幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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267話 ちゃんこ⑨のアイドル道(レビュー)④その2の106~107の途中まで

「ど、どうして…!?ちゃんと対策はしたのに…!」

 

彼女の疑問に答えるかのように、ぽとん、と小さな音。

見れば、それは落下物。

モニ子が密(ひそ)かにつけていた、天眼石のアクセ。

市販では最高級の品、それも念の為に三つセットにした改造品(カスタマイズ)

けれどそれは、もはや役目を果たさない。

真っ二つに、割れてしまっている。

 

そこへまるでそれを悼(いた)むかのように、小さな影が舞い落ちる。

モニ子は、思わずその名を呼んだ。

 

「先輩の、サングラス…」

 

そこへすかさず、訂正が入る。

 

「“『邪視』殲滅の三眼黒眼鏡”だ、モニ子よ。これはセレスティアルゲイズの…邪視系ブランドへの特注品でな。」

 

そして、その持ち主は静かなままにこう続ける。

 

「それで抑えなければ…こうなるだけよ、全てがな」

 

「そ、そんな…けど!」

 

もちろん、モニ子もこのまま無抵抗では終わらない。

なんといっても、彼女もサイバーカラテの使い手なのだ。

その分厚いボディースーツの内側からは、その念動力によって次々と呪符が飛び出し、撒(ま)き餌(え)を見つけた鳩(ハト)の群れのように、相手に襲い掛かろうとする。

 

だが、

 

「その程度か?」

「ま、また…!?」

 

それはまるで、にわか雨のように。

確かに放たれたはずの呪符たちは、次々と音を立てて大地へと墜落していく。

突き立つ様は墓標の如(ごと)し。

 

「それで終わりか?」

「…」

 

先輩からの厳しい声。

しかし、それに返せる言葉は何も無かった。

何故(なぜ)ならば…

 

(か、身体が…動かな、い…)

 

もっと厳しいそのまなざしが、石化の力を持つその眼光が。

その頭全体から、木漏れ日のように降り注ぎ続けているのだから。

 

『ちゃんこ9』副将岩肌種の再生者アイドル『大砲(グレートキャノン)』

その特徴である長髪(ドレッドヘア)は、風もないのにうごめき、うねりをあげながらモニ子に向き合い続ける。

その有り様はまるで、無数の蛇が群れだっているかのようであったのだ…

 

気づけば、周囲は闇。

何も見通せない暗黒の中に、ぽっかりと光の円だけが闘技場(ぶたい)として切り取られている。

 

「こ、これは…」

 

「そう、石化の『邪視』でごわす」

 

すっかり身動きが取れなくなったモニ子に、その拘束の主犯は静かに告げていく。

その言葉の軽やかさは、まるでこれが、当たり前の練習試合(けいこ)でもあるかのようだ。

 

「大した滑り出しだ。いや、“飛び出し”と言うべきでごわすな。さっきのは、足裏から闘気(オーラ)を吹き出しての突撃、だったのでごわすから。こちらが『邪視』を使うのがもう少し遅ければ、おいどんは土俵から落とされて…舞台の中心(ポジションゼロ)を奪われていたに違いないでごわす。確かにそれこそが、単純素朴(シンプル)な体当たりによる速攻こそが最適解であるのは、理屈(シミュ)では間違いないでありましょう。なれど、いかに感情凍結の支援(システムサポート)があれど、それを迷いなしに実行出来る者は、そうはおらんでごわす。なかなか良い思い切りでごわすな」

 

伝えられたのは、心からの称賛。

 

けれど、褒(ほ)められている当(とう)の後輩としては、それを苦笑いで返すしかない。

 

「お褒めいただきありがとうございます。…でも、結局はこうして止められてしまいました。身体もすっかり石になってしまって…こうしてお話するのもだんだんつらくなってきました。私も『空の民』の端くれ、『邪視』にはそれなりの自信があったのですけど、ね…」

 

それに対し、石化邪視の使い手は、鼻で笑ってみせる。

 

「ふん、『石化』など下(げ)の下の手法に過ぎぬでごわす。こんなものは、かつて滅びた魔王ネビロンの『催眠』と同じよ。卑劣漢や臆病者、そして暴力にうちひしがれ相手の“攻撃してくる可能性”にさえ耐えることの出来ぬような、心弱りし者だけが依存するような、卑劣で恥ずべき術。我らが求めるべき正道、真正面から相手とぶつかり合い、四つに組み合って己が器量を示(しめ)さんとするようなSUMO精神など、欠片も無き業(ワザ)でしかない。肝心の効果にしたところで、おいどんのような特殊な実験体でもなければ、足止めすらままならぬほど脆弱卑小(ぜいじゃくひしょう)。拘束系の『邪視』など、せいぜいが亜竜王アルトのような元から強大な者がその威を改めて世に示すその“副次効果(おまけのさんぶつ)”に過ぎぬし、そのような栄光ある使用例も現代ではほとんど例外(レアケース)。結局は、停滞(ほしゅ)と絶望(ほしん)の色彩しか持てない者の怠惰な世界観(しかい)でしかないのでごわす。だが…今回はあえてその卑劣な業(ワザ)を使わせてもらったでごわす。なぜならば…」

 

こで言葉を切った『大砲(グレートキャノン)』は、より強く後輩を睨みつけた。

 

「これからおいどんは、お主に“諦(アキラ)めろ”と言わねばならぬでごわすからな!モニ子よ、アイドルを諦めろ!実家に帰って家業を継(つ)ぎ、幸せに暮らせ!」

「い、いやです!」

 

 

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