幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第30話(25~26の途中まで)

地下アイドルは、相手の弱点を見極めることに全神経を集中させた。

青い鳥(ペリュトン)の暗闇適性と吸血鬼(ヴァンパイア)の暗視能力。

己に流れる『夜の民』の血に備わった特性をフル活用して観察すれば、きっと何かが分かるはず!

 

眼の前の"女"は、何であるか。

 

悪鬼、邪神、羅刹(ラークシャサ)、夜叉(ヤクシニー)、そして悪魔(マーラ)

どれとも似ていて、どれとも違う。

 

それは、この世界(ゼオーティア)と別の世界(アナザー・ワールド)、そのどちらにも居そうでいて、その実どちらにも居ない怪物(モノ)

 

ラリスキャニアの目前にて、その威を示す闇の演者(スタァ)。

悪魔(アキラ)の左手(めがみ)

 

その正体は、"強さのカタチ"とは、一体何か?

 

それは、大いなる闇の樹。

敵を見据える地下アイドルにとって、五指を広げ、天を掴むかのように身を開いているその姿は、まるで処刑場に生えた巨大な樹木のように思えた。

 

(死体を養分に育つ、"首吊りの木"……だが、なぜそんなイメージが?)

 

ラリスキャニアは、密かに首をひねった。

 

たとえ感情(こころ)には理由がないとしても、印象まではそうではない。

印象とは、外界の情報から生成されるものだ。

だから、"彼女"には、そんな印象を抱かせた理由が、何らかの特徴があるはずだ。

 

(主従が逆転して、左手に支配された悪魔(アキラ)触手が、まるで死体のようだからか?)

 

ラリスキャニアは、考え込む。

 

あらゆる優れたアイドルには、いや、優れたモノには、必ず何らかの長所がある。

そして、それは同時に、そのモノの最大の弱点でもあるのだ。

 

姉妹アイドルユニットが、"義理の妹的存在"の出現によって亀裂が入ったように、福祉政策で結びついた主従が、慈善行為への共感で易きに流されそうになったように。

 

あらゆる長所は、短所と紙一重どころか、多くの場合、表裏一体なのである。

 

(だから、あるはずなんだ……"見える"はずなんだ、あの左手(もとめがみ)の長所が、そして弱点が!)

 

だからこそ、それを見極め、得意の『呪文』(べんぜつ)によって突いてきた。

それこそが、ラリスキャニアの最大の戦法であり、それによって彼女は勝利してきたのだ。

 

あるいは、その情報から相手の強大さを妄想(イメージ)する能力こそが、逆に恐怖を創り出し、最近の彼女の足を引っ張っていたのかもしれないが……それはそれ、これはこれである。

今こそ、彼女の、その妄想(じゃし)力が必要とされる時なのだ!

 

(そうか、独りでに動き回り、主導権を奪う肉体の一部……それは、主人(あるじ)を動かぬ死体(ボディ)に変えて、自分だけ活き活きと動き回る寄生の樹木と言える……)

(……だが、それはおかしい。おかしくなくちゃならないんだ)

 

ラリスキャニアは、そこに違和感を覚えた。

 

だが、具体的にそれは何なのだ?

それがわからない限り、この窮地を打開することは出来ない……!

違和感の正体は……

 

(なんで、それで安定してる?それでなぜ『小鬼』にならないんだ?)

そう、それだ。

そこがおかしいのだ。

 

(だとすると、アレは悪魔触手(シナモリアキラ)も望んでいる形態なのか?)

(野獣を望む獲物、加害者を望む被害者、あるいは……?そんなものあるわけが……)

 

そう、自分から苦痛を望む悪魔(シナモリアキラ)などいるわけが無いのだ……自分から苦痛を、刑罰を望む罪人なんて……

 

ん?苦痛を?)

 

だが、そこに

 

(そこに、例外があるとするならば。それは……)

 

その"解答"は、気づけば知らずして声に出ていた。

 

「まるで罰を望んでいるかのようだな。監獄遊戯(プレイ)、いや地獄ごっこか?ずいぶんとお熱いことだ。それで良いのか?」

 

実際に形になってみると、それは。

……どう聞いても、ただの罵倒であった。

 

それを聞いて、"首吊りの樹"悪魔(アキラ)の左手(めがみ)が、にっこりと笑った。

 

「なるほど、死にたいのですね」

 

「あ」

 

「叶えましょうその望み」

「ゲェッ!い、いや、そんなつもりでは!」

 

圧倒的な強敵を相手に、勝算もなしに罵倒を浴びせてしまったラリスキャニア。

果たして彼女の命運や、如何に!?

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