幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】 作:鳳卵
「拙者のこの竪琴(ハープ)は、『草の民』の伝統的な楽器ではありますが…拙者の民族的な実存(アイデンティティ)の証というわけではないのでござる」
「どういうことですか?」
「これは…ただの“おもちゃ”でござる。この楽器は、『草の民』の伝統楽器などではなく、拙者が適当に作っただけのモノに過ぎませぬ。そもそもこれは本当は…ごく最近になって作られた民族を問わぬ楽器(モノ)で、『草の民』イメージが付いたのも単なる後付けに過ぎませぬ。けれどそれでも、『草の民』に憧(あこが)れた拙者は、その文化(みりょく)を少しでも手元に置いておきたかった。本当に、ただそれだけなのでござる…」
彼女は俯(うつむ)き、床を見つめたまま語り続ける。
「そして確かに、拙者の実家は『地上』の単なる文化仕入業者(データしゅうしゅうのしたばたらき)。褒(ほ)められたものではないでござる。昔は、それこそ小さな子供の頃はそれが純粋な『善』だと考えていたものでござるけれど…それも成長してから見直してみれば、確かに先程(さきほど)言われた通り。それは盗賊(ぬすっと)や詐欺師の類(たぐい)に他ならなかったでござる。同じく憧れていた『上』も英雄たち、探索者や軍人たちがただの略奪者に過ぎなかったように…まあ、そもそも『地上』の『道徳(かちかん)』では、“奪われた方が悪い”“文化なんてより高い価値(かね)に変えた方が良いに決まってる。我々が有効活用しなければ腐るだけだ”と言った意見ばかりで——」
そこで彼女は、顔を上げ激しく首を振りながら語気を強めた。
「いや、拙者はそうは思わんでござるよ今は!ただ、子供の頃は周囲の意見に流されて、無配慮(ノンデリ)に振る舞ってしまったこともあったというだけでござる!」
それに対し、後輩からフォローが入る。
「それなら良いじゃないですか!今はもう後悔して…反省しているのでしょう?後はこれからの行い(ふるまい)にその反省点をこれからに活かせば(フィードバックしていけば)きっと『草の民』さんたちも許してくださるはずです。奪ったのなら、返せば良い。傷つけたなら癒しましょう。それも、先輩ただ一人でやる必要なんてありません。関わっている人たちは大勢居るでしょうし、今のクロウサーのトップ(そらつかい)はそうしたことにかなり理解があるはずです。なんと言っても、同じ地下アイドルなんですから。それに何より、私たちだって居ます。『ちゃんこ9』が一つになれば、きっとどんなことだって大丈夫ですよ」
しかし、なだめられたはずの先輩は、必死に首を振る。
その顔は苦悩に満ちていた。
そこへ、相変わらず屏風画面(モニター)の中に居座る女教師から揶揄(れいしょう)が飛ぶ。
「何をしようが、略奪は略奪だろう?『序列十二民族の共闘』などは、ただのスローガン(おためごかし)。奪った後ならなんとでも言える。むしろ、謝罪してその“贖罪(パフォーマンス)”自体を興行(エンタメ)にすれば二度美味(にどおい)しいと言うものだ。観光(サービス)業などそんなものに過ぎないのさ」
見かねたのか、そこへモニ子の批判(ツッコミ)が入る。
「そんなことは!そ、それに先生…いやラクルラール!あなたも奪うのでしょう!自分より弱い者を監禁洗脳して…そこから出来るだけ利益を搾(しぼ)り取っている!」
しかしこれはあっさりと、
「無論だ。弱者が群れて互いに奪い合ってどうする?ましてや、強者の寄生虫に成り下がってはな。私の略奪は違うぞ!強弱問わず全てを効率的に活用し、管理し、そして育成(きょういく)してやろう。全ての適性(しゅぞくち)を見抜き、相応(ふさわ)しい『地位(ポジション)』を与え、そして役立たずは迷わず追放(ダストシュート)する!」
即座の反撃で完全に無効化(クリア)されてしまう。
それも当然。
こうした思想(イデオロギー)をめぐる応答(リアクション)は、『上下』間の議論では定番のやりとり。
それは、中には仮想使い魔を使って永遠に論戦(ディベート)を続けている界隈(クラスタ)さえいるほどの、おなじみの言論風景なのだ。
一朝一夕で、それも政治も言論(じゃもん)にも素人な地下アイドルでは、そんな鉄火場(せんじょう)に割って入れるわけもない。
そして、そんな力量(れんど)の差をあのラクルラールが見逃すわけもなかった。
さらにそこへ、追い討ちがかかる。
「だが、それで良い。いや、それこそが良い!
素晴らしい!愚かな弱者こそ我が管理下にこそ相応しい人材だ!さあ学び働け!そしてこのラクルラールの偉大さを世界に広く知らしめるのだ!」
当然、その偉大(スパルタ)な学習環境(ろうごく)被害者から再度の批判が飛ぶ。
「そんな、わざわざ苦しむと分かっていて牢獄へ入りたがる人なんているわけがありません!」
だが、女教師はその当然に思える意見を嘲笑(あざわら)う。