幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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279話 ちゃんこ⑨のアイドル道(レビュー)⑮その2の115~116の途中まで

「か、勘違いするでない…で、ごわす。これは単に、岩肌種の技術(テクノロジィ)を見せて、お主らを威嚇(アピール)したに過ぎぬ。いきなり叩き潰してしまっては、納得して敗北(まけ)を受け入れられぬであろうからな」

 

隠れた優しさを誰もが見抜いていたけれど、それを振り切って先輩は言い切った。

 

「さあ、『ちゃんこ9』(われら)の間の問題は我らだけで、先輩と後輩だけでつけようぞ」と。

 

それに対する反応は、二者二様。

片方は、

 

「拙者は…拙者は…」

 

と迷い戸惑(とまど)い、もう一方は…

 

「私は、今出来ることをします!」

 

と宣言をする。

そして、全ての観衆(まなざし)が見守る中、後輩地下アイドルは歌い出した。

それは、仲間うちにとって馴染(なじ)みの歌。

『草の民』のイメージを持つ楽曲(せんりつ)であったのだ。

 

その行動(ふるまい)に対する反応は、二分(にぶん)された。

 

「いきなり何を!?」

 

驚愕(おどろき)と、

 

「むう…そう来るか…」

 

「…フン。安易な」

 

何かを納得したかのような、そんな受け止め方。

その二つだ。

もちろん、そうして度肝(どぎも)を抜かれている前者こそが、今回の“説得(マジカルアピール)”の対象たる地下アイドルメンバー、『アジアハープ』である。

 

ただし彼女は、その戸惑いを鎮(しず)めようがない。

目の前で、後輩がひたすら踊っていることに、どう対応していいか分からないのだ。

そこへ、驚きも冷めやらぬうちに、その手元に新たな反応が現れる。

 

それは光る四角——情報の表示枠。

 

「これは、メール…?」

 

その正体は、意外な、そして旧知の間からの伝言(メッセージ)であった。 

ただし、それを読みふけることは目の前の後輩が許さない。

彼女は、一所懸命(いっしょけんめい)に踊り歌いながら、その合間(MC)で必死に己(じぶん)の言葉を紡(つむ)ぎ、投げかける。

その相手は、もちろんたった今地下アイドルを卒業(やめ)ようとしているその先輩ーー『アジアハープ』その人だ。

重ねられる言葉自体は、安易で陳腐(チープ)

だが、そこに込められている熱意、そして好意(あいじょう)だけは本物だった。

『アジアハープ』には、それが分かる。

なぜなら、彼女は地下アイドル。

愛を投げかけられることも、そしてそれを返すことも、日常(こきゅう)のように自然に繰り返している、生態(いきもの)なのだから。

しかも、今回それをやっているのは、顔なじみ同じグループの後輩アイドルなのだ。

その日々の頑張(がんば)り、それを支える誠実さについては、指導を務めた自分が一番良く知っている。

 

そうだ。

あの時は…グループ加入当初は、彼女はまだまだ未熟だった。

基礎の基礎すら出来ておらず、ちびシューラの仮想特訓(レッスン)を受けてさえ、なおその挙動(ふるまい)は地下アイドルの基準すら満たすことが困難だったのだ。

とはいえ、駆け出しアイドルグループの『ちゃんこ9』にプロの訓練教官(トレーナー)を雇う余裕があるわけもない。

ゆえに、取れる手は唯一(ひとつ)だった。

自分が、この『アジアハープ』が1から音楽(ドレミ)を教えたのだ。

それは、ほんのひと月ほど、しかし永遠にも思えるほど昔の話。

だが、それは今まさに眼前に蘇る過去(いま)として、地下アイドルの目の前に現れていた。

目の前のささいな動作(ふるまい)が、聞き慣れたはずの歌声(こえ)が、どうしようも無く過去(あのとき)の文脈を再演させている。

届かぬ相手に思いを届け、越えられぬかも知れぬ断絶を乗り越えようと足掻(あが)くその姿。

たとえ、その歌と踊りがいかに未熟だろうと…この時、モニ子は間違いなくアイドルだった。

 

ただし、いかにその懸命さと真摯(オネスティ)さに心を撃たれたといっても、『アジアハープ』にも決して譲れぬものはある。

伊達や酔狂で、この四股名(ネーム)を名乗っているわけではないのだ。

だから彼女は、悩む心に鞭打(むちう)つように、ようやっと口を開く。

 

「どれだけ説得されても、もう私はあなたの、『ちゃんこ9(みんな)』のところにはいられません。だって私は偽物なのですよ。ただの浮かれたコスプレ観光客、草の民に憧れただけの中央(とかい)の凡人。それが、私です」

 

しかしそれには、また即座に反論が飛ぶ。

 

「そんなこと、言わないでください!」

 

更に、

 

「『ハープアジア』先輩!先輩は素晴らしいです!私ななは音楽のことはあまり分かりません。都会の室内(インドア)派だったので『草の民』のことはなおさら分からないです。けど、先輩の作った『草の民』ふうの音楽はとても素晴らしいと思いますし、それは『ちゃんこ9』の舞台(ステージ)でファン(みんな)を、そして『ちゃんこ9』(わたしたち)を笑顔にしてくれていました!確かに、先輩は悪いことをしたのかも、罪を犯(おか)してしまったのかもしれません。けれど同時に、あなたがいなければ生まれなかった笑顔もたくさんありました。それもまた、本当に確かなことです!」

 

 

 

 

 

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