幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】 作:鳳卵
「いいや、それは見識(インテリジェンス)が不足した意見だな。人間は管理しなければ堕落する。学生は、宿題無しに長期休み中も勉強の習慣を維持出来るか?作家は、締切のない趣味なら原稿をのびのびとあるいは高速で書き上げることが出来るか?否、どちらも不可能だ!」
そこでラクルラールは、さっと手を振り下ろして、周囲の配信窓において即席のアンケート調査や既存の公開情報で反論しかけていた者たちの映像を一気に薙(な)ぎ払い、そのまま偏見に満ちた暴論を押し通す。
そして彼女は、言い切った。
「適切な管理と支配こそが、ヒトの力を引き出す!」
大きく手を広げ、舞台女優のように派手な身振りで歩き回る。
「見よ、社会を!過酷な労働に思考力と体力と気力を奪われ、政治参加や哲学思索、芸術(そうさく)活動はおろか本を読む時間すら奪われた畜群の哀(あわ)れな姿を!」
その言葉に反応し、次々と周囲の配信枠の映像が切り替わる。
そこに映るは、惨めな人々(レ・ミゼラブル)。
帰宅後すぐに玄関で寝入る会社員、路地裏で吐く者、せっかく稼いだ生活費を賭博(ガチャ)で全て磨(す)ってしまい、質屋や高利貸しそして更なる社会の闇へと身を沈めて行く者たち。
中には、過酷な労役の合間を縫(ぬ)い、辛(かろ)うじてささやかな本棚や端末、帳面の前に辿(たど)り着く者もいるが…その全てはあるいはそのまま眠りこけ、あるいは広告宣伝に阻害されて時間を浪費し、何も得ること無く新しい労役の朝を迎えていく。
その目の前にあったはずの画面や帳面も全て空白(まっしろ)
対話と思索によって形成され社会をより良くするはずだった政治的な活動(アクション)は何も行われず、新しい物語に素晴らしい結末を与えられたはずの創作も、一行も記されることなく、夜明けと共にOSの自動更新(アップデート)で失われていった内容でさえ、その中身は雑多なお喋り(チャット)や形にならない思いつき(アイデア)ばかり。
そこに、有益な知識や魅力的な物語が綴(つづ)られることもない。
全ては疲れ果て、波打ち際(ぎわ)の塵芥(ゴミ)のように打ち捨てられていく。
それは、人々が自己の適切な制御(コントロール)を見失い、破滅と堕落へと沈没していく姿であった。
中央のモニ子と『大砲(グレートキャノン)』そして別枠の『ハープアジア』を除き、全ての窓枠がそのような情景へと塗り替えられていく。
そこへ、選挙中の政治家か天啓を受けた宗教家のように、女教師が高らかに叫(さけ)ぶ。
「ラクルラール学園の再建が成った暁(あかつき)には、もちろんこのままでは終わらない!」
右手を指差し、
「完全に管理された労働力!」
その先の配信窓に、一部の隙もなく労働に組み込まれた工員や会社員の姿が映る。
彼ら彼女らの口には栄養ドリンクがチューブで流し込まれ、その下半身は巨大なオムツと一体化した便器によって彫像(ちょうぞう)のように固められていた。
その“下水”は配管を通って地下で合流し、ラクルラール専属契約農場へ、そしてその作物は栄養ドリンクの製造工場へと還元されるのだ。
もはや、彼ら彼女らという『人財』が“浪費”されることなど有り得ない。
全ては完璧に持続可能な循環(エコロジー)へと還元され、あらゆるものがラクルラール経済(エコノミー)に生きた部品として組み込まれる。
次に女教師の左手が、別の配信窓を指す。
「完全に生産的で経済的な『芸術』!」
そこには、無数の管の中に操り人形(マリオネット)のように組み込まれた人々がいる。
彼ら彼女らは、それぞれ帳面(ノート)に画板(キャンバス)にそして個人用端末の画面へと向かい、各々(おのおの)異なる創作活動へと向かっている。
だが、その作品は完全に管理されていた。
次々と指示が飛ぶ。
「その“ジャンル”はもう流行らない。ただちに制作を中止せよ」
「“性癖”をこじらせ過ぎだ。そんな内容で創作序列(ランキング)上位を狙う?審査(コンテスト)に応募したい?巫山戯(ふざけ)るな!間口(ねらえるニーズ)が狭いにも程があるだろう。わざわざ性や暴力を出して危険な橋を渡るなら、もっと露悪を好む顧客(カモ)を狙(ねら)って派手に媚び(アピール)しなければ無意味だ!やるべきなのは、単に表面的な善悪を逆転させただけの幼稚(ちゅうにびょう)な逆張り!冒頭(スタート)だけ被害者『地位』(ぎゃくてんポジション)を獲得してからの一方的な暴力の行使と嗜虐欲(サディズム)の発露(ばくはつ)!ここまで描き続けてロクにバズら(人気が出)ないのでは、もはや呪力(エネルギー)と年齢(じかん)の無駄だ。ただちに矯正(せんのう)処理に入る!」
「その作品は、存在ごと抹消(デリート)しろ。理由?それだけ長期間続きが作れないのであれば、もはやそれは不良債権も同然、あるだけ評価と名声低下の原因にしかならん。何のために、有名ネット小説サイトに“三ヶ月更新停止”の表示が基礎(デフォルト)で用意されてると思っている。三ヶ月以上休載してから再開されるなど、まず有り得んからだ。増してや、半年以上休載が続いてからの再開や作者からの生存報告など有るわけない。休載を繰り返しながらの連載や完結に至ってはもはや奇跡そのもの。読者(ようぶん)が維持出来るわけがない!そんなものがあればこのサウナ・ラクルラールは迷いなく全面降伏し、全呪力と能力をもって利益度外視で民衆(バカども)に奉仕することをあの死女神(ババア)に誓っても良いくらいだ。そんなこと、絶対に有り得ないからな!分かったらとっとと作品を残らず削除して、新作に取り掛かれ!これからお前の経歴を改竄(ロンダリング)して、新人として片っ端から審査(コンテスト)に応募(シュート)するのだ!なあに、どこもやっていることだ!さあ分かったら"新人らしい"原稿をさっさと書き上げるのだ!もちろん完璧に流行りの定型(テンプレ)に乗っ取った売れるモノをな!」