幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】 作:鳳卵
そんな間も、同時進行で地下ではベルトコンベアが流れ、金ボタンが量産されていく。
瞬(またた)く間に機械によって衣装が縫製され、様々な工程が高速で進行していくのだ。
その動力は、地下工場を見れば一目瞭然(いちもくりょうぜん)
固定された自転車をこぐラリスキャニア、巨大回し車の中で走るラリスキャニア、生贄模倣儀式をコンビで交互に繰り返すラリスキャニア"たち"
これぞラリスキャニア・人力動力。
すなわち、地下アイドルによる擬似永久機関(アイドリング)である。
その、あまりの有り様(さま)にサウナ・ラクルラールは思わず叫(さけ)ぶ。
「なんだ…なんなのだ、これは!」
答える者は無い。
何故(なぜ)なら、それは、偶像(シナモリアキラ)の回答とは――常に、行動(ふるまい)を以(も)って示されるモノだからだ。
電光掲示板の文字が、新しい表記へと流れ変わる。
“闘争の偶像祭(レビュー)”
その真下、再び開いた黒穴から少しずつ迫(せ)り上がってくる者がいる。
腕組みをしながら現れるそれは、まぎれもなく先程溶鉱炉に飛び込んだ人物であった。
一見して、それほど変わらぬ装(よそお)い。
しかし、明(アキラ)かに違う一点があった。
その背中には、新たな文字がしっかりと縫(ぬ)い取られていたのだ。
“ネドラド命”
推しへの愛とその不遇への怒りを背負い、サイバーカラテSUMOアイドル、ここに再誕である。
そこへ、部長の『球雷』が声をかける。
「モニ子よ、お主も知っての通り『サイバーカラテ道場』は、選択を補助するシステムであり、千変万化(しょぎょうむじょう)な戦況(いま)に適応し、最適な業(ワザ)を提示する無形自在の武術である。そうだな?」
「はい!」
「うむ、それはつまり、これまで盲目的に"唯一最善"だと信じ込んでいたこれまでの選択肢(おのれじしん)を見つめ直し、必要なら容赦なくそれらを捨てていくことを意味している。すなわち、異界(ねこのくに)で言うところの『三毒』『貪(ごうよくとしゅうちゃく)・瞋(いかりとしゅうねん)痴(こていかんねんとへんかするせかいへのむち)』といった最適行動を阻害する毒素を祓い清め(リフレッシュ)ることにより、明鏡止水(おだやかでれいせいなきょうち)にて、改めて人生を選び直す。それこそが、サイバーカラテが提示する自己革新(こうせい)なのだ。そして我ら『SNA333(サイバーカラテアイドル)』の舞台(レビュー)は、その手助け(サポート)のためでもある」
「手助け、ですか?」
主将(リーダー)はそこでうなずくと、更に己のサイバーカラテ・アイドル解釈を述べていく。「そうだ。そもそも古来より、大衆が参加する宗教儀式(ライブ)はそういったものであった。日常(ケ)を見直すための非日常(ハレ)教主や霊媒(みこ)による歌(おしえ)や舞いは、単に神や教義(しそう)を顕現させるだけでなく、それを現実界(げんせ)の我々(にくたい)に最適化(エンコード)して散布するものでもあった。新しく活力に満ちた(ヴィヴィッドな)波動(ふるまい)を伝播(かんせん・きょうしん)させことによって、それまでも悩み苦しみに満ちた生(かころぐ)を塗り替えるのだな。それを、過去(これまで)を洗い流すための行(ふるまい)変化のための禊(イニシエーション)と言っても良いだろう。『サイバーカラテ道場』は、これまでのお主の苦(なやみ)の原因、執着(エゴ)を清掃(クリーニング)する手助けをし、新しい目標(みらい)へと軸(ろせん)を切り替えること。すなわち転生(リサイクル)を目指すものでもあるのだ」
「え、ええっと…」
困惑する後輩。
それに先輩は苦笑いしながら、話を続けた。
「分かりやすく言おう。モニ子よ、サイバーカラテにお主を委(ゆだ)ね、そのまま新たな己として道を選び直せ。自由意志や主権を放棄するのではない。これからお主は、これまでの己(さいてきかい)への執着(こだわり)を手放し、『道場』に満ちる多様な流儀(ふるまい)を全て取り込んで再構築、そこから新たに最適な選択肢(みち)を進み直さねばならぬ。ここに現れし土俵(スポットライト)は、そのための試練(ゲーム)であり儀式(セレモニー)なのだ!」
「あんまり良くは分かりません。けど、やってみます!私は皆さんを、『ちゃんこ9』を信じます!」
その返答に、白衣のビーグル犬は先程とは違った楽しそうな笑みを見せた。
「その意気や良し。ただし教わるな、学べ。信じるべきは己自身だ。モニ子よ、お前自身を信じろ。お前とお前の相棒、サイバーカラテ道場における守護天使(ちびシューラ)を。そして、この変動(せんぺんばんか)を続ける流儀(せんたくし)の大河(スレッドのむれ)から、今の、更に未来(これから)のお主によって最適最善の選択肢(ふるまい)を見事選び取り、眼の前の現実(こんなん)に対して突きつけて行くのだ!」
そして彼女(リーダー)は、一番奥の光の土俵(スポットライト)から大きく叫(さけ)ぶ。
「さあ来いモニ子!これまでの後悔(かころぐ)を、自分(ふるまい)を超えて行け!」
「はい!」
さあ、女と女、アイドルとアイドルがここで、この地下アイドル空間で向き合い、見つめ合えば起きることはただ一つ。
見合って見合って…
「発勁用意!」
「発勁用意!」
「「NOKOTTA!」」
九連戦(アイドルレビュー)の始まりである。