幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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269話 ちゃんこ⑨のアイドル道(レビュー)⑦その2の108~109の途中まで

「そもそも最初から、ここは広大な広間に作り替えられていたのだ。いくら闇で覆い照明で土俵を演出しようと、それは同じこと。だから、少しその照明(ひかり)の角度を変えてしまえば…こうして“本来の”姿が浮かび上がり、土俵による一対一の強制など、単に演出に誘導された先入観(おもいこみ)に過ぎないことが明らかとなるわけだ。全く、この程度のことに気づくのにこれほど時間がかかるとは…私が試験官ならとっくに落第にしているものを…」

 

もちろん、この語りが単なる暇つぶしなわけもない。

 

この解説は、視聴者への説明であると同時にアイドル学校の教育者としての女教師(ラクルラール)の見識の披露(アピール)でもある。

そう、これこそか今の彼女なりの“競争(レース)”即(すなわ)ち、自身の優位性(マウント)の証明であった。

即(すなわ)ち、勝負は今も続いているのである。

それを意識してか、土俵上(ステージじょう)の少女力士は、また声を張り上げた。

 

「確かに、サイバーカラテ使いは“予想外への対応力”が必要となります。どんな状況にも慌(あわ)てず、相棒(ちびシューラ)と最適の選択肢を作り選んでいく心構えが。けれど、ならば一番手は主将(リーダー)であるべきです。なぜ、そうでなく最初は副将(あなた)だったのですか…?手加減?優しい主将のご配慮?もちろんその可能性も考えました。ですががもしそうでないとしたら?…これが、その答えです!」

 

すっかり灰色に染まったその喉(のど)は、少し喋(しゃべ)るだけで苦しそうではあったが、放たれた言葉は見まごうこと無き真実をしっかりと指し示していた。

光の道である。

それは、闇を切り抜く星々を繋(つな)ぐ、新たな星座。

曲げられた光は、黒の帳(とばり)を切り裂き、隣(とな)り合う星々…即(すなわ)ち隠されていた他の部員(メンバー)たちの土俵(フィールド)を貫(つらぬ)き、ネックレスのように繋げていたのだ。

そう、光の土俵は副将の一つだけが残ったのでは無かった。

これこそは――

 

「これこそは、みんなが、『ちゃんこ9』がいつも共(いっしょ)に在ることの証(あかし)!自分は一人だけだと思い込み、目の前や地面(した)だけに目を向けていたら、きっと一生気づかなかったはずのこと!どんなときも、仲間(みんな)は傍(そば)にいてくれるってことです!副将、この土俵を攻略(クリア)する最適な手段こそは、主将の存在!即ち、彼女との対決による鍛錬(トレーニング)なのでしょう!」

 

そして、モニ子は確信を叫(さけ)ぶ。

 

「そして、この光を反射する爪飾り(ネイル)は、貴方に教わったものです!副将、これはあなたが計画した、私の成長のための試練(れんしゅうじあい)なんですね!」

 

「…何故(なぜ)気づいた」

 

しかし、情熱的な叫びに返されたのは、はぐらかすような質問。

それでも、後輩は真面目に答える。

 

「音が、音楽が聞こえました。ほんのかすかに、『ハープアジア』先輩の音楽が、闇を越えて!それで気づいたんです。いいえ、思い出したと言うべきでしょう。この“光の土俵”は元々みんなが、『ちゃんこ9』のメンバーが、協力して作ってくれたものなんだって!」

 

絆(きずな)を確信したその眼(まなこ)は輝き、その頬(ほお)は明らかに化粧(メイク)以上の彩(いろど)りを得ていた。

真相の解明に、配信画面を挟んだ視聴者たちも歓喜し、コメントは既に激流のような有り様と化(か)していた。

しかし…

 

「良く気づいた。それは褒(ほ)めておこう。だが、やはり甘い。甘過ぎる。モニ子よ、その無闇(むやみ)な全肯定(ポジティブ)さと夢想癖(ゆめみがち)はいつか必ずお主の命取りになるでごわす!死女神無く、新たに再生者に成れぬ今、それは本当に死を招きかねん!」

 

返されたのは、またしても圧倒的な気迫。

そして、地鳴りのような怒り。

 

「ふ、副将…」

 

たじろぐ後輩に、先輩は逆に踏み込む。

 

「ゆえに計画変更だ!甘さと夢想を捨てきれず、何も捨てることが出来ぬのなら…いっそここで死ねい!夢の先で残酷な破滅を迎えるくらいなら、私がここで引導を渡してあげるわ!」

 

「くっ!なら、それより先に…!」

 

もちろん、後輩力士も黙ってそれを受け入れるわけがない。

モニ子は、とっさにまた足元から闘気を噴射した。

制御が甘く、肉襦袢(ボディースーツ)の脚にダメージ(ひびわれ)が走るが、それでもその勢いは力強い。

日々のアイドル鍛錬によって培(つちか)われた自信は、文字通り力となって彼女の身体を運び、『邪視』によってざんしょうとして固定された光道の上を、恐ろしい速さで滑らせようとする。

 

だが、そこに。

 

「行かせぬわぁ!」

 

「そんな…大きい!?」

 

突如として巨大化した先輩が立ちはだかる。

しかも、それだけではない。

 

「こ、これは…!?灰色が広がって…洞窟!?」

 

そう、立ちはだかった岩肌種(トロル)の周囲に、その肌のような灰の色彩が広がり…それは瞬(またた)く間に巨大な洞窟となって二人を包みこんだのだ!

 

「これが我が擬似『浄界』!そうだな、名は“石蛇邪眼陣(せきじゃじゃがんじん)”とでもしておこう!」

 

その声は遥か頭上から響く。

気づけは、岩肌種(トロル)は非常な巨体となり、その身体も大きな変異を見せていた。

その下半身は巨大な灰の蛇体と化していたのだ。

蛇の尾は大きなとぐろを巻き、その先は闇へと消えている。

どれだけの長さなのかは見当もつかない。

 

そしてその異形の 『大砲(グレートキャノン)』は、更に告げる。

 

「さあ、モニ子よ。お前は進むために捨てるのか?それととも何も捨てられず私を傷つけることも出来ないのなら、」

 

いっそのこと…

 

「ここで死ぬか!?」

 

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