幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】 作:鳳卵
再び、闇を光が切り抜く。
まるで紙細工の月のように、ぽっかりと空(あ)いた光の穴は、今回は三つ存在した。
そのうち一つは離れたところに存在し、後の二つは一辺を重ならせて団子のようにくっついている。
この位置関係は、穴の上に立つ人々相互の関係性、すなわちその立場を明白に物語っていた。
言語化するならば、それすなわち。
「今回の死合(たいバン)テーマは“真剣勝負(セメント)”!形式は、変形プロレス!」
光土俵(ぶたい)の上で宣言したのは、背中を覆(おお)う金髪縦ロールが印象的な美女であった。
その肉体は、凄(すさ)まじく整(ととの)っている。
単に女性として形態(スタイル)が良いというだけでなく、一分の隙(すき)もないほど筋肉で埋め尽くされていたのだ。
流石(さすが)に、女戦士として有名な『痕跡神話』のアルマ氏にこそ及(およ)ばないが、身長も高い。
その姿は、まるで筋肉愛好家が削(けず)り出した彫刻のようだ。
彼女もまた『ちゃんこ9』の制服(いっちょうら)
つまり、機巧廻しにグラップリングパンツとレオタードが一体になった独特の衣装——『ゾーイ・アキラドレス』を着用しているのだが、同じ衣装でも肉襦袢(ボディースーツ)の上にこれを着込んでいる後輩(モニ子)とでは、与える印象は大きく異なっていた。
衣装(レオタード)を内部から押し上げる筋肉が、まるで山脈の如(ごと)き堅牢(けんろう)さを感じさせるのだ。
頭の天辺(てっぺん)から鋭い爪先(つまさき)を誇る編み上げブーツまで、それはまさに戦闘のためにのみ存在する姿。
鍛え上げられた肉体と“武装”という意味(ミーム)を強烈に表現(アピール)している衣装(ドレス)であった。
そんな彼女は、続けて宣言する。
「お互いに回想(アピール)を舌戦(マイクパフォーマンス)でぶつけあってから、肉体と呪術のぶつかり合いで決着(ケリ)をつけましょう!この場合の賭け金(ベッド)は、私(わたくし)たちの『卒業』!モニ子さんには、私たちの残留を賭けて戦い、同時にそれによってご自身の偶像力(アイドルパワー)を証明してもらいます!お覚悟はよろしくて?」
「はい、はい…ええーー!」
途中まで連続でうなづいていたモニ子は、“賭け金”の話のあたりで違和感にぶつかって驚愕(びっくり)した。
慌(あわ)てふためく後輩に対し、光団子のもう片方に立つ先輩が、左斜(ひだりなな)めから声をかける。
「モニ子さん、私たちも先程の対決を見て感銘を受けました。あなたがたの真摯(しんし)な姿勢によって我が身を振り返ったのです。よって今回は、お互いの“アイドルとしての資格”そして『覚悟』を検証することに、この練習試合(エキシビジョン)を使わせていただきたいのです。我儘(わがまま)を押し付けてしまって本当に申し訳ありません。けれど——」
そこで兎耳の——と言うか兎そのものの——先輩は、半円眼鏡のブリッジ部分をもふもふした中指で持ち上げ、それをキラリと光らせる。
そして改めて宣言し——
「地下アイドルには、どうしても退(ひ)けない時が「ありますのよ!それがゴージャスですわ!」…」
——ようとして、"妹"に割り込まれた。
「『ノーブル』さん、まだ私は話し終えてませんよ?」
「ごごご、ごめんなさいませ『エルダー』お姉様!この非礼はどんなことをしてでも…!ハッ!そうですわ!今こそあのシナモリアキラ的な自裁手段『切腹』を…!」
なにやら暴走し始めた縦ロールを、兎が叱(しか)りつける。
「おやめなさい。あのような常時発狂魔女の物真似などすれば、あなたの残り少ない正気まで失われてしまいます。そうなれば、今度こそ統括(ラプンシエル)の不興を買って、瞬時に地下アイドル空間から追放されてしまいかねませんよ。偶像(アイドル)の有終の美を飾るべき『卒業』が、そんな形で本当に良いとお思いですか?」
「は、はい!申し訳ありません!『切腹』は絶対に止(や)めます!引退試合をゴージャスに終えられないのは、絶対に嫌ですわ!竜(とうかつ)に睨まれるのも、同じくらい嫌ですけど…」
「よろしい。ただでさえ我々(SNA333)は常に『シナモリアキラ』線引(ライン)判定の線上にあるのですから、日頃から行いは重々(じゅうじゅう)に慎(つつし)まねばなりません。一度“非(NOT)地下アイドル”判定を下(くだ)されれば即時追放(あかバン)ですからね!お気をつけなさい!」
はは〜、と平伏する“妹”を見下ろしながら、“お姉様”はこっそりと呟(つぶや)く。
「(まあ、判定する御本人(ラプンシエル)も『シナモリアキラ』なんで、最初から緩緩(ガバガバ)なんですけどね、この判定。そもそも、『地上』の序列やモニ子さん憧(あこ)がれの『杖』嫌いの『聖別』、更に言うなら例の第七位の“区切り”にしたところであらゆる基準(ぶんべつ)は所詮(しょせん)…おっと脱線(コースアウト)してしまいます。話を戻さないといけませんね。)」