幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】 作:鳳卵
「「むげんの〜そ〜らに〜し〜ろいあみ〜♪」」
こうして欠落は補填(ほてん)され、今こそ二人の合唱が実現する。
そして、歌声と同時にアイドルたちの周囲が、光の土俵を包んでいた暗闇が、新しい情景(ヴィジョン)へと切り替わる。
それらは、新たな世界へと染め上げられていく。
その展開は、最初は先輩から始まり、次にそれを後輩が広げていく。
鮮明な印象(イメージ)はあっても、それを展開する能力を持たない『三本足の民』の念写画像を、『邪視』や空想の展開を得意とする『空の民』が大きく拡散し、(リアルタイムで提供される)資料の助けを得ながら、より詳細で雄大なものに整えていっているのだ。
それはまさに、異民族が手を取り合うことて初めて成立する、共同作業の表現(パフォーマンス)だった。
そして、その共同性は地下アイドルだけに止(とど)まらない。
この練習試合(エキシビジョン)もまた、リアルタイムで配信されているのだ。
つまり、この演技(ステージ)は世界に向かって開かれている。
気づけば合唱には、配信画面の中の観客も加わり、その文章(コメント)の歌詞の無数の流れも、映像として重なっていく。
更に、二人の、そして視聴者(かんきゃく)たちのイメージが重なることで、背景はより鮮明になり、次々と新しい要素が加わっていった。
空は無限に広く、それに接する草原もまた同じくらい広く、果てしない。
空には、真白い雲が穴だらけの姿で浮いている。
それはまるで、羊の毛で編んだ網のよう。
『草の民』は、あれを『網脂雲』と呼ぶと言う。
それは、草原のご馳走(ちそう)であり、楽しみが少ない過酷な遊牧生活の中でも、生活を豊かに彩(いろど)るひとつなのだそうだ。
そんな情報なども、あちこちのちびシューラやその力を借りたコメントによって補足され、更に次々と関連解説や情景に縁深い思い出などが加えられることで、情景自体がより強化されていく。
また、次々と印章画像(スタンプ)が飛び交い、贈り物(ギフト)が積み上げられ、近いが違う文化圏の武将や英雄、更に『草の民』ふうにアレンジされた有名人の幻像(ヴィジョン)まで加わっては消され、場はどんどんと混沌(カオス)さと賑やかさを増(ま)していった。
念写画像はあくまで術師(さつえいしゃ)のイメージであり、二次的な著作物に過ぎない。
ゆえに、それは必ずしも『実物』とは対応しておらず、また事後的に、如何様(いかよう)にもその内実(ないじつ)は変わり得る。
『シナモリアキラ』にも、ナルシストなヒモから自称殺人鬼、変身ヒーローや地下アイドル、借金を抱えた浮気性で面倒くさい暴走全裸男まで幅があるように…念写もまた多くのイメージや情報を追加されることによって、いくらでも再加工されて変わっていくのである。
それはまるで、思い出のように。
そんな中、いつの間にか、馬の頭の装飾が付いたハープが一人でに浮かび上がり、伴奏(ばんそう)を奏(かな)で始める。
それこそは、やせぎすの地下アイドルの『三本足』
そう、先輩アイドルは『三本足の民』であり、馬を『三本足』とする『草の民』とは、実はほぼ同じ民族であったのだ。
その楽曲は、自然と混沌とした情景の中心となり、あらゆる幻像を一つの美しさへ、秩序へと纏(まと)め上げていった。
まるで、天を貫く見えない槍のように。
それは全ての中心であり、それを『中央』足(た)らしめていたのは、一人のやせぎすの女だった。
女は、心に広い空と果てしない草原を、そして何よりも『草の民』とその文化(ミーム)への愛を持つ地下アイドル。
その心こそが、音楽を介(かい)してこの場を一つに纏め、美しい新たな情景(イメージ)、新しい思い出として成立させていた。
だから、彼女の名を人は『アジアハープ』と呼ぶのである。
そんな地下アイドルは、歌い終えると同時に動き出した。
大きく息を吸い、一息に言い放つ。
「モニ子殿!三つほど…言わせて欲しいでござる!」
「はっ、はい、なんでしょう!」
当然ながら、こちらも一曲歌い終わったところだったモニ子は、あわてつつも先輩と向かい合う。
その顔には喜びと恐怖が半々で、そこに若干(じゃっかん)の戸惑(とまど)いが入り混じる。
先輩から後輩へ言い渡すこと。
果たしてそれは何か。
緊張が満ちる場に、法廷のように言葉(せんこく)が流れる。
それは、まず第一に。
「352点でござる」
不可思議な発言。
その顔には喜びと恐怖が半々で、そこに若干(じゃっかん)の戸惑(とまど)いが入り混じる。
「は、はい?」
戸惑(とまど)う後輩を、真実の開示が襲(おそ)う。
「モニ子殿が、さっきまでの歌とダンスで…間違えた回数(ポイント)でござるよ!」
「え、ええ〜」
「ええ〜じゃないでござる!一体どうやったら、たった数回の繰り返しであそこまで間違えられるのでござるか!?今度からは練習(レッスン)を更に厳しくしていくでござるから、覚悟しておくでござるよ!」