幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】 作:鳳卵
続けて、畳みかけるように叫(さけ)ぶ。
「先輩!先輩はご自身が『偽物』だとおっしゃいますが…あの歌への、ご自身が作られた歌への愛まで『偽物』なのですか?私には、とてもそうは思えません!先輩には、確かに愛がありました!『草の民』の文化(ミーム)への、そして、その生み出し手たちへの愛が!私の耳は、それを聞いたのです!」
「そ、それは…」
そのままモニ子は、思わず口籠(くちご)もる相手に向け、今度は一転してしっとりと語る。
「先輩が『草の民』の方々と仲が良かった…いいえ、仲良くしたかったのは、本当のことではありませんか?それとも、それまで『嘘』だったのですか?」
そして、そこで語りは途絶える。
唐突に黙(だま)り込んだわけではない。
彼女はまだ、歌の途中だったのだから。
MC(語り)の時間は終わり、後輩は歌に集中せざるを得なくなった。
それだけのことだ。
けれどそれは、その猶予(モラトリアム)は、語りかけられた相手への思考の時間となり、その返事(レスポンス)を期待する無言の、弱いけれども確かな圧力として機能してもいた。
しかも、それは続く。
歌が終わればまた次の歌が、次々と続くその流れ(メドレー)
それには、また幾つもの語り(MC)の機会(じかん)が、小川(ながれ)に生(しょう)じる渦(うず)のように次々と現れ…しかし今度は埋められることなく、ぼっかりと大きく口を空(あ)けその存在感(いわかん)を存分に発揮。
そのまま過ぎ去ることで、時間の流れという織物(セトリ)に、独特の模様(つめあと)を残していく。
実質的な空白(ちんもく)
有効に消費されない発言権(ターン)。
そして何より、強制せずに相手の言葉を待つ姿勢。
それは、むしろ勢い良い語りかけや命令などより、遥(なる)かに強い“吸引力”を発揮(はっき)。
その"吸引"は、波打ち際の引き潮(しお)のように、空想物語(SF)における外部扉(エアロック)やブラックホールのように、否応(いやおう)なしに言葉を引き出していった。
「拙者…愛想笑いはいつも。めちゃくちゃ不味い案件の飲料や菓子を褒めるのも良くあるでござる。けれど…」
一旦は口ごもり、しかし彼女はそのまま言い切った。
「楽しかったことだけ、好きなこと、仲良くしたかったことだけは、本当でござる!」
それを耳にした後輩は勢いづき、重ねて問いを投げかける。
「先輩、あなたのお考えには…いいえ論理(ロジック)には、致命的な欠陥があります!それは…いえ、これからご卒業するのではお聞かせする時間はありませんね。忘れてください」
強烈な弾劾(ひはん)
その仄(ほの)めかしという、あまりに露骨(ろこつ)な技法(ノウハウ)
本来忌避(ほんらいきひ)されるはずのソレは…
「ぜ、ぜひ聞かせて欲しいでござる!」
しかし、対象があまりに生真面目(くそまじめ)であったがため、なんと有効(クリティカル)に作用。
相手に、半強制的に“聞く姿勢”を取らせることとなる。
それは話し手を勢いづかせ、
「都会人と『草の民』が仲良くなってはいけないのですか?民族の違い?立場?住んでいる地域や文化が違ったら、友だちになっちゃいけないって言うのですか?」
続けて、
「もう一度言います」
言葉を重ね。
「悪かったら、改めれば良い!悪かった点を、罪を数えてそれらを清算したら、またそこからやり直せば良いじゃないですか!」
一気に話し、
「さっき一緒に戦ってくださった『大砲(グレートキャノン)』先輩だって『地下』出身です!“外”や戦争のことは良く分かりませんが、同じ地下アイドル、それも一つのグループ内でぐらい、仲良くしたって良い…いや、仲良くしましょう!ねえ、『大砲』先輩!」
ついにその話題は外部まで及(およ)んだ。
ちなみに、話に出た当の本人はと言えば…
「ゴホッゴホン!な、なんのことかさっぱり分かりませ…分からないでごわすな!ゴハハハハ…」
咳払いと笑いで、無理矢理誤魔化そうとしていた。
そうこうしているうちに、間奏(MC)タイムは終わり、また歌が再開されたが…そこには、僅(わず)かだが確実な変化がもたらされていた。
咳払いと笑いで、無理矢理誤魔化そうとしていた。
そうこうしているうちに、間奏(MC)タイムは終わり、また歌が再開されたが…そこには、僅(わず)かだが確実な変化がもたらされていた。
彼女たちの立つ光の土俵(ステージ)は、新たな音で満たされていたのだ。
まず、メインに奏(かなで)られているのが、騒がしくどこか辿々(たどたど)しい舞踏(ステップ)
どうしても涙腺を刺激されてしまうような、懐かしい歌。
それは先程の共闘とは違ってただ一人によるものだったけれど…三人が揃(そろ)って表現(アピール)を重ねていた先程にも、絶対に負けていないと言い切れるほどの力強さを感じさせるものだった。