幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】 作:鳳卵
けれど同時に、モニ子もそれを予測し対抗策を打っていた。
当然である。
どちらも同門、同じ業(サイバーカラテ)の使い手なのだから。
モニ子のその両脚は、ボディースーツの束縛から解放され、今こそ公然と宙に浮く。
これぞ『空の民』の象徴たる特徴、非難されたる未練(しんこう)の証。
しかし、それが足枷(デメリット)にはならぬと言うが如(ごと)く、少女力士はその足 脚を踏ん張り、大地(どひょう)を踏み締める。
そう、踏みしめられたのだ。
いつの間にか、宙を浮く彼女の脚は蒼(あお)く輝き、大地へと長く静かに伸びていた。
それはまるで、そこら中(じゅう)から陰(かげ)を延(の)ばす、この絶望の洞窟(ぎじじょうかい)を反転させたかのような、有り様(さま)だったのだ…
「なんだ!?この蒼(あお)い脚(あし)は!?」
洞窟の主(あるじ)が困惑したその一瞬の隙(すき)を突き、少女力士は高々とその片足を持ち上げていた。
逆の軸足は、蒼き槍となって宙に浮いたままその延長で大地を貫いて身体全体を支え、もう片足はその反動のように、あるいは、『空の民』の本性を褒(ほ)め称(たた)えるかのように真っ直ぐと天へと起き上がり、そのまま果てしなき空を目指していく。
しかし、その挑戦はすぐに風向きを変えた。
なぜなら、高々と掲(かか)げられた脚は、対の相方と揃(そろ)い伸(の)びることで槍となった…かと思いきや、真っ直ぐに大地へと振り下ろされたからだ。
当然、
「させぬぞ!」
と邪魔が入る。
迎撃、それも同門ゆえに全く同じ技による迎え撃ち!
振り下ろされる脚は二本、しかし響いた音はただ一つ。
全くの同タイミングとなった着地が、二人の響きを一つに重ねたのだ。
かくて、『大砲(せんぱい)』の響きは地鳴り、モニ子(こうはい)とぶつかり競り合い始める。
地鳴りの四股(スモー・ステップ)と空鳴りの四股(スモー・ステップ)
二つの四股(ステップ)は同心円となり、幾重(いくえ)にも広がる二つの波紋の形で互いを打ち消し合って、呪力の火花を散らしていく。
衝突は、今のところ全くの互角。
他の土俵に合図を送れもしないが、その代わりそれを阻害する以上のことも出来ぬ。
つまるところは現状停滞、両者手詰まり。
それに痺(しび)れを切らしたのか、岩肌種はまた口を開く。
「なるほど、『幻肢の力』か!元々使っていなかったとは言え、お主に使えぬ道理も無し。『空の民』の力、天性の強大な『邪視』力を増幅させることで、“好きなように拡張させた理想の脚”を幻肢として具現化する…『創造』の応用技だな!」
先輩の言葉に後輩が応(こた)える。
「『幻肢』と言うからには、『手』だけでなく『足』も可能なのは理の当然!これはちょっとしたサイバーカラテの応用に過ぎませんよ!そして!」
と、ここでモニ子は、自らの脚をその視線で示して見せた。
そこには今や、これまで常にその浮遊を隠していた立体映像の幻惑はもはや無い。
宙に浮く実体の身体からその延長として青い光の脚が、どこまでもどこまでも自由に、そして果てしなく伸び続け…それは蒼穹(そうきゅう)の色を持つ槍のように、大地にその身体を縫(ぬ)い止めていた。
そして、身体(スタイル)の大幅な“改善”に成功した少女力士は宣言する。
「私は地に足をつけて、『大人』になる!広い視野と責任を背負える力を持った、"大いなる人”に!」
その言(こと)の葉を証(あか)し立てるかのように、その影もまた長く伸び、今や洞窟の壁のような先輩(トロル)と競(せ)り合っている。
もちろん、本体の方もまたそれに劣らない。
少女の伸びた脚は身体全体を持ち上げ、長大な体格を演出していた。
けれど…
「ふはは、言うではないか!だが、図体だけで成人を認めるわけにもいかぬな!そうまで言うならモニ子よ、己が『大人』であることを示してみよ!我が試練を乗り越えてな!」
その程度で、この先輩が諦(アキラ)めるわけもない。
彼女は、擬似とは言え『浄界』の展開まで可能とする実力者なのだ。
そう、地下アイドル(グループ内)ユニット『ちゃんこ9』が複勝『大砲(グレートキャノン)』は、この擬似『浄界』即(すなわ)ちこの洞窟の主に他ならない。
言わば、小規模な階層主(フロアマスター)。
故に…
「な、なんですかこれは!?」
そこに入り込んでしまった異物(しんにゅうしゃ)はまたしても驚愕(おどろき)に見舞われることとなる。
彼女は、見た。
確固としたものとして具現化し、もはや太古から存在していたとしか思えない実在感(リアリティ)を放っていた岩壁が…まるで粘土のように、ぐにゃぐにゃと変形していくところを。
即座に、その実行者が攻撃の正体を、重々しくそして親切にも解説してくれる。
「そうだ。そしてこれは画面水晶(スクリーン)、お主にこの業界の、地下アイドルの世界の過酷さを教え…いや、改めて思い出させてやろう。我々がいま生きているこの場所が、どれだけ過酷であるか、ということを!」