幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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72話 ちゃんこ⑨のアイドル道(レビュー)⑩その2の110~111の途中まで

その言(げん)に応じ、画面水晶に映像次々と映し出される。

 

それは、何枚何面もの画面となって続き連(つら)なり、屏風(じゃはらパネル)を形成して後輩(しちょうしゃ)を文字通り取り囲む。

 

それに対し、

 

「過酷なんて、アイ活(アイドルかつどう)では当たり前のこと!崖登りも錆(さ)びた刀での鉄柱斬りも、どんなに辛(つら)く大変でもみんな乗り越え来たじゃないですか!」

 

と反論が返るも、先輩はこれを一笑(いっしょう)。

 

「おいどんが言う過酷とは、アイ活の修行(トレーニング)や鍛錬(レッスン)のことにあらず!この業界の、地下アイドルのそして『推し活』自体の構造的な過酷さのことよ!そうさな――今だけはここにあやつが、ナニワゴールドが居て欲しいところでごわすな。なにしろこれこそまさに、あやつの専門分野(スペシャリティ)でごわすから!」

 

「なぜここで彼の話を…まさか!?」

 

「そう、そうよそのまさかよ!」

 

そうして岩肌種(トロル)が大音声(だいおんじょう)を張り上げると、全周に展開された屏風(がめん)がそれに反応。

それぞれに異なる“角度”から一つの“場”の事実(ものがたり)を描き始めるのだった!

 

『大砲』が示したのは、地下アイドル業界の過酷な真実であった。

 

無限に推しが出ないランダムガチャ、チケット詐欺や転売詐欺に騙(だま)されて、大金を失って泣き崩れる者、推し活にのめり込み過ぎて、失職(クビ)になったり親に勘当(かんどう)されたり交際相手と別れたり健康を害したり、資金入手のため別階層の高難易度迷宮へと挑んで消えて(ロストして)いく人々。

etc(えとせとら)、etc(えとせとら)…

屏風(スクリーン)のある面では、あるいは破産、あるいは過酷な肉体労働、あるいは刃傷沙汰(にんじょうざた)が発生しており、最後のものはすぐに豪華客船の船旅映像に差し替えられた。

 

いや、これは『臭い物に蓋』ではない。

映像の、その実態は何も変わっていなかった。

船から虚空へと渡された鉄骨、その上でのカードバトル、パチンコ、そして決闘に狩猟。

豪華客船は、債権取立て用の賭博場であった。

ほら、見れば今も宙を飛びながら、汚染呪力強酸液(イービル・アシッドブレス)を吐いてくる九頭鮪(ナインヘッズ・トゥンヌス)相手に、重症を負いながらも死闘を繰り広げる債権者たちの痛々しい姿が…あ、勝った。

 

プツン!

 

都合が悪くなったのか、一部の画面が今度こそ縦縞に工事中シューラの画像に切り替えられ、あるいは海パンシナモリアキラへの加虐性愛(SM)を強要される新人風俗嬢の映像へと統一されて、その涙目が大きくクローズアップされたりしていた。

彼女はこれから、ほぼ全裸男の快楽のため、やりたくもない暴力にその身を染めなければならないのだ。

推し活が無ければ発生しなかったであろう、負債のために!

どうせ海パンならまだ火のカーインが良かった!と叫ぶ意外と余裕ある感じのその声が、字幕として画面いっぱいに表示されていく。

それらの威を以(も)って『大砲』は叫(さけ)んだ。

立ちすくむモニ子を八方から囲む画面(えいぞう)もそれに唱和し、九倍に膨(ふく)れ上がった批判が音圧の波となり、少女力士に襲(おそ)いかかる!

 

「「「どうだ!これが地下アイドルの、そして推し活の負の面(ダークサイド)!!お前はこの返しきれない負債(ツケ)にどう向き合うというのだ!!」」」

 

戸惑う後輩。

 

「そんな、そんなこと言われても…!」

 

それに向かい、先輩は今度は静かな声で緩急(かんきゅう)をつけて語りかける。

 

「だが、これが事実だ。誘惑と搾取、アイドルに留(とど)まらず客にも序列をつけて浪費を競いあわせる。ここはそんな過酷な場所だ。牢獄でさえ進んで財産を供出させることはないというのに、ここではあらゆるものが供出を求められ、搾取され続ける。それも、所詮(しょせん)素人(アマチュア)でしかない、我々の未(いま)だ未熟な技芸(パフォーマンス)の対価として、な。」

 

しかし、モニ子はそれに更に食い下がった。

 

「でも、それだけじゃない!技芸(スキル)だけが全てじゃありません!アイドルには夢も希望も、もっときらきらして楽しいところも、たくさんあります!お金や呪力にだって変えられないくらいの輝きが!そのことは、先輩だってご存知(ぞんじ)のはずですよ!」

 

その言葉には、流石(さすが)相手も思うところがあったのか、僅(わず)かだが反応があった。

彼女は、顔を少し俯(うつむ)け絞(しぼ)り出すかのように、語りを再開する。

 

「…確かにな。アイドルは夢であり希望だ。観客(ファン)に夢を見せ、互いに同じ夢(もくひょう)を目指すよう誘(いざな)うことで、日々に刺激を与え目的意識を抱かせる。浪費にしたところで、それは『非日常(ハレ)』の時間(とき)を獲得し、日常の憂(う)さを晴らす役割を果たしていることだけは、否定出来ん。何も無い、夢も才能(とりえ)も持たぬ者でさえ、アイドルを推せば新たなる人生(いきかた)や実現したい理想(もくひょう)、それを目指す充実感、更には、同じ推しを共に支える同担(なかま)という人間関係すら獲得することが出来る。たとえ表現力(パフォーマンス)が未熟であっても、地下アイドルにもポジティブで金銭以上の『価値』は確かに存在するだろう」

 

「でしょ!」

 

思わず、歓喜するモニ子。

 

「だが!」

 

 

 

 

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