幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】 作:鳳卵
それに解説が加えられて曰く。
「サジェは、ちょうどその頃から見始めた前世の夢でうなされる私を、いつも慰めてくださいましたし、私もまた、お父さんの仕事が上手くいかないと言う相手を慰めました。二人の間には、固い友情が育(はぐく)まれていたのです」
そこで後輩が質問を挟む。
「前世の夢、ですか?」
「ええ、当時の私にとってはとても怖い夢でしたわ。と言っても、基本的には高いところから赤い目の竜に見下ろされるだけの夢でしか無かったのですが。それでも、その大きな牙や鋭い爪が今にも私に襲い掛かってきそうで、それはとても辛(つら)い経験でした。しかも、それだけではありません。ある夜の夢では、竜が自分で連れてきた召使いたちを叩き潰して、バラバラにしてしまった光景が見えたこともありました。そして、そんな残酷な光景を作るには、彼女が腕をほんの一振りするだけで充分だったのです。硬くて重そうな鎧を着た騎士たちも、豪華な刺繍のローブを纏(まと)った呪術師たちも、それだけでひとたまりもありませんでしたわ。その上、竜は言うのです。自分の財産(モノ)をどう扱ったって自分の自由。ちょうど言うことを聞かない召使いがいて、『人形操り』の術を学ぶのに“使える”と思ったから処分しただけだ、と。夢の中の私は、死体を人形代わりに使う彼女に術を教えながら、ガタガタと震える歯を止められないでいたのです…」
「お、恐ろしい夢ですね…」
思わずつられて震えてしまった後輩は、しかし配信画面に流れる雑談(コメント)を流し見て、ふと冷静になる。
「あれ?でもその話、乱髪(ルバーブ)さんのお話と随分(ずいぶん)違うような…?そちらが真実だったと言うことでしょうか?」
問いかけに、縦ロールレスラーアイドルは穏(おだ)やかに微笑(ほほえ)む。
「モニ子さんは、どうやら『有名人の転生者』についてあまりご存知(ぞんじ)ないようですね。そのことについて理解するには、“転生認定”についてお話する必要がありますわ。お姉様、お願いしてよろしいですか?」
「準備なら、もう出来てますよ。はいどうぞ」
「流石(さすが)はお姉様ですわ!モニ子さん、皆様、こちらをご覧くださいませ」
急な展開に後輩が目を白黒させる中、金髪縦ロール美女は、姉兎の用意した画面を指し示す。
その真白い画面には左端に簡素な少女の絵が描かれており、彼女はその右の占い師らしき人物の絵に、向き合っている。
美女は、指差しで少女の絵に“前世の夢を見た人”という表示(タグ)をつけると、更にその背後にもこもこした吹き出しを置き、その中に先程(さきほど)の竜の夢の絵を入れた。
それに加え、占い師と少女の間に互いへ向かう二つの矢印を配置して…どうやらそれで準備を終えたらしく、ノーブルはそこから絵についての解説を始めたのだ。
「『上』ではどうか分かりませんが、『下』では難民に対し、充分なメンタルケアが行われるように、常に配慮(はいりょ)が行われています。そしてそれは当然、難民当人だけでなくその子供や家族、同居人なども対象となるのですわ。家庭における問題は、当然その構成員(メンバー)全員に影響を与えますからね。…ここまでで分からないところはありますか?疑問点などがあれば、どんなことでも迷わずにおっしゃって下さいね」
「は、はい!今のところ特にありません!」
返事には、確認の微笑(ほほえ)みが返された。
「続けます。そうした相談の対象となるうちには、もちろん夢の話も含まれています。夢には本人の悩みなどが直接反映されますし、『児童防御措置(チャイルドガード)』をすり抜けて悪質な夢魔(はんざいしゃ)が干渉してきている恐れもあります。あ、もちろん個人のプライバシーにも配慮はされてますよ。相談を受けた段階とそれを報告する段階で“共有すべき情報”と“その段階でストップさせて守るべき情報”は、それぞれ明確に定義され配慮されています」
「なるほど…」
「そしてそれはもちろん、『前世の夢』の場合も変わりません。難民二世の私の場合は、担当官や民間ボランティアさんでしたが、一般の場合も『前世の夢』を見た場合は、民間の夢占い師や地区町村の係員さんなどが相談に乗ってくれますし、そこから各自治体の担当部署を通じて、世界的な——この場合、あくまで『地下』、鈴国圏全体と言う意味ですが——“認定”を得たり、あるいは当事者にとって最善の形に落ち着くように、対応が続けられていくのですわ」
「つまり、『下』では相談さえすれば、『前世』について世界的な“認定”?が得られるのですか?」
「ええ、その通りですわ。このような仕組み(システム)によって、私はディルトーワ王の転生者としての自分を意識するようになったのです。ディルトーワ界隈の認定では24人めになりますね」
「にじゅうよにんめ!?」
驚く後輩に、先輩はまたもにこやかに笑いかける。