幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第27話(22~23の途中まで)

 

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動画窓の上に接続表示が重なり、動画の内容が切り替わる。

過去の記録から、現在の映像へ。

 

それは、一見これまでと同じく『死』の映像に見えた。

さまざまな形での『死』

刺殺、斬殺、打撲に轢殺、そしてもちろん爆発による自死。

だが、その主役はシナモリアキラから別の人物へと切り替わっていた。

 

細部が異なる服装や装備、様々なセリフ

その人物は……。

 

「これは全て、リーナの父、その新たに創作された姿の映像だ」

 

そう、それは、かつての『地上』での祭典の前後から語り続けられてきた、英雄の物語であった。

 

その物語は、途切れること無く語り続けられ、そして消費(あい)され続けてきたのだ。

 

そして、地下アイドルは、己が愛するエンタメ(あいどる)の価値を説き始めた。

同時に、指を鳴らし、停滞していた舞台装置を再起動させることも忘れない。

 

英雄の物語には、それに相応しい舞台、そして語り手が必要なのだ。

あるいは、それはもはや"彼"の舞台、"彼"の物語ではないのかもしれないが。

 

ガタン、ガタガタガタガタ、ゴゴゴゴゴ……

 

舞台装置が起動し始めるなか、地下アイドルの"興行主"は、とうとうと語った。

 

「リーナの父は、第五階層での死去が知れ渡って以来、様々な物語の題材となっている。

舞台やアニメ化、さらには牽強付会ぎみに訓示や談話で引用される。

理想化、凶悪化、女体化に少年時代の捏造にその他もろもろ…一つの断片、イメージ、すなわち一つのミームとなった彼は、味わわれ、咀嚼され、流用され、幾度も反芻されて消費され続けている。

そんな彼の存在は、もはやアイドルとなんの変わりも無いと言っても過言ではない。だが…」

 

そこで、ラリスキャニアは舞台の中央を指差した。

そこには、ついさっきせり上がってきたばかりの、新たな触手人形(やくしゃ)がたたずんでいる。

 

「彼は、こうして何度でも再演され、そのたびことに蘇っている。いつかは、飽きられることがあるかもしれない。だが、そこに価値を見出すものがいるかぎり、記録と記憶が残り続ける限り、彼は何度でも蘇る!」

 

そこで、"興行主"は、少し間をおいてから、強く叫んだ。

 

「アイドルは消費されても、何度でも蘇る!強大な力に圧倒されても、たとえ負けて死んでもそれだけで終わったりしない!アイドルは、アイドルを愛する者が現れ続けるかぎり、不滅なんだ!」

 

ラリスキャニアは、そう叫ぶとともに、強く足を踏み鳴らした。

その動作をきっかけとして、新たな仕掛けが作動する。

その対象は、舞台だけではない。

彼女たちが存在する舞台袖の反対側、舞台に向かって左手側の、もう一つの舞台袖にも、その仕掛けは作用していた。

 

仕掛けによって、下から新しい触手人形たちがせり上がって来たのだ。

まず、舞台に現れたのは、黒一色の貫頭衣を着た若白髪の男性であり、そして舞台袖に出てきたのは、一冊の黒い本をたずさえた三角帽子の少女人形だった。

 

舞台袖の少女人形は、最初から舞台に立っている人形よりも背が高い。

それは、成長した"現在"の姿であることを表していた。

 

若白髪の男性は、酔っ払ったような足取りで、舞台のほうの少女人形の手をとって歩いていく。

その歩みの先には、人形たちより少し前にから降りてきていた新しい背景(ぶたいそうち)が、主の帰りを待つ城のように静かにたたずんでいた。

 

その背景は、三階建ての住宅だった。

それなりに高級な家屋なのだろうが、最近手入れが行き届いていないのか、古びた感は拭えないような、そんな家だ。

家は書き割りであったため、その内部を容易に見ることが出来た。

そこにも新しい人形たちが存在し、穏やかな家庭生活(にちじょう)を演じている。

 

舞台袖の方の少女人形は、箒に乗って宙に浮かぶと共に、持っていた黒い本を開く。

そして、舞台の進行に合わせて、本の内容を語りだしたのだ。

 

「朗読……あの新しい"リーナ"は、【ナレーター】ですか」

 

「ああ、そうだ。ここから先の幕は、採集したリーナ本人の発言を元にした『リーナ本人の過去回想』という形式にしている」

「"邪悪な脚色をされていない"ことを表現すると共に、"これはあくまで個人の思い出であり、その内容は不正確かもしれない"という含みも持たせている、というわけですか」

 

そうしてラリスキャニアたちが会話している間にも、舞台は進行し続けていた。

 

子供リーナの手を引いていた若白髪の男性は、舞台セットの"玄関前"で、立ち止まった。

かと思えば、唐突に挙動不審となり、うだうだと悶えるような動きを見せ始めたのだ。

 

なんだか、気色が悪い。

 

そんな彼は、しばらく奇怪な動きを続けた後、子供リーナと目があったのか、ふと動きを止めた。

そのまま数秒間静止する。

しかし、それは、永久に身動きを止めたわけではなかったようだ。

彼は、傍らの少女人形になにやら語りかけて、安心させるように微笑むと、なんとおもむろに懐から酒瓶を取り出して、一気に飲み干した。

そして、また急に大声を張り上げて、住宅の内部に何やら呼びかけ始めたのだ。

 

それはどうやら、大音声で自らの帰宅を告げているようであった。

 

どうも若白髪の男は、"酔っ払ったような"ではなく、本当に酔っていたようだ。

あるいは、しばらく挙動不審だったところを見るに、飲まなければやっていられなかっただけなのかもしれない。

 

その間、舞台袖の少女人形はといえば、ぷかぷか浮きながら、そんな舞台の有様を面白おかしく実況している。

 

家長を玄関に迎えに駆け寄った家の中にいた二人の母娘が、三角帽子の少女人形の存在に気づいて凍りつくように固まった時も、若白髪人形が、なにやら大声で演説をしている間も。

 

演説をがなり終えた若白髪人形が、新参者の少女を二人に押しつけ、舞台外の寝床に逃げ込んだ後も。

そして、硬直から回復した白い少女人形が、子供リーナの人形に蹴りかかろうとして、母親人形に必死に止められている間も。

 

舞台袖のナレーター人形は、ただひたすらに実況を続けている。

面白おかしく、そしてどこか悲しげに。

ただ、語っているのは自分自身の過去という設定のはずなのに、その瞳は、どこか他人事を見るかのように冷たい光を宿していた。

 

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