幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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289話 太陽と月の挑戦③ その2の121~122の途中まで

見ればその当の自己愛(ナルシスト)さんは、何やらうんうんうなりながら端末をいじっているご様子。

どうやら彼女は、過去回想説明の構成を練り直しているようだ。

 

そこで後輩は、話題を変えた。

 

「そのハリセンは、栞刀!先輩はやっぱりあの『栞剣士』なんですね!」

 

空気を転換しようという試み。

果たしてそれは、

 

「…そんな立派なものではありませんよ。大昔(あのころ)は、こんなものは月の近衛では基本装備の一つでしかありませんでした。これは単に、私の罪の証と言うだけのことです」

 

成功した。

人々(しちょうしゃ)の関心は、兎力士が持つ一振りの紙剣(ハリセン)に集中する。

 

それは、確かに紙でありながら禍々しく光り、たった今使われたかのような血塗られた姿を見せる刀身。

 

「この『呪竜刀』は、ヴァージル様の『異戮(ゼノサイド)』を限定的に模倣(コピー)した特別製。あらゆるものの存在を阻害(そがい)し、万物(ばんぶつ)を遮断(カットオフ)する呪いです。どんな術式も、その構文(ロジック)を切断されれば、機能しなくなる…実際に発現が可能なのはほぼ一瞬だけですが、迎撃して打ち消すにはそれで十分なのですよ。まあ、さっきは"鞘"に入れて殴ったので特にそんな効果はなかったのですが」

 

「私そんなものでツッコミを入れられてたのですか!?」

 

と、当然上がる驚愕の声をよそに、

 

「消去呪文の居合い抜きですか!」

 

感嘆する後輩(モニこ)

それを前に、先輩もまた何事もなかったかのように返答をする。

 

「ごくありきたりな手法に過ぎませんよ。生前の私ではこれほどの出力や精度での迎撃は到底(とうてい)望めませんでした。全ては『シナモリアキラ』のおかげですね」

 

「そうか、ヴァージルさんの、つまり六王の武技は…!」

 

「そう、サイバーカラテの源流。すなわち、これもまた古代サイバーカラテの正統な形態の一つなのです」

 

サイバーカラテ使い(シナモリアキラ)アイドルらしい会話が交(か)わされていく。

 

そんな最中(さなか)、兎力士が急にその耳を強く動かした。

 

その理由は、

 

「おや、準備が整ったようです。モニ子さん、申し訳ありませんが…」

 

と、言うことであった。

それゆえ、

 

「はい、ノーブル先輩のお話を伺(うかが)います!」

 

そこで話題は、金髪縦ロール力士(アイドル)の回想へと戻ることとなったのだ。

 

*

 

リング上に浮かぶ画面に、生成されたものらしき住宅の映像が浮かぶ。

それを頭上に仰(あお)ぎながら、『ノーブル』の話は再開された。

 

「まずは…そうですわね。やはり生(お)い立ちからでしょうか。私は、『地下』のとある公共住宅(アパート)で生まれ育ちました。…ただ、その後ちょっと色々ありましたので、その住宅があった国の国名については伏せさせていただきますわね。私たち(シナモリアキラ)の『地下』での立場は、わりと微妙でもありますし」

 

そこで、リングから一本の手が挙(あ)げられた。

 

「あの、質問良いですか?」

 

「はい、なんなりと。モニ子さん、何が知りたいですか?」

 

「時系列順の回想なら、前世のお話から始められるのではないのですか?いえ、構成に悩んでおいでのようだったので、少しそのあたりが気になりまして…」

 

言い過ぎてしまったと感じているのか、口ごもる後輩。

しかしそれは、

 

「素晴らしいご質問ですね!モニ子さん、あなたの疑問は正しいです!」

 

と、逆に褒(ほ)められる。

今度の発言者は、兎の方の先輩だ。

 

いつの間にかリングに降りていた彼女は、

 

「ただ、『前世』の問題は『歴史』と同じでちょっと面倒(めんどう)なのですよ。すみません、まずはしっかり確定されている『生前』の話から話させてやってください。この愚姉(ぐし)からもお願いします」

 

と頼み込んでくる。

 

「は、はい。面倒、なんですか?」

 

「まあ、その辺(あた)りはそのうち“愚妹(ぐまい)”の話に出てくるでしょう。さあ、続きをお話なさいな、ノーブル」

 

「ご支援ありがとうございますわお姉様!」

 

そういった次第(しだい)で、金髪縦ロールレスラーはマイクを握り、語りを再開する。

 

「話を戻しますと、私の父母はどちらも『地上』からの難民でした。『大断絶』、かの天地の分断の後になってから、思想を理由として所属を変えた人々(クチ)ですわね。そういったことは珍しいですが、全く無いわけではありません」

 

「大変だったのですね」

 

「ええ、とは言え当然ながら私には『地上(うえ)』の記憶はありません。教師だったという父の苦難の逃避行も、貴族の末席からその席を捨てて、婚約者と新天地(りそうきょう)を目指したと言う母の思い出語りも、その子供であり難民二世でしかない私にとっては、どうしても実感を得られない、他人事でしかありませんでしたわ…」

 

「そうなんですか…ええと、でもご家族は『下』で一緒に居られたんですよね!それだけでも良かったです!ほら、難民って避難するだけでも大変だって聞きますし!」

 

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