(シナモリアキラ)のその『道徳』性(モラリティ)つまり頑固なところや厳しいところは、ある意味とても残酷かもしれぬ。特に、お主のような心が弱った者にとってはな。だが、不完全ならそれはそれでやりようはある。そうは思わないか?」
やりよう…ですか?」
「うむ。サイバーカラテは不完全な存在。いかにこの世界の伝統と深い関わりがあろうと、結局いま広まっているのは『猫の国(いせかい)』から偶然導入された技術に過ぎん。言わば、異界の迷子だ。だが、『大砲』が先程言ったように、同時にそれは人々の力になり支えにもなる『杖』でもある。ならば…我々がそれを更に補っても良いのではないか?助ける者を更に助ける、この迷子を迎え入れるこの世界の代表になっても良いのではないか?」
「この世界の代表に…?こんな私が?」
「そうだ。なぜなら、お主いや我々末端の使用者(ユーザー)こそが、サイバーカラテに対し最も親しく接するこの世界の代表であるからだ。店の客にとって売り子がそうであるように、あるいは取引先にとって営業マンが、施設の受付がまたはヘルプ担当の仮想使い魔が、それらの代表とみなされるようにな」
「なるほど…」
聞き手が納得したのを見届けたリーダーは、更にその先へと話題を進める。
「そして、サイバーカラテは、お主の逃げ道でも墓でもない。いや一時的にはそうなるかもしれぬ。だが決して、それは“終着点”ではない。なぜか分かるか?」
「…サイバーカラテは、転生者の武術だから?」
迷いのある回答。
そのぎこちなさに対し、勢いあるうなずきが返される。
「そうだ。サイバーカラテは転生者の武術であり…それ自体も転生する。常に変化し、進歩していくものだからだ。そしてそれは、お主も同じなのだよ、モニ子」
「同じ…なんですか?」
謎めいた言葉に疑問の声が上がる。
それに返された解答は、実に単純(シンプル)だった。
「『フィードバック』だ」
『ちゃんこ9(サイバーカラテアイドル)』の代表は、『道場』で先月のバズワード九選に選ばれた『シナモリアキラ名言』の一つを引用し、続けてその引用意図を語る。
「人は間違える。傷つけ合い意図に反して愛する者を苦しめもする。だが、決してそれだけで終わりはしない。」
彼女は、大きく手を動かし、自分を、そして周囲(まわり)の一団(サイバーカラテつかいたち)を指し示してから、話を再開した。
「サイバーカラテは、お主の仮面にも鎧にもなってきた。だが、その可能性は決してそれだけではない。なぜならサイバーカラテは、最新にして異界の『杖』の武術でありながら、六王が代表する長い伝統を誇るものでもある。すなわち、多くの手法と武道家(ユーザー)を受け入れる、広大無窮の懐(ふところ)の広さを誇るのだ。お主が望み、手を伸ばすなら。正しく求め『道場』と共に道を歩もうとするならば…」
そこへ再び、『大砲』が補足する。
「モニ子さん、サイバーカラテはあなたの靴にも箒にも翼にも、欲しいものへと伸ばせる義肢にもなるでしょう。『サイバーカラテ道場』とは、それに触れる者の欲望(ユメ)と信仰(こころね)によって以下用にも形を変える姿見(かがみ)無限に進化する道具(ツール)なのですから」