幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第31話(26の途中まで)

うかつな発言をしてしまった地下アイドル。

そんな彼女に制裁を与えるべく、悪魔(アキラ)の左手(まじょ)は、静かに動き出した。

 

それは静かに、そしてゆっくり、ゆっくりと近づいてくる……!

 

それに対して、ラリスキャニアは勇気を振り絞って叫んだ。

 

「前回の舞台、さっきの中断、そしてこれで三度目!猫の国で言う『三度目の正直』だ!世界各地に伝わる聖なる数『三』にちなんで、ここで決着をつけてやる!」

 

だが、左手(まじょ)は、それを冷酷に受け流す。

 

「『三』なんて……一対一の『二』には負けます。いいえ、ただ『一』つだけ確保すること、『一』人による支配こそ、文字通り唯一にして絶対。『三』なんて、失敗が運命づけられた不要な数字です」

 

「そうなのかもしれないね。貴方が、そんな世界に、心底から満足しているのであれば」

「……」

 

左手触手(ディスペータ)は、このラリスキャニアの『呪文』(あおり)を無視。

無言で本体(アキラ)触手を引きずりながら、海牛(シースラッグ)のようにゆっくりと、しかし着実に近づいてくる。

 

絶体絶命の窮地(ピンチ)!

今こそ、ラリスキャニアの真価が試される時である!

 

だが、だが、それなのに……

たった今、タンカを切ったばかりの地下アイドルはといえば……

 

「も、もうだめだー」

 

なぜか、唐突に身を縮こまらせていた。

 

「どうしようどうしようどうしようどうしよう……」

 

突然うずくまった地下アイドルは、小声でつぶやき続ける。

 

「こんなのボクのキャラじゃないよう……こわいよう」

 

さらに、

 

「こ、この!くらえ!」

 

先程までの気迫はどこへいったのか、懐から次々と物を投げつける。

 

「この!このー!」

 

厄介ファンからの手紙やプレゼント、作成失敗した舞台用の小道具などが、次々と左手(まじょ)に襲いかかり、悪臭で、家虎(イエッタイガー)の爆音で、回転刃で、仕込まれていた感情操作呪術で、【炸撃】の爆発で襲いかかるが……

 

左手(まじょ)は、その全てをひょいひょいとかわし、あるいは軽く弾くだけで防ぎきった。

 

「もう投げ捨てるガラクタのタネは尽きましたか?」

 

ファンレターから実体化した生霊が燃え上がりながら抱きつこうとするのを流し目で見ただけで氷漬けにしながら、問いかける。

それは、最後通牒であった。

 

「ひっ!」

「私、ガラクタって嫌いなんですよね。邪魔だし、ふとしたはずみでぶつかるとケガしちゃいますし、それに何より、嫌な過去を思い出させられて、なんだかイライラしちゃいますし☆」

 

哀れ、地下アイドルはここで敗れ、その"興行"は、失敗してしまうのか……!

 

ラリスキャニアが、これまでになく追い詰められた、ちょうどその時!

 

「そこまでだ!」

 

カカッ!

 

声とともに、投げつけられたのは……一輪の薔薇!

しかも、それだけでは終わらない!

 

「とうっ!」

「誰もが私を知っている……」

「天に輝く九つ星……」

「この世に悪のある限り…」

「俺は…悪にとっての悪…」

「イヤッッハー!とにかく悪党をブチのめしたいぜ!」

 

天井から、部屋の隅から、床下から…口上とともに、次から次へと謎の影が現われだしたのだ!

薔薇、仮面、全身を布で巻いたり、キモノのアウターにメガネ、そして色黒の長髪白衣まで

 

窮地に陥った地下アイドルを助けに現われた、助っ人の登場である!

 

そして、その次の瞬間!

 

「やったー!たすかっ……」

「えい」

 

次々と現れた助っ人たちは、現われた以上のスピードで次々と倒されていった。

その速度、コンマ0秒以下。

恐ろしいほどの、速さであった……

 

結局のところ、ここは『アイドル迷宮』内部、ラリスキャニアのマイルームである。

この閉鎖空間に、外部から助っ人など来るわけもない。

一瞬で撃破され舞台袖のあちこちに散らばってしまったのは、ラリスキャニアが、新規に追加した触手たちであった。

 

その正体は、彼女のファンや親衛隊をイメージした仮想的な仮装(コスプレ)触手。

もっとも、それらはもう全て撃破され、無残な残骸となって散らばってしまっているが……

 

悪魔(アキラ)の左手(まじょ)は、そんな有様に見下げ果てたような眼差しを向けた。

 

「あいも変わらず、触手による助っ人ですか……」

 

さっきまで激怒していた彼女(ディスペータ)だが、今はなんだか疲れ気味だ。

 

そして、告げた。

 

「さて、茶番は終わりましたか?気づいているはずです。これは、あなた自身がもたらした結果だと」

 

「この結果が、か」

 

「ええ、演技の出来栄え、舞台の行方とは、まず演者自身が決定するもの。あなたの中にある自信のなさ、敗北感、『自分は助けられるのにふさわしくない』『こんな都合の良い救済が自分などに訪れるわけがない』という諦観。

それがある限り、あなたは絶対に勝てません。

貴方の敗北を決定づけたのは、貴方自身なのです。勝負を挑むのが絶望し諦めている貴方である時点で……勝利などありえません」

 

「くっ…」

 

そうして、滔々(とうとう)と解説を述べた左手(まじょ)は、その視線の向きを変えた。

 

「それとも――貴方が自分で戦うというのなら、同じ助っ人でも結果は違うかもしれませんね」

 

地下アイドルが振り向けば、その視線の先には一人の猫耳美少年が佇(たたず)んでいた。

そう、天使(レオ)触手である。

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