幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第34話(28~29の途中まで)

そんな、自暴自棄になりかかっている左手(まじょ)の様子を見て、天使(レオ)触手は、初めて、強く拒絶の言葉を言い放った。

 

「そんな『楽園』なんて、『小鬼』が閉じ込められた"小世界"(ろうごく)でしかありません!」

「……」

 

「それに、『教育』してくれる『教師』(せんせい)だというのなら、感謝をしてあげても良いのではないでしょうか?

いくらヒトは『自由』に価値観を選ぶべきだと言っても、それでも『基盤』となる『前提』の価値観は、必要です。一挙手一投足、やるべき『振る舞い』を選択しなければならなくなれば、結局、ヒトは何も出来なくなってしまいますよ。

『悪弊』にせよ『洗脳』にしても、ひとまずはヒトは先人の『振る舞い』を『基本型(パターン)』として身に付けなければ何も出来ないのですから」

 

そして、猫耳触手は、笑顔で語った。

あくまで優しく、丁寧に。

 

「身につけた『基本型(パターン)』が『悪』だとするなら、そのことに気づいた時点で変えれば良いだけの話なのです。

ちょうど、アキラさんの故郷で言う『守・破・離』という言葉のように。

『悪』い教師なら、学びに活かすべきですし、『不良』や『犯罪者』なら、更生の道を示して支えてあげるべきでしょう。

『悪』だとしても、それとぶつかり合い、より『良い』道を見つけ出せるなら、それも一つの存在価値になるのですよ。

ただ拒絶して見放すだけでは、『悪』として切り離された側も、そして『悪』を切り離し続けてそこから目を背ける体制(システム)も、諸共に破滅してしまいますよ!」

 

だが、それでも、それでも"彼女"はその論理を肯定しない。

 

「確かに、干渉やぶつかりあいもコミュニケーションの一種ですし、常に最適なバランスを探すことは否定しません。

けれど……けれど私には、もうそんなことはどうでも良いのです。私には悪魔(アキラ)様だけが居れば良い。アキラ様にも私だけで良い。

もう、何も失いたくない。変化も成長も必要ない……それだけなのです」

 

そんな彼女に対し、激しい情熱はかえって逆効果だと考えたのか、猫耳の美少年触手は、今度は静かに語り出した。

 

「聞いたことがあります。アキラさんの世界の『転生』には、元の世界で、専用の機械が作動し続ける必要があるそうですね」

 

「それがどうしたというのです?」

 

首をかしげる左手(もとめがみ)に、猫耳(レオ)触手は、静かに自論を説く。

 

「それが、単なるコピー&ペーストであるなら、継続的な作動の必要はないはずです。アキラさんの世界の『転生』が、"コピー元"あるいは『オリジナル』を必要とすると言うのなら。

それは、単なる一度の"貼り付け"では、『オリジナル』の『生』を、『生きていること』を再現することが出来ないということを、意味しているのではないでしょうか?」

 

そして、より深くへ踏み込んだ解釈を語る。

 

「『オリジナル』を常に参照し続ける『転生』。それは、『生』きることに内在する『変化』をあらかじめ織り込んでいるということなのでしょう。

『転生』とは、『生』を『転』じることであり、単なる『再生』、『再』び同じ『生』を繰り返すことではないのです。

そう、『生』きるとは、変わり続けること。

今まで持ってきたモノの全てが残らず無くなり、価値基準さえも『転』換し得るということです。

ちょうど、今の貴方のように」

 

その言葉と共に、美少年触手は、じっと相手を見つめた。

異形の姿と化している悪魔(アキラ)の左手(まじょ)を。

そして、告げた。

 

「すなわち…『変化』しなければ、『生』きているとは言えないのです」

 

「では、過去はどうなるのです?過去の苦しみ、間違っていた『悪』い自分は、切り捨て忘れ去られるだけなのですか?」

 

左手(まじょ)は、叩きつけるように叫んだ。

その姿は、妖艶な魔女と言うより、まるで童女のようであった。

 

あるいはそれは、身体にしがみつくイソギンチャクか何かのようにも見えた。

残された居場所に必死にしがみつき、守り抜こうとする小さな生物のように。

 

その叫びに応えようとしているのか、左手(まじょ)の下では悪魔(アキラ)が、ガタガタ動いていた。

 

だが、その言葉はどこにも届かない。

助けられる対象であるその左手(まじょ)当人が、悪魔(アキラ)を押さえつけているからだ。

 

左手(ディスペータ)の悲痛な叫びに、思わず黙り込む天使(レオ)触手。

 

そんな"彼"に、元女神は、決別のような疑問を投げかける。

 

「……結局のところ、貴方は何が言いたいのですか?私もそろそろアキラ様と愛の生活に戻りたいのですが」

「『苦痛』を良しとする『悪』の生活ですか?」

「貴方にしては、ずいぶんと意地が悪い質問ですね。ええ、その通りですよ。

『悪』である私と許された殺人という『悪』に苦しむアキラ様、二人だけでずっと苦しみを味わい続けるのです。これからの物語には、それだけで良い。

だって二人は、『一心同体』なのですから」

 

悪魔(アキラ)とつながっていることを、誇らしげに見せびらかす左手(ディスペータ)

手のひらに浮かぶその表情は、まるで、捕まえたカエルか何かを自慢する、童女のようであった。

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