幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】 作:鳳卵
その有り様は、比較的“上手く命脈を繋いだ”カーズガンでさえ、『草の民』関連の話題(スレッド/クラスタ)では常に批判意見が絶えないことから、推して知るべしだろう。
ましてや、それ以外の“大魔将攻略という炉に焚(く)べられ続けた”『英雄』たちについては、言うまでもない。
クロウサー家でも有力な立場にいたオリヴィア・エジーメ・クロウサーなどは
、その他を寄せ付けぬ高貴な美しさと誇り高さから、今でも惜(お)しまれ讃(たた)えられ、何かと色物(ギャグキャラクター)や幼児向け人気もの扱いされがちなリーナと今でもまだ比べられて理想化され続けているほどだ。
まあ、その話はひとまず置いておこう。
第五階層はやがて必ずその問題に直面するだろうが、それは今から少し先のこと。
話すべきタイミングは、それこそ祝祭が訪れ、アズーリアや守護の九槍のゲストたちがこの地でライブに興じた後ぐらいまで先延(さきの)ばししていても良いはずだ。
だって、幾多の災厄を乗り越えた第五階層(このばしょ)が、それまでにあっさり滅びたりはしないだろうから。
つまるところここで覚えておくべきなのは、『草の民』を思う地下アイドルと志(こころざし)や利害を同じくしたり、手を取り合える相手は実はかなり多い、と言うこと。
『草の民』愛好者(ファン)の女は、ここで初めてそれを知ったのだ。
だから、やせぎすの女は前を向く。
その顔は、下方に展開された画面によって照らされ、不可思議な輝きを放っていた。
(いくら忠告されてもなかなかやめられない)『肉感演出』系の白粉(ファンデ)に光が映り、ぼやけた文字列が奇妙な紋章(タトゥー)となってその顔を彩(いろど)る。
直接見てはいなくても、その内容はしっかりと彼女の、地下アイドルの心に染(し)み渡っていた。
《頑張って下さいあなたならやれます!》
《短い間だったが、お主の話は『杖』的対話(チャット)で存分に聞いた。後は、それを簡潔に目の前の相手にぶつけるだけでごわす》
《一度断ち切り捨て去ったものが、また取り戻せるとは限りません。でも、まだ間に合う。こんな言い方は腹立たしいかもしれない。けど、それでもあえて言います。あなたは恵まれています。謝罪の対象が生きていて連絡を取ることが可能であり、対面して話し合うことさえ出来るのですから。今までの自分がみじめに感じるなら、なおさらこれからは己をしっかりと装(よそお)い正(ただ)すべきです。私(わたくし)は真摯(しんし)さと誠実こそが、何よりも美しく豪華(ゴージャス)な装いだと信じます。たとえ、あなたがこれからアイドルを辞(や)めるとしても、そのゴージャスさだけは絶対に忘れないでくださいね》
《これでもう、伝えるべきことは全て伝え、聞くべきことは全て聞いたはず。ならば、やるべきことはお分かりでしょう?あなたは、私のような恥知らずの裏切り者ではないのですから》
そして最後に、今まで沈黙を守ってきたこの居場所(ちゃんこ9)の頂点から、一言だけの伝言が届く。
《お主は、何がしたい?》
「拙者は、拙者は…」
その答えは、既(すで)に決まっていた。
視界の中で、白馬シューラがその蹄(ひずめ)であるモノを指…もとい蹄差(ひずめさ)す。
それは、視界画面(アイヴィジョン)の中に形成された、さらに小さな脚付き小画面(こくばん)
地下アイドルは、その知識や思考と記(しる)された内容が相違(そうい)無いことを確認し、深くうなずく。
そして彼女は機会(タイミング)を図(はか)り、大きく深呼吸をして…欠落を埋めた。
その場に存在した欠落、それは音。
響き渡り、繰り返され続けた『草の民』イメージの楽曲は、実のところ本来の形から欠けているところがあった。
技量や機材、楽器の問題ではない。
地下アイドルが、ひたすら単独歌舞(ソロライブ)を繰り広げる光の土俵(ステージ)
そこに欠けていたのは、ただ一つ。
「見渡すかぎ〜りの、ちへ〜い〜せん〜♪」
先輩地下アイドルの、歌声だけであった。
そう、後輩アイドルは、幾度も同じ曲を、それも同じグループの先輩地下アイドルが作った曲ばかりを、リピートしていた。
そして、彼女が知っていて歌える以上、当然その曲は『ちゃんこ9』というアイドルグループのためのものに他ならない。
つまりは、グループ曲である。
にも関わらず、モニ子はそれを単独(ソロ)で歌っていたわけだが…そこには、一つの欠落が存在した。
それこそが、楽曲のある特定部位(パート)
後輩アイドルは、多くの歌唱担当(パート)を一人で兼(か)ねておきながら、それでもなお“ただ一人”の担当部分だけは、ガンとして歌わず、そこだけ沈黙にて強引に進行していたのだ。
それが、本来誰のための部位であったか、誰の参加(うた)を待ち受けていたのか…それはもう、語るまでもないことであろう。