幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】 作:鳳卵
涙目になるモニ子。
すると、流石(さすが)にそれは悪いと思ったのか、先輩は今度はあわてて…
「拙者は、偽物ゆえ…」
と、よく分からないことを言ってくる。
だから今度は、
「で、でも先輩の音楽は本物です!本物の情熱がこもってました!確かに、まだまだトップアイドルのレベルには遠いかもしれません。けど、それは私も、いえ『ちゃんこ9』の全員がそうです!未熟なら成長すれば良い!偽物なら本物になれば良いしそうなれないなら、“最高で究極の偽物”になれば良い」
と後輩は必死に訴えるが…
「違(ちが)うのでござる…拙者は…拙者は…」
と、まるで要領を得ない。
あまりの状況に配信画面のコメントが大荒れし、場の全員が言葉を無くす。
と、そこへ突然、それまで沈黙していた別の人物が声をかけて来た。
「その疑問には、私が代わりに答えよう」
その瞬間、一つを除いて全ての画面が強奪(ハッキング)され、ただ一つの顔が映し出される。
それは、その場の全員が良く見知った顔、見飽きるほどに嫌いな姿。
現れた人物の正体は、全員の怒りの唱和が世に知らしめる。
「「「ラクルラール!!」」」
「そう、私だ」
そうして女教師は、サウナ用バスローブのまま、ふてぶてしい態度で頼まれもしない解説を話し始めた。
「その女、『ハープアジア』とやらは“偽物の『草の民』”なのだよ。いくらそれっぽい衣装を纏(まと)ったところで、それが『文化盗用』であることは否定しようがない。ソイツはただの盗人(ぬすっと)で詐欺師。地下アイドルの風上にも置けない悪党なのだ!」
あまりにも酷(ひど)い雑言(ぞうごん)
それに反論するため、モニ子が、そして敵対していたはずの『大砲(グレートキャノン)』までもが口を開こうとした。
だが、ちょうどそのタイミングで、
「ひ、ひいいい!」
奇怪な音声が、場を染め上げた。
それは、悲鳴。
渦中(かちゅう)の人物は、悲鳴を上げながら倒れ伏(ふ)し、まるで裁判官の慈悲を乞(こ)う罪人のように上げた両手の平をこすり合わせ、せわしなく慌(あわ)て始めたのだ。
話題の『草の民』風(ふう)の衣装にしても、今にも脱ぎ去ってしまいそうな勢いである。
そこへ、狐狩りのように更なる追撃が飛ぶ。
「『草の民』相手の商人、それも“文化研究のために訪(おとず)れた学者”という仮面(ロール)をつけた詐欺師で卑劣漢。それが、ソイツの家柄だ。大企業の下働き、細々(ほそぼそ)と新たな呪力(ミーム)を“発見”し、消費社会におけるささやかな刺激(スパイス)として供給する採集業者(ブルーワーカー)に過ぎぬ!ソイツのアイドルも音楽もその全ては犯罪!多数派(マジョリティ)としての特権性を利用した文化の掠奪(ぬすみ)という悪行に過ぎない!生き血をすすり、赤ん坊を食うかのような、虻(がいちゅう)や寄生虫のような所業こそがその生業(なりわい)だからその魅力の全ては借り物!実力など皆無なのだ!ソイツに続けられる努力など無く、その地下アイドルとしての姿も全て、偽物に過ぎないのだ!」
「そんな、なぜそんな酷(ひど)いことを!」
モニ子が必死に非難するが、あの女教師がそんな訴(うった)えに心を動かされるわけもない。
サウナ・ラクルラールは皮肉げに非難を続ける。
「それはな、空っぽなヤツがアイドルを名乗り、持て囃(はや)されようとしているのが見るに耐えないからだ!お前も、『上』の出身なら流行りの菓子(スイーツ)やイベントを良く見かけたことがあるのではないか?都会(アルセミット)に住んでいたなら、どこの民族や国家のものかよく分からない祭日に合わせて展開される、目新しい商業主義(キャンペーン)に出会(でくわ)したことぐらいはあるはずだ。それも何度も、うんざりするほどな。どこかの文化(ミーム)を“分かりやすく”売れる形に“加工”した成れの果て。零落し、簡便即席(インスタント)な消耗品として、日々の無聊(ヒマ)を慰(なぐさ)める大量消費のための“気軽な異文化体験”そう、それを売っているのがコイツなのさ。そもそも、四股名(げいめい)が『ハープアジア』だと?ふん、何がハープだ。ソイツがご自慢に見せびらかしているソレはな…」
しかし、そんな得意げな長広舌(ちょうこうぜつ)は、
「やめてくれでござる!自分で!自分で言わせて欲しいでござる!」
と、悲痛な叫(さけ)びによって遮(さえぎ)られた。
「先輩…」
後輩たちが見守る中、痩(や)せぎすの女は悲痛なままに語り出す。
その、名前の由縁(ゆえん)である楽器、馬の頭の飾りがついた竪琴(ハープ)についての由来語りを。
それはすなわち、彼女にとっての自己紹介でもあったのだ…